君主論 (岩波文庫 白 3-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003400319

感想・レビュー・書評

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  • 言わずと知れたニッコロ・マキャヴェッリのあまりにも有名な国家政治論。

    その序において、フィレンツェの君主家であったロレンツォ・デ・メディチに献呈したというスタイルを取っている。
    16世紀イタリアは群雄割拠しており、さらにフランスやスペインといった強国が介入する争乱の場と化していた。一度は理想君主の一人としたヴァレンチーノ公(チェーザレ・ボルジア)によるイタリア統一を願ったマキャヴェッリであったが、彼は早々に失脚してしまう。こうした中、時の教皇レオ10世はメディチ家出身のジョヴァンニ・デ・メディチであり、メディチ家によるイタリア統一という希望を託すという意味において本書は執筆されたということである。
    解説によればマキャヴェッリはフィレンツェ共和国時代の政府書記官であったが、メディチ家の復権とともに投獄され職を失うという経歴を持っている。メディチ家へのこうした接近は彼の処世術の一環でもあったことだろう。

    本書を語る上で外せないのが有名なマキャヴェリズムである。最終的な勝利のためには、ありとあらゆる手段を講じ、どんな汚いやり方でもその目的のためなら容認し推奨する究極の権力第一主義!その思想は人間の心理や思考、行動パターンの鋭い洞察や分析に根差したものであり、今日なおも胸に突き刺さってくるものがある。
    そして、本書に通底するマキャヴェッリの視角は「力量」と「運命」である。この視点は姉妹編といってもよい『ディスコルシ』でも特に強調されていたもので、「力量」と「運命」を持つ者が君主の座に着きこれを維持できるとし、さらには「運命」の女神を従わせるのは人間の「力量」であるともいい、君主の座に登るものが備えるべき決意と方法を過去の事例を丹念に紐解きながら訴えるのである。
    本書の内容からすると『ディスコルシ』と被る部分も多々見られ、同時期に構想した内容をテーマに沿う形で整理・分類して二書に分けたものであったのだろう。

    本書の前半は、君主の政体(つまり国)のパターンをひとつひとつ取り上げた上でその長短を述べ、次に君主政体が持つ軍隊のパターンを取り上げてその長短を述べる。
    そして後半では、君主が褒められることと貶されることとか、気前が良いこととケチであることとか、あるいは信義を守るべきやいなや、軽蔑と憎悪を免れるには?、名声を得るには?などなど、君主が採るべき姿勢や態度とその効果について述べる。
    訳者解説によれば、前半部分は「君主政体論」で後半部分は文字通りの「君主論」に分けることができるという。
    確かに前半はそのテーマの趣旨からいって、様々な古今の政体や軍隊のありようの事例を上げながらその末路について解説しているのに対し、後半は君主たるべき者への進言が基本となっているといえ、後半こそ本書を著したかったマキャヴェッリの真骨頂が述べられているといっても良いであろう。
    中でも自分なりにずっしりときたのは、君主は冷酷でなければならない!普段はケチでなければならない!普段から考えていなければならないことは戦争のことであり他はどうでもよい!信義は守らなくて良い、必要とあらば悪の中にも入っていけ!しかし、普段は慈悲深く誠実で宗教心が篤いように見せておけ!信義を破る時は一気呵成に!ということである。
    前近代の国と権力者の役割は現代の国家に比べかなり限定的なので、究極的にはこのような思想に辿りつくのだろうという考えがある一方で、人間心理や行動に根差した普遍的な思想であるが故に現代でも立派に通用するのではないかとも思える。
    ということで、早速、日ごろの生活に取り入れよう!ひひひ。

    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは(^^♪
      三味線弾きのnejidonです・笑

      以前塩野さんの本で読んだことがあるのですが、こちらを先に読め...
      mkt99さん、こんにちは(^^♪
      三味線弾きのnejidonです・笑

      以前塩野さんの本で読んだことがあるのですが、こちらを先に読めば
      良かったかなと、レビューを読みながら思いました。
      決して良い意味で使われない「マキャベリズム」ですが、誤解も生みやすいのでしょうね。
      別に「暴虐のススメ」でも何でもなく、国と時代を俯瞰した名著だと思います。
      良いことを言うなぁと感心させられた部分がたくさんあります。
      ただ、肝心のロレンツォ・デ・メディチは眼を通さなかったみたいですね。
      ちゃんと読んでいればメディチ家の運命も変わったかもしれないのに。
      私も久々に読み返してみたくなりました!
      日頃の生活に取り入れるのは。。別途考慮いたします、ふふ。
      2017/07/05
    • mkt99さん
      三味線弾きのnejidonさん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      ひひひ。日々、仏の顔をして冷酷な心...
      三味線弾きのnejidonさん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      ひひひ。日々、仏の顔をして冷酷な心を研ぎ澄ましております!(笑)

      確かに国と時代を俯瞰しながら人間心理を見通した名著なのには違いないですが、自分のように真似をする人が出ると困る内容でもありますね。(笑)
      何せ、こんなような君主が出てきて世の中を統一して欲しい!という内容で、この「君主」といったらどれほどの「人でなし」なんだ!?という性格にならなければならないのですから・・・。(^o^)
      仮にロレンツォ・デ・メディチが読んでいてもなかなか難しかったかもしれませんね。(笑)

      私はもうちょっとがんばってみます!(^o^)v
      2017/07/06
  • 中世ヨーロッパにおける政治生体や様々なリーダーの栄枯盛衰を俯瞰的に分析し、リーダー(君主)とはかくあるべき
    というものを記している。特に、憎悪と軽蔑は避けるよう努めるべきであるが恐れられことは必要である、助言は必要なときに自ら得れば良く、それ以外に進言される助言は不要であるといった内容が心に残った。リーダーの多くの資質について述べられているが、とどのつまり社会情勢や自分や他社の能力や性格をつぶさに分析し、臨機応変に対応する必要があるということだと理解した。今から500年前に記された書物ではあるが、現在の組織にも十二分に適用できる内容となっている。

  • 国を奪って君主になりたい人,必読。

    メディチ家に向けて書かれたものだったのか。
    15-16世紀のイタリア史を知っていた方がよく読めそう。分からないところは読み飛ばしてもいいとは思うけど。

    軍備の重要性を説き,横暴さと狡猾さの双方を君主に求める一方で,民衆の力を侮るなとも。

    チェーザレ・ボルジア推し。

    翻訳は,学術的な立場を重視してなされたよう。
    訳文が読みにくいのも,訳注が充実しているのもそのためだろうが,個人的には,もっと読みやすく意訳してほしかった。

  • 『感想』
    〇いやあ難しい。まずヨーロッパ史を深く知らないから、例として歴史的事実が出てきても理解できない。自分の実力不足。

    〇私が理解したことを挙げていくが、その解釈は違うかもしれないことを断っておく。

    〇自分の軍備を大事にしろと説く。外国勢力やお金で雇う傭兵勢力を頼るな。彼らは状況が変われば敵になる。  → 自分の足元をまずは固めないといけない。周りを頼って自分をたててもらおうなどという考えは甘い。

    〇人に憎まれるな。ただし怖がられろ。 → 結局人間は感情で動くから、嫌われることは避けたい。だがそれでは支配がうまくいかないから、嫌われて反抗されるのではなく、怖がられて反抗されないようにするべき。人がいいだけではリーダーは務まらない。最後は指示に従ってもらわねばならないから、不満の前に従わないことでの不利益を認識させて、実行させる。

    〇従わせるために、見せしめに従わないものの一部に対して厳しい処分をすることも必要。 → 権力があり逆らえないことを実感させる。

    〇民衆に愛されろ。喜ばれることを一度にせず、切り売りしながら長く続けろ。しかし民衆にきびしいことをやるときは一気に行え。 → 外部の敵より内部の部下にまとまって反乱を起こされる方が怖い。だから部下を大切にしないといけない。大事にしていることを小さなことでも継続して伝えていく。逆に叱るとき、処分するときには一気にやる。下手に長引かせて少しずつする方が、上司に対しての不満が高まる。

  • 教科書ではルソーの流れで登場していたが、こんな内容だったとは、、、群雄割拠するイタリアにおける統治論を過去の事例をもとに、展開している。君主を経営者、国を企業に置き換えると、リーダーシップ論やポジショニング理論といった現在の経営学に通じる。先行論文が少ない当時でこの洞察には驚嘆。賞賛と批判が多いのは、感情を湧き立てる書なのであろう。

  • 中世ヨーロッパの国家の状況を鋭く観察し、君主とはどうあるべきかについて論じた書籍である。マキャベリの君主論は良く知られていたが、実際の内容はあまり知らなかった。今回一通り読んでみて感じたことは以下の通り。

    ・君主は、優柔不断であってはならない。
    ・大衆は結果しか見ない。その途中で何があっても、結果を示せば最終的には許されるものである。
    ・大衆を味方につける方が、貴族を味方につけるよりも国を維持していきやすい。
    ・傭兵軍、外国支援軍をあてにしてはならない。
    ・恩恵はよりよく味わってもらうために小出しに行うべきである。
    ・大事業はけちな人物によって成し遂げられている。
    ・説得することは簡単だが、説得したままの状態に維持するのが難しい。
    ・人は、自分が危害を加えられると恐れている人に親切を受けたときには、特に恩義を感じるものだ。
    ・民衆は、頭をなでるか徹底的に排除するかのどちらかにするべきである。ささいな侮辱は恨みを残し復讐心を生むからである。やるなら徹底的にやる。
    ・君主は、人間と野獣の両性を持つべきである。どちらかを欠けても地位は守り得ない。
    ・信義を守ることが自分にとって不利益になるならば、その信義は守らなくて良い。なぜならば、人間は邪悪なものであり、あなたへの約束を常に守るとは限らないからだ。
    ・君主としてのよい気質(信義・人情味・誠実・慈悲深さ)を備えていることは重要であり、周囲にはそう思わせなければならない。しかし、国を維持するためには、事態の変化を見て、時には断固として悪に変わる変幻自在さも必要である。公明正大で誠実なだけでは生き延びることはできないし、大事を為すことはできない。

    特に最後の方にマキャベリの現実主義的なところが見てとれる。今のような平和な時代に生きていては想像が難しいが、誰が敵になるか分からない、一寸先は戦争という時代では、上に立つ者はそのくらい緊張感ある心構えが必要だったのだろう。現代では間違いなく少数派の、批判されそうな考え方であるが、混迷、乱世の中を賢く生き抜き、自国と身分を維持していくためにはこのような強さが必要だったはずである。

    読書後は、中世ヨーロッパを泥臭く生き抜いてきた人々の心中を垣間見れたような気がして嬉しくなった。

  • ヨーロッパ政治思想史の参考文献として読まねばならず。
    重~いページをめくったら、その日のうちに最終ページをとじました。

    政治家の言っていることがこんなによく分かるなんて!と政治に通じた気を起こすところだったが、マキアヴェッリの分かりやすいレトリックのお蔭なよう。

    人間など所詮自分のことしか考えていない、という前提に則った所論の展開は説得力十分で筋道の通った裏のない言葉はとても気持ちがよい。

    女の子が電車の中で読むにはあまりに可愛気のない本ではあるが、イタリアでは学生の必読図書だそうで、世紀を越えて読まれるだけの価値が大いに感じられた。

  • 自分の中で、自己啓発本といえばこの本。

  • 君主論は、君主政体について、それを維持する軍隊について、君主の資質について、君主の取り組みについて、新しい君主の出現について、という構成なわけですが、内容は最高のリーダシップ論とですね。「ひとつは、・・・、いまひとつは、・・・」、という形式の、マキャベリの一刀両断していく文体が、歯切れが良く気持ちよい。

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