近代国家における自由 (岩波文庫)

著者 :
制作 : Harold J. Laski  飯坂 良明 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 47
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003401811

作品紹介・あらすじ

統制されぬ権力は常に自由の宿敵となる。ルーズベルトが提唱したあの「四つの自由」を実現してゆく条件、国家権力が従うべき基準とは何か。ファシズムの脅威に鋭い洞察を加えるとともに、近代国家がはらむ権力と自由の矛盾を考察、自由・平等・平和の不可分性を強調する。イギリスの思想家ラスキの全貌をうかがうに足る現代の自由論。

感想・レビュー・書評

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  • 教科書

  • 原題:『Liberty in the Modern State』
    大学時代の恩師が感銘を受けた人物がハロルド・J・ラスキ。

    恩師が感銘を受けた著者:ラスキがどのような著作を残していたのか気になったので、彼の本を読んでみたいと思っていたのだけれども、なかなか手ごろな感じのものが見つかりませんでした。ですが、今年の岩波がこの秋に復刊してくれたので早速購入して読んでみました。

    感銘を受けました。大学時代の授業で自由の概念がどう成立したかとか、どれだけの人の苦労や運動の上に、一般市民が獲得したのかなどの話は一通り知ってはいたものの、それが第二次世界大戦を通じてどのように破壊され、自由を奪われていったのかまでを考察した本はなかなかないと思いました。

    社会における個人の役割が、自由とどのような関係になるかという漠然とした問いに対して、実社会の事例を、そこまで突き詰めなくても…と思わずにいられない場合にまで話を展開させて説明しています。彼自身の信念がこうした微細な問題群にまで関与しなくては本当に自由というものがそこから錆付いてもろくなってくるからだとの裏づけを持っていることを知り、さらに感銘を受けました。

    経済的発展段階が自由が醸成し、維持される条件。平和こそが自由を永続させる条件。などなど、それを複合させていくことでラスキの言う自由を成立させる諸条件というのは整理されますし、現代日本は自由を永続させる条件は整っているとは思うのですが、一定の行動原理を社会的経験から抽出し、それを是とするがゆえに複数の個人や集団に対する一定の規制が施されることで自治が成立し、かえって個人の幸福を増進することにもなるというパラドックスを指摘しているのも洞察の深さ故だと思います。

    自由の実現とのその維持には、それを謳歌する人々自身がつねに平等な関心を持ち続けることが重要といっていますが、それを行動に移せるかは広義の意味では含まれますが、自分にはそれができるか自問する良いきっかけになりました。

    自由ってぼんやりした概念になりがちだけど、つきつめて考えればやっぱり社会生活の規範をなすものですからね。少しでも関心のある方には読んでいただきたい本です。順番は逆になりますが、次はより研究においては原点と言われるJ・S・ミルの『自由論』を読むことにします。

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