空想より科学へ (岩波文庫 白 128-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003412879

感想・レビュー・書評

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  • エンゲルス自身の著作『反デューリング論』から3章を選んでパンフレットにしたものとのこと。社会主義理論の古典として一番読まれた著作であるという。
    フランス革命は「理性」の革命であったが、それはブルジョアジー革命であり、社会基盤の整っていないプロレタリアートにはまだそれに対する政治能力が備わっていなかった。そのような時期に、大資本と貧困層の矛盾解決を図っても失敗するだけであり、空想的社会主義に過ぎない。では何が「科学」なのか。それは、社会に弁証法的発展を見出し、下部の経済構造が政治等の上部構造を規定するという唯物史観と、剰余価値により資本主義的生産が成立しているという資本主義の矛盾を指摘したことにあるという。そして、無制限の競争という社会的無政府状態と、生産過剰による不況を繰り返すことで、資本家は生産力の社会化を余議なくされ、それは株式会社、トラスト、国有化という道を辿るが、その矛盾を解消するためにプロレタリア革命がおこり、公共による生産調整が実現し国家権力は衰えることになり、個人は自由を得るという。
    歴史分析として資本主義にいたる唯物史観や経済学としての資本主義の本質は、ある一面ではあるが、鋭い分析で理論としてはよく説明できているし、会社員の身の上としては、身につまされる指摘が多いことも確かだ。(笑)ただ、未来設計理論としてみた場合、社会主義化にいたるプロセスが無邪気で牧歌的なのに加え、過去の社会主義といわれた国家が真逆の体制で、また生産面でも立ち行かなくなったことを鑑みると、現実にエンゲルスが生きていれば驚くほど「空想」的であったと理解・反省するのではないだろうか。訳者による「まえがき」が高揚感に満ちているのも「時代」を感じさせる。
    エンゲルス自身の英語版序文が、唯物論とイギリスの関係を「お上品な方々」に訴えるという感じで書かれており(笑)、エンゲルスによるその歴史理解ともども、これも興味深い。

    • だいさん
      現代の若者は、このような本は読むのかな?
      国体が必要ではないかと、考えるジジなので、本書の内容とは考えが異なるようだ。
      現代の若者は、このような本は読むのかな?
      国体が必要ではないかと、考えるジジなので、本書の内容とは考えが異なるようだ。
      2013/09/11
    • mkt99さん
      コメントありがとうございます。
      現代の若者は読まないのかもしれませんね。あんまり流行りではありませんし、思考停止している人も多そう(?)です...
      コメントありがとうございます。
      現代の若者は読まないのかもしれませんね。あんまり流行りではありませんし、思考停止している人も多そう(?)ですし。(笑)
      しかし同様に、右寄りな方はファンタジー好きな、精神的にも身体的にも縛られたいM気質ではないかと疑っていまして(笑)、左右どちらにせよ押し付けられるのだけは御免蒙りたいと思います。(笑)
      2013/09/11
  • 元々がパンフレットだったらしくて、かなりわかりやすいです。なるほどなーという感じ。でも、やっぱり理想的過ぎるなあ、という感じ。まあ、それは社会理念全般に共通することなのかも知れないけど。



  • 岩波文庫 エンゲルス 「 空想より科学へ 」


    社会主義思想の本。空想的社会主義が、弁証法的唯物論、資本主義の発展を経て、科学的社会主義へ至る


    社会主義の最終目的が、国家(搾取階級の組織)を不必要にして、個人を階級対立や搾取から解放することにあるらしい

    資本や剰余価値の捉え方は マルクス「資本論」より 理解しやすい。社会主義が崩壊した点を考えると、資本主義同様に矛盾や問題点があるのかもしれない。国有化と計画生産が 社会主義の問題点かなと思う


    「社会主義により、国家は 廃止するのでなく、死滅する」は 衝撃的


    「一切の歴史は階級闘争の歴史であり、階級闘争の正体は剰余価値である」

    「不払労働の取得こそ資本主義生産方法とそれによって行われる労働者搾取の根本形態である」


    唯物史観の命題
    *生産、それについでその生産物の交換が一切の社会制度の基礎である
    *どの社会でも、生産物の分配や階級といった社会的編成は、何がいかに生産されるか、その生産物がいかに交換されるかによって決まる


    「恐慌においては、社会的生産と資本主義的取得との矛盾が猛烈に爆発する〜恐慌は生産方法を越えて成長した生産力の叛逆」


    「国家は、搾取階級の組織、その生産条件を外部からの攻撃に対して維持するための組織」


    「抑圧すべき社会階級が存在しなくなり、階級支配や生産の無政府状態に立脚する個人の生存競争がなくなれば〜特殊な抑圧権力たる国家は必要でない」



    「国家は 廃止するのでなく死滅する」





















































  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/708199

  •  マルクス主義の古典を続けて批判的に読んだ(大内兵衛訳)。マルクス主義の基本的な原理がよくわかるということで、★★★★4つ。
     エンゲルスが自著の『反デュ―リング論』を抜粋して作ったパンフレット。マルクスいわく「科学的社会主義の入門」となる書で、また訳者いわく「宏大雄壮な彼らの思想の全体系の摘要であり、その結論にあたる部分」だという。本書は、社会主義文献において最も流布しているものだという。
     第一章ではサン・シモン、フーリエ、オーウェンの空想的社会主義の意義と限界が説かれ、第二章では弁証法的唯物論の成立に至るまでが述べられる。そして、第三章では資本主義の発達のうちに科学的社会主義が到来する歴史的必然性が説かれ、その理論が積極的に展開される。
     資本主義社会の内在的論理を正しくとらえているのかもしれないが、そこから必然的に社会主義、プロレタリア革命が導かれるという主張については、個人的には論理の飛躍を感じた。また、左派と呼ばれる人たちの思考様式を知る上でも、本書は参考になるように思う。

  • 巻末に掲載されている英語版への序文では、ブルジョアジーの支配が封建貴族の支配ほど長くは続かないと書かれていた。なるほど1000年以上続いた封建時代は、ブルジョアジーの支配の期間は足元にも及ばない。しかし、2019年の現在まで続いていると、エンゲルスは予想していただろうか。それだけ、プロレタリアートの分断は巧妙になっているのだろう。

  • 薄い本ですが、
    当時なされた提言が
    今もなお、話題となる。
    今もひとりひとりの生活に
    関係する内容で、
    哲学です。

  • 最も多くの言語に翻訳され、最も多く重版された史上最高の同人誌。労働者向けに弁証法や唯物論が易しく解説されていて、ディレッタントにはありがたい。空想社会主義を批判しつつも、それは当時の環境からいってそういう思想が生まれたのは必然的であるとし、思想的誤りにも関わらず先人たちの偉大さを評価するあたり、エンゲルスが常識人で人格者であることが伝わってくる、マルクスとは大違い。

    マルクス・エンゲルスの意を汲むならしてはアカンことばかりソ連はじめとする東側はやってしまったんだなと思う。そういう点で「本当のマルクス主義」はまだ未試行といえるけど、既にこの思想はソ連諸国のせいで「事故物件」と化しているから、今後とも実現の道はなさそう、御愁傷様でした。

  • やはり元が抜粋版であるためなのか、やや説得力に欠ける部分があると感じました。
    唯物史観は一理あると思いますが、何故そこから階級闘争に直結するのか、元は同じ階級であるはずのプロレタリアートとブルジョアジーの分割の基準は何なのか、私の理解のためにはもう少し詳しい記述が必要なようです。
    また、この書では「剰余価値」については「発見」しただけで、それが実際にどのような経済的効果をもたらしているのかの冷静な考察が行われているわけではないという点も、気になるところではあります。結局のところ、剰余価値を必然とする資本主義体制は現代まで生き残り、「旧社会主義諸国」は資本主義を導入して改革をせざるを得なかったわけですから……。
    本書がヨーロッパで出版された頃の日本は明治時代、世界ではようやく電球やガソリン車が登場した時期です。当時の産業界の様子を目の当たりにした著者が「過剰生産」に危機感を覚えたのは当然だったかもしれません。そして現代文明の資源の浪費についてはよく言われるところです。
    しかし、この書から100年以上を経た時代の読者である私は、今から100年後の人々が21世紀前半の文明を「過剰生産」だと思うかどうかについて、疑問を抱かずにはいられません。

  • 2018/01/14 読了

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