- Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003400524
感想・レビュー・書評
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「政治的生態史観」を唱え学際的な東南アジア研究を開拓した亡き矢野暢は、自分にとって「一冊の本」はなにかと聞かれたら『法の精神』をあげると書いていた。矢野は本書を地域研究の入門書として読んだという。もちろん本書は三権分立と法の支配を基本原理とする制限政体を論じた政治思想の古典であるが、風土と習俗、政体の関係を論じた歴史社会学あるいは比較文明論の先駆としての意義は見過ごせない。
とりわけ本巻では古今東西に広く題材を求め、自然環境と風土を媒介として歴史と文明が縦横に論じられており、読み物としても最も面白いパートが収められている。例えば、アジアの専制体制とヨーロッパの封建的分権体制の違いをアジアにおける大平原の存在とヨーロッパにおける自然の国境によって説明している。アジアでは国土が広大であるがゆえに、隅々まで統治が行き渡るには権力は強大でなければならないという。その結果、アジアでは一人の強者と多数の弱者しか存在せず、ヨーロッパでは分権的競争関係を通じて互いが切磋琢磨し、強者が強者に対峙するという。加えてアジアの温暖で平地の多い穏やか自然環境は怠惰を生み、ヨーロッパの寒冷で山岳地帯の厳しい自然環境はそれを克服するために勤勉で強靭な精神を生むとされる。
風土決定論の色彩がかなり強いが、後のヘーゲルやマルクスに通じるアジア的停滞論の原型がここにある。他方で悪しき立法者は風土の難点を助長し、良き立法者はそれに対抗するとも言われており、機械的な決定論とまでは言えない。インドは悪しき立法者、中国は良き立法者であるとしているのは、18世紀に流行した「シノワズリー」の影響による中国贔屓もあるだろうが、既に衰退期に入ったムガール帝国と、乾隆帝在位のもと最後の隆盛期を迎えていた清朝との力の差を映すものと言うべきかも知れない。モンテスキューとて時代の子である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB00167331 -
法律だけではない、歴史、特にローマの歴史の説明が詳細に書かれていす。商業の説明も丁寧であるが、法律と無関係に説明されているので歴史書としても読める。
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オフィス樋口Booksの記事と重複しています。アドレスは次の通りです。
http://books-officehiguchi.com/archives/4308325.html
「中学の社会で、多くの人がモンテスキューの著書『法の精神』を耳にしたと思う。『法の精神』で三権分立を主張したことでも知られている。文庫本ではあるが、大学入試レベルの世界史の知識がないと、初学者にとって難しいと感じるかもしれない。今後、この本のなかから気になる箇所を引用する形で配信したい。 」 -
『法の精神』のうち、風土と政治制度の性質の関係を論じる第3部、商業と法制度の関係を論じる第4部を収録している。第3部では、これまでに比べてヨーロッパ外地域の法制度を論じることが多くなる。その際、とりわけ第15~17編では、奴隷制の問題が中心に据えられていると見てよいだろう。その後、「国民の一般精神」との関係で法制度が論じられるが、これはもちろん、世界の全ての地域にヨーロッパの法制度を導入せよという議論ではなく、法は一般精神と関連していなければならず、したがって世界のある地域で導入されている法制度が別の地域にも適合するわけでは必ずしもない、というある種の相対主義的議論である。第4部では、商業や貨幣、人口数と法制度の関係が論じられる。近代における植民地との貿易によってもたらされた富がヨーロッパにいかなる影響を及ぼしているのかという問題が、古代世界における諸国民の交流の歴史との対比で論じられる。
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『ぼくらの頭脳の鍛え方』
文庫&新書百冊(佐藤優選)148
国家・政治・社会 -
2009年12月9日購入