現代議会主義の精神史的状況 他一篇 (岩波文庫)

制作 : 樋口 陽一 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 71
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003403013

作品紹介・あらすじ

やがてナチスの桂冠法学者となるカール・シュミット(1888‐1985)が、自由主義に対する体系的批判を行なった初の著作。不安定なワイマール体制への幻滅から、議会主義の精神史的な基礎は過去のものになったとし、議会主義と民主主義の連関を切断する。独裁理論を考察し、ドイツの新しい政体を暗示した問題作。1923年刊。

感想・レビュー・書評

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  • ナチス・ドイツの桂冠学者として重用され、(理由は不明だが)その後解任されるカール・シュミットの初めての論文。民主主義、議会主義の限界を暴き出し、それに代わる政治制度を模索するようなしないような…

    (理解できたとはいえないのでここからはわたしの意見)
    わたしが参加している読書会の課題図書に上げられたので読んだ。非常に難解。
    その原因の多くは著者が自分の意見やスタンスをはっきりと表明していないことにあると思うが、わたしは、議論の進め方が卑怯に感じた。非常に不快。

    1、2章で民主主義や議会主義を解体、批判しておいて、それに代わる勢力、もしくは一度ぶっ壊した民主主義や議会主義の弱点を超える手段として、3章以降では独裁や共産主義(みたいなもの?)を賞賛する。というのがこの論文の流れだとわたしは読んだ。

    1、2章で民主主義や議会主義を解体・批判するときはかなり論理的に話を進めているのに、3章以降、とくに4章では、独裁や共産主義を持ち上げるところ(それに伴う暴力主義にも著者は賛成しているとわたしは読んだが、読書会では「暴力には賛成していないという意見が多数だった──なぜわたしが暴力に賛成していると読んだかというと、著者は明確に批判・反対していないから。本をとおして意見表明が少ないので、著者が明確に反対していない限り、賛成しているとわたしは読むべきだと思った)では、論理性がない。意見に対しての賛否の前に、こういう議論の進め方はしてはいけない、とわたしは思う。

    ちなみにこの本を理解する助けとして、『<戦前>の思考』(柄谷行人)を薦められて、そのパート2、パート3だけ読んだ。

  • 併せて収められている「議会主義と現代の大衆民主主義との対立」が興味深い。決定的に過去の論理だけど「民主主義は、等しいものが等しくあつかわれるだけでなく、等しくからざるものが等しくあつかわれぬ」ことにもとづくという論旨だ。これがユダヤ排斥につながっていったのかとも思う。が、ただ成年に達したというだけで等しく他のあらゆる人間と同権であるべきだとする現在の民主主義を疑ってみてもいいのではなかろうか。

  • フランス憲法学の泰斗である樋口陽一訳のカール・シュミット『現代議会主義の精神史的状況』(岩波文庫)。原書第1版(1923年)の翻訳であり、第2版(1926年)の序言に編入された論文「議会主義と現代の大衆民主主義との対立」は別稿として併録されている。樋口訳は『カール・シュミット著作集』(2007年)所収の翻訳を補訂したものだが、訳文としては原書第2版の稲葉素之訳『現代議会主義の精神史的地位』(みすず書房)の方が読みやすい。2015年7月に敢てシュミットの反議会主義=反自由主義的論稿を岩波文庫に収録した理由は、もちろん安倍政権の安保法制論議に一石を投じるためであろうと思ったのだが、訳者解説を読むとそういうわけでもないようだ。シュミットは、民主主義の前提は国民の同質性・一体性であり、そのためには異質者を排除・絶滅せよと説く。訳者はこれが反ユダヤ主義に結びついた点を問題視しており、むしろ標的はいわゆる「ヘイトスピーチ」らしい。正直言って見当違いの感を否めない。

  • 風雲急を告げる、1923年ドイツで発表された「問題の」政治学テクストである。
    著者は「自由主義」「民主主義」「議会主義」という、常にごっちゃになれがちな概念をはっきりと切り離す事を提唱している。これらが短期間で一気になだれ込んできた日本の人間はますますこれらを混同してしまう傾向があるが、当然、同じものでは無いはずだ。だが、それらは相互に関連してはいる。その歴史的な重なりのプロセスを、私たちはあまりにも知らなすぎなのだ。
    カール・シュミットは本論文で議会主義の限界を指摘している。読む前に私はわれわれも現在の日本で経験しているような代議制の弱点の話かと思ったのだが、少しニュアンスがちがう。
    シュミットによると、民主主義の定義はそもそも「一連の同一性」に依存している。なるほど、バラバラの個人を「国民」として捉え、多数決原理で選択された政策とその「国民」とは、「同一性」をもつことによってのみ、擁護される。これはやはり、例のルソーである。「一般意思」である。
    ルソーのこの思想はなにやら極めてまずいものだったのではないかと、最近おもう。ルソーは理性的であることによって、人民は同一化し、「ただひとつの正しい解」を支持するはずだと夢想した。
    だがこれは、こんにちの社会が極めて複雑きわまりない構成による、多様性そのもののような開かれた不可知の「系」であることが明らかになっていることから言って、完全に間違っており、人間はそうそう同一化「してはならない」し、そうした複雑な社会における有効な「解」が一つなどということは到底あり得ないのである。
    さてシュミットはルソーに依拠しつつも、多数者ではなく少数者の側が「国民の真の意思を持ちうる」と主張する。
    「民主主義は、真に民主主義的に思考する国民にのみとりいれられうる。」「意思形成の問題においては自らを否定する結果となるのが民主主義の運命」(P25)。
    衆愚としかいいようのない数々の現象を見れば、確かにそういうことも言えるかも知れない。
    しかしシュミットはここで「危険な」飛躍を演じてみせる。彼は「独裁」という概念をいきなり登場させ、それは「民主主義の対立物ではない」と言い放つのだ。
    このような論に至ったのは、やはり現実の議会主義の機能に欠陥があることが、じっさいに目の当たりにされたからだろう(ちなみに、シュミットは政党、比例制選挙を厳しく批判している)。
    しかしその絶望から「独裁」に行くのはどうか。
    かなり前に、橋下徹が「今の日本に必要なのは独裁者です」などと放言していたことを思い出す。その宣言ののちに、いまの安倍=独裁型政権が跋扈する情況になったわけだが、橋下がああ言ったのは、代議制に対する国民の積年の不信感、絶望がつのっていた背景があり、それはひとつの「時代の声」として受け取られたのかも知れない(私は決して橋下を評価しないが)。
    シュミットはここでは「独裁」を直接的に勧めているわけでもないのだが、彼の言説がヒトラー独裁の思想的バックボーンになりえたことは確かだし、その後一時ナチスの御用学者みたいに扱われたのも当然で、その「罪」は覆いきれない。
    だがシュミットのこのような真摯な論文は、決して軽くない。曾野綾子だの百田だのといった愚劣きわまりない軽薄ウヨク本とはわけが違う。
    「独裁」をゆるさないのであれば、緻密にシュミットを論破しなければならない。
    私には、根本的にルソー的な「理性の同一化」がヨーロッパ近代史の誤りではなかったかとも思えるのだが、一方では、彼の思想が民主主義を確立する影響を持った事も確かなのだ。何が正しく、何が間違っていたか? 私たちは必死で考えなければならない。

  • 2015年8月11日、図書館予約。一応読み通した。これを読んでいると「憲法理論」を読み返したくなる。

  • 現代議会主義の精神的基礎を明らかにしようとするカール・シュミットの論考の邦訳。シュミットは、ギゾーやロックなどから、討論と公開性、権力の「均衡」が議会主義の基礎となっていることを論証する。その前提として、これらの観念は必ずしも民主主義の構成要素とはならないという認識がシュミットにはある。彼によれば、民主主義は構成員の同質性に基づく政治原理であり、異なる利害を持った人々が討論によって説得し合うことを主眼とする議会主義とは基礎が異なる。それどころか、民主主義は独裁を正当化することができる。そのうえで、マルクス主義理論における独裁、サンディカリズムを論じ、議会主義的思想に見られるような合理的なもの、あるいは真理に対する確信が失われていくことで、議会主義を支える精神的基礎が現代(1920年代)では消失してしまっているというのが、この時代に対してシュミットが下す時代診断である。解説でも述べられているように、こうしたシュミットの概念整理は今日でも学問的刺激を与え続けている。

  • 直接民主主義が不可能なので間接民主主義として議会に存在理由がある、という俗説を、それなら独裁でもOKになる、と否定した上で、シュミットは、
    (議会の存在理由は)「動態的・弁証法的なるもの」のなかに、すなわち、正しい国会意思を結果として生み出すような対立と意見の討論過程のなかにある。議会にとって本質的なものは、それゆえ、論拠と反論との公開の商議、公開の討議、公開の討論、交渉であり…」(p35)と言う。
    日本の国会は存在理由をすでに失っているということか。

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