- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003400944
作品紹介・あらすじ
第一巻(一八三五年)でアメリカのデモクラシーの形成過程とその政治制度の運用について精緻な分析を行ったトクヴィルは、五年後に刊行した第二巻では、デモクラシーが人々の知的運動、感情、道徳などに及ぼした影響について考察する。
感想・レビュー・書評
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『アメリカのデモクラシー』は1500頁に及ぶ大著であり、時間のない人のために全四分冊のうち一冊選ぶとすれば、躊躇なくこの第2巻上を奨める。第1巻で提起された自由と平等のパラドックスが文明論的に掘り下げられ、トクヴィルの最も独創的な思考が凝縮されている。平等の進展がいかにして多数者の専制あるいは自発的な隷従に結びつくかが多面的に考察されている。
各人の諸条件が平等になれば、社会の固定的な障壁は取り払われ、人間関係は流動的になる。人々は孤独に耐えられず、自分を導いてくれるものを探し求める。そこで拠り所となり易いのは「世論」であり、新聞が有力な社会的勢力となる。また人々の紐帯が弱まることが専制政治の温床となり、個人はか弱い存在であるが、個人の集合を代表し、全員を掌握する「後見的権力」としての国家が強大になる。今日の大衆社会の到来を正確に予言しており、デュルケム『自殺論』のアノミー論、あるいはフロム『自由からの逃走』やリースマン『孤独な群集』の議論を先取りしている。
こうした状況を前にして、自由を守る手だてとしてトクヴィルは何を考えたか。1巻では結社や地方自治、陪審制などのアメリカの諸制度や習慣の意義が論じられたが、本巻でトクヴィルが取り上げており大変興味深いのは宗教の役割である。「人間は信仰を持たないならば隷属を免れず、自由であるならば、宗教を信じる必要がある。」とトクヴィルは言う。政治にせよ宗教にせよ、人は全く権威のない状態には耐えられない。この深い人間洞察を前提に、宗教と自由の補完関係、裏を返せば無神論と専制の親和性を見事に言い当てている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
金大生のための読書案内で展示していた図書です。
▼先生の推薦文はこちら
https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=28924
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA74250267 -
出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介
1831年から1832年まで、ジャクソン大統領時代の米国社会を描いた近代デモクラシー論。 -
本書では、民主制がいかにアメリカ人に影響を及ぼしているかが考察の対象とされており、第一部では、民主制の「知的運動」、第二部では「感情」に及ぼす影響が検討されている。第一部によれば、民主制は、アメリカ人に物理的享楽を大胆に志向させており、彼らは、一般性・無形式性・実用性を好んでいる。彼らの宗教には来世への関心が比較的弱い。とはいえ、その宗教は、秩序を破壊するものではなく、利益を求める上でも有効に機能している。第二部によれば、アメリカ人には、個人主義があるが、同時に結社を志向する態度がある。また、アメリカ人は、宗教の効用ゆえに物質的享楽への愛着が行き過ぎてはいない。
トクヴィルは、アメリカ人に精神的な単純性や文芸における素朴さを見るとともに、平等が彼らに現世的利益を追求させていると考えている。だが、彼は他方で、宗教ゆえに物理的享楽への一定の歯止めがかかっていると見ている。彼によれば、民主制の立法者は、人々の宗教的関心を持続するよう配慮しなければならない。彼には敬虔なキリスト教信仰があるように見えるが、その議論には、宗教の政治的利用の必要性という冷徹な見方もうかがえる。宗教は、民主制の諸帰結のうちを悪しき部分を抑制する装置として不可欠ということになろう。 -
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アメリカのデモクラシーを通じて、デモクラシーがその国民にどのような影響を及ぼすかを分析し、デモクラシーをよい制度として維持していくためにはどうすればいいかを考察した本。
1840年代に書かれたとは思えない、優れた洞察力で書かれたものだと思います。