- Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003403518
作品紹介・あらすじ
「われわれの政府は憲法の下にある。そうして憲法とは、国民が、これが憲法だというものにほかならない。」戦後憲法学を牽引した鵜飼信成(一九〇六―一九八七)が、施行から一〇年足らずの日本国憲法を一般向けに解説した書。独創性と先見性にあふれ、今なお異彩を放つ。豊富な知見を盛り込んだ註も読み応えがある。(解説=石川健治)
感想・レビュー・書評
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本書元版は、1956年に岩波全書として刊行された。新憲法が施行されてさほど経っておらず、他方で改正論議が出てきていた時期であるが、国民の憲法に関する正しい理解が確立されることを期待して本書を著したとのこと。
最高法規としての憲法の位置付け、憲法の基本原理や主要な条項について、その沿革や主旨を短い文章の中で簡潔に説き明かしており、初学者が憲法を理解するに適した本ではないかと思う。
本書自体は今となっては古い本になってしまっているが、これは解説でも言及されているとおり、本書には多くの「註」があって、そこでは著者の解釈、考え方がかなりストレートに記述されていて、熟読すると大いに参考になると思われる。
著者の弟子である石川健治氏の100頁近い解説が付されており、著者の学問的経歴(京城帝大、アメリカ留学等)、主要論文の意義、学風、本書の主な特長など、非常に読み応えがあった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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図書館で借りた。
岩波文庫の白、日本国憲法が制定されてすぐに出された日本国憲法の解説書だ。
憲法教育の黎明期であるはずだが、非常に読みやすくとても整理されている。なんで今までこの本に出会っていなかったのか、と疑問に思うくらいだ。下手な教科書より、この本で「日本国憲法」を学ぶべきだと感じた。
本としては500頁弱で、岩波文庫としても分厚い部類だが、憲法本文が掲載されていたり、解説や脚注が多いからで、本文は見た目ほど厚くない。 -
【書誌情報】
著者:鵜飼信成(1906-1987)
解説:石川健治(1962-)
出版社:岩波書店
通し番号 白35-1
ジャンル 岩波文庫 > 白(法律・政治)
刊行日 2022/06/15
ISBN 9784003403518
Cコード 0132
体裁 文庫 ・ 504頁
定価 1,386円
戦後憲法学を牽引した鵜飼信成(一九〇六―一九八七)が、施行から一〇年足らずの日本国憲法を一般向けに解説した書。独創性と先見性にあふれ、今なお異彩を放つ。豊富な知見を盛り込んだ註も読み応えがある。
https://www.iwanami.co.jp/book/b606539.html
【目次】
はしがき
■第一章 憲法の本質
第一節 憲法の理論
解釈学としての性格 わが国における憲法学の諸学派 天皇主権説と天皇機関説 現行憲法成立過程の諸問題
第二節 憲法の意味
憲法と国家 歴史的範疇としての憲法 近代的意義の憲法 成文憲法主義 硬性憲法主義 近代的憲法の原理の変化 最高法規としての憲法 憲法改正権の限界
第三節 日本における近代的憲法の展開
外見的立憲主義憲法としての明治憲法 明治憲法の二元的性格 天皇主権の崩壊と八月革命 現行憲法の基本原則 統治構造に関する規定 現行憲法の実施
第四節 憲法の改正と憲法の制定
明治憲法の改正としての現行憲法 改正の形式と制定の実質との矛盾
■第二章 日本国憲法の基本主義
第一節 序説
憲法前文の意義 前文の構造
第二節 国民主権主義
主権の観念 君主政と民主政 憲法制定権者としての国民
第三節 永久平和主義
戦争の放棄 戦力の放棄 交戦権の否認 平和条項の一解釈――謀議説
第四節 基本的人権尊重主義
基本権の保障 公共の福祉 自由と平等
■第三章 基本的人権の体系
第一節 序説
体系的な理解 動態的把握――自由権から生存権へ 日本国憲法の基本権の体系
第二節 個人権的基本権
一 序説
個人権的基本権の性質と種類
二 精神の自由
(1)思想および良心の自由
(2)信教の自由
(3)学問の自由
(4)表現の自由
三 人身の自由
(1)法の正当な手続の保障
(2)強制処分に対する保障
逮捕の要件 抑留、拘禁の手続 侵入、捜索、押収の要件
(3)拷問および残虐な刑罰の禁止
(4)刑事被告人の権利
弾劾主義の採用 黙秘権の保障 事後立法の禁止 二重危険の禁止
(5)奴隷的拘束および苦役からの解放
第三節 社会権的基本権
一 序説
二 経済的基本権
(1)居住、移転および職業選択等の自由
(2)財産権
(3)勤労条件に関する基本権
三 社会的基本権
(1)生存権
(2)家族生活に関する基本権
(3)教育を受ける権利
(4)勤労の権利
(5)勤労者の団結権
第四節 基本権を確保するための基本権
(1)公務員の選定罷免権
(2)請願権
(3)裁判を受ける権利
(4)不法行為に基づく国家の賠償責任
(5)刑事補償請求権
■第四章 権力分立制の構造
第一節 権力分立の原理
権力分立論史――概観 権力分立制の諸形態 現代諸国の憲法における権力分立制の問題 明治憲法における権力分立 現行憲法における権力分立概観
第二節 立法過程
一 立法府の地位と構成
唯一の立法機関 国権の最高機関 両院制 議員の選挙 議員の地位
二 立法府の活動
議院の組織 議事手続 会期の終始
三 国会による立法
発案 審議 議決=成立 署名と公布
四 立法の諸形式
法律 政令 最高裁判所規則 議院規則 条約 条例 その他の命令および規則
第三節 議院内閣制
議院内閣制の本質 内閣の成立 連帯責任 内閣の不信任と衆議院の解散 行政権は内閣に属する
第四節 司法権の独立
司法権の独立 裁判官の身分の保障 司法権の構造 裁判の手続
第五節 違憲審査制
憲法保障の制度 司法的違憲審査制の本質 違憲審査権の範囲と効果 憲法の尊重擁護義務
■第五章 民主主義的な若干の制度
第一節 財政立憲主義
財政立憲主義の要請 現行憲法の財政立憲主義 財政に関する特殊原則
第二節 地方自治
地方自治の憲法上の保障 地方自治の本旨 地方公共団体の組織と権能 地方自治特別法に関する制限
第三節 天皇象徴制
国体の変更 象徴としての天皇 天皇は元首か 天皇の権能 皇位の継承
参考文献
附録(日本国憲法・ポツダム宣言)
解説(石川健治)
索引・条文索引 -
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