- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003400920
感想・レビュー・書評
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金大生のための読書案内で展示していた図書です。
▼先生の推薦文はこちら
https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=28924
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA74250267詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
政治のことばかりとおもっていたら、最初がアメリカの自然についてのことで驚かされた。
ところどころフランスとの差異は書かれているので、その比較としては意味があるであろう。どこがよく引用されるのかがよくわからないので、引用された都度、これを見るのがいいと思われる。 -
まとまり。弱肉強食の国際情勢。生まれたばかりの中堅国アメリカ。各州ばらばらだと、足並みの乱れを突かれて、列強の餌食になる。連邦政府の強化と、州の主権の廃棄が必要だ。ただし連邦政府を強化しても個人の自由は守られるべきだ。アメリカ人は同じ祖先・言語・宗教・統治原則を持っている。よく似た習俗と慣習を持っている(アフリカ系は「アメリカ人」ではない)。▼多数派による専制を防ぎたい。直接民主政は多数派による少数派への圧政につながる。個人の生命や財産が守れない。代議制を採用することで、優れた人間に統治を任せる。▼立法部(議会)の暴走を防ぎたい。大統領に拒否権を与えて、議会に対抗する力を持たせる。裁判所に違憲審査権を与えて、議会の暴走を防止。互いに権力を抑制。▼大統領が独裁者になるのを防ぎたい。まず州ごとに選挙人を投票で選び、その選挙人が大統領候補に投票する仕組みに。選挙戦の期間を長くすることで、大衆の一時的な熱狂で担ぎ上げられることを防止する。アレクサンダー・ハミルトンHamilton他『フェデラリスト』1787
フランス革命後、仏では政治体制が不安定化、帝政が生まれてしまった。アメリカ(ジャクソン大統領時代)でデモクラシーの可能性を探りたい。▼平等と自由は両立しない。平等の実現(平準化)はしばしば自由を犠牲にする。階層秩序が崩壊し、貴族(中間的な権力)に支配されていた人が解放されると、無数の群衆が解き放たれる。彼らは魂を充たしてくれる卑俗な喜びを求めて動き回る。富と財産を増やすことが最大の関心事。自分の内に引き籠もり、個人がバラバラに欲望を追求する。彼らの享楽を保障し、監視しているのが国家。無力で不安定な個人は強力な国家に依存・隷属するようになる。政治に無関心になり個性を喪失し多数派に隷従・同調する。デマゴーグに操作される。こうして平等は自由ではなく隷属をもたらす。伝統的権威をなくした社会では多数者の意見が権威となる。多数者の専制。※c.f. ミル自由論・ハーバマスの福祉国家。▼それを防いでくれるのがアメリカの地方自治を通じた政治教育(民主主義の学校)。地域の問題を住民自身が考えて解決していく。仏のように行政的な中央集権がなく、人々が自らの手で身近な行政に携わっている。仏のように中央の官僚(王の僕)が政治を主導するのではなく、下から国家をつくっている。仏のように結社の自由が制限されておらず、結社を自発的に作って個人と個人が結びつく。仏のように教会が強権をもつことなく、宗教が人間相互の連帯や社会への義務を自覚させ、利己主義を克服、紐帯が生まれている。アレクシ・ド・トクヴィルTocqueville『アメリカのデモクラシー』1831
トクヴィルが礼賛したアメリカの地域コミュニティの結束は1980年代辺りから弱まっている。市民組織や友愛団体の会員数減少。メンバーの高齢化。親の教育課程への関与(PTA)の減少。投票率の低下・公的な集会への参加の減少。相互援助や共感の弱まり。個人間のつながり・社会的な網目は弱体化。互酬と信頼の規範が衰退。社会的な信頼の低下。▼全国的な社会運動組織は、ワシントンに拠点を置くプロ(専門家)が運営する組織であり、大部分の会員は会費を納めるだけか、一時的に寄付することで、自らの良心を慰める自己満足にすぎず、社会的な網目・相互信頼とは言えない。全国的な社会運動組織の存在は草の根の参加が欠如していることの証し。ロバート・パットナムPutnam『独りでボウリング』2000
※昔ながらの古い組織に注目するから「コミュニティが衰退している」ように見えるだけとの批判。新しいコミュニティ(SNSなど)はむしろ隆盛。
※仲間うちの結束をもとづく内部指向の排他的な信頼・規範・ネットワーク。外部指向で他者と橋渡しをする信頼・規範・ネットワーク。cf. デュルケーム。機械的連帯(結束型)。有機的連帯(橋渡し)。 -
[出典]
100分de名著 大衆の反逆
第4回, 2019.02.25 -
近代の民主主義がどのように生まれたのか。
民主主義、これが人間の手によって実現されたものであるということがなんだか奇跡のようにも感じるし、当時の人びとの偉大さに感銘を受ける。
民主主義が、いかに今私の生きる社会を保証しているのか、その機能や原理を考えることを忘れて自然に生えてきたように存在するものだと思ってしまう現代、初心に帰らせてくれる語り。
そして異国の制度、その諸々の背景や具体例をここまで書き綴るトクヴィル、感謝します。 -
評価が低いのは私の能力の問題。
内田樹さんの本で取り上げられていたので読みました。 -
さて次は下巻。
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自分と年齢の変わらないような若者(貴族であるところが違うけど…)が新興国アメリカに視察に行ったあと書いた考察である。内容は、フランス(革命国)、イギリス(旧体制)、との比較の視点があり、わかりやすい。アメリカは○○であるが、なぜ○○かというと…という政治をしているからである。一方フランスでは…のような形。なぜ訴訟社会なのか、など、現代のアメリカを考察するにもアイデアの源泉になる素晴らしい著書。
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出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介
1831年から1832年まで、ジャクソン大統領時代の米国社会を描いた近代デモクラシー論。