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- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003412848
感想・レビュー・書評
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非常に感銘を受けることが出来る本であった。
15世紀に今のドイツで発生した「ドイツ農民戦争」についての、唯物論的かつ実証的な探求の本である。
ドイツ農民戦争の元々の発端は、もちろん苛斂誅求をきわめた貢租にたえきれなかったからであるが、そもそも農民とは革命的分子なのであろうか?とエンゲルスは問うている。目先の利益にとらわれず、長い目で見た利益を鑑みない限りは、農奴は革命的になりえないのである。実際ドイツ農民戦争のときは、農奴は諸侯と妥協し、一定の関係改善の協定を結んで帰ってしまうこともあった。しかし諸侯はたやすくその後、その協定を破棄してしまう。
またドイツ農民戦争と同時期に起こった、宗教改革にも触れられている。宗教改革というとルターの活躍ばかりが目に留まるが、実際は革命的であったのはトマス・ミュンツァーであった。ルターはどちらかというと改良主義的で、貴族と妥協することもあった。ただしミュンツァーは聖書を革命的に解釈するなどのことをし、ドイツ農民戦争の時もその指揮を執った。
フランス・イギリスは商工業の発達と共に中央集権的な国家を成立せしめたが、ドイツでは商工業が発達すると却って地方分権的に商工業の中心地が発達し、相互に独立し、利害の一致もあまりなく、少しずつ重なりあうだけであった。またあらゆる面でイギリス、フランス、オランダの後塵を拝していた。エンゲルスはそのドイツの後進性を際立たせている。
このように、唯物弁証法的なドイツの歴史を探求している著作でもある。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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