ローザ・ルクセンブルク 獄中からの手紙 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003414033

感想・レビュー・書評

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  • ローザ・ルクセンブルクは第一次世界大戦前後にドイツ革命を指向した革命家、社会主義、共産主義理論家・学者として知られる。
    その過激で情熱的に邁進した波乱に満ちた半生とは裏腹に、本書に収められた手紙は、友を気遣い、植物や鳥や昆虫などを愛で、使役される水牛の待遇に涙し、絵画、文学、詩、音楽など文化的な話題などに終始する感受性豊かな内容となっている。同志であったリープクネヒト(やはり獄中)の妻となった幼友達ゾフィー(愛称はソーニャ、ソニーチュカなど)との手紙のやり取りということであるが、特に、ゾフィーを励まし、前向きに生きよ!と叱咤する姿勢は、自らの逆境を顧みない感動すべき内容だといえよう。

    「『こういう』のがとりも直さず人生というもの、それは昔からそうときまったものです。すべては、苦悩、別離、そして渇望、この三つに帰着するのです。ひとは、いついかなるときでも、このすべてを甘受せねばなりません。(中略)ですからわたしは、いかなる境遇に自分が置かれようと、真底からの幸福感を失うことはありません。」

    「あなたはきっと、まだ『生きている』とはいえぬ暮らしをしている間に、月日が徒らに過ぎ去って再び帰って来ないのだということで悩んでいらっしゃるのではあるまいか、というふうにわたしには思われてなりません。けれども、ご辛抱なさい、そして勇気をお出しなさい!わたしたちは、もっともっと生き永らえるでしょう、そして偉大なことを経験するでしょう。」

    しかし一方で、なんとバイタリティ溢れるおばちゃんだろうという印象も強く残り(笑)、気分によっては近寄られるとちょっと鬱陶しいと思えるようなこともあるように思える。(笑)手紙で本人も記しているが、どうも躁鬱のテンションの落差も激しいようで、ちょっと友人として付き合うにはこちらもそれなりのパワーが必要であったかもしれない。(笑)
    また、この手紙はやり取りしていた一方からのものであり、ゾフィーからの手紙が伴っていないので、いまひとつ関係性がわからない部分もあるのだが、本を持ってこいとか、耐えろ!とか、あなたはこの本は知らないだろうけど・・・とか、友でありながらも片や心理学上の従属関係を思わせるような記述もあり(笑)、まあ、幼馴染が故の気安さだからでしょうけどね・・・。(笑)

    と、冗談はこのくらいにして、本書に収められた手紙は、思想信条(断簡となっているところは政治的内容のためか?)や時代を超えて、逆境にあっても常に前向きに、そして、あらゆるものへの感性を研ぎ澄まし、文化的で建設的な精神を保って生きていけるのだという活力と希望に満ちた内容であることは確かであり、末永く後世へ読み継がれて欲しいと思う。いや、ほんと。

    「いかなることがあろうとも、落ち着いた、そして朗らかな気持ちでお過ごし下さい。人生とはこんなもの、わたしたちは勇敢に、ひるまず、ほほえみをもってこれに対処せねばなりませんーいかなることがあろうとも。」

  • 1/15はローザ
    ルクセンブルク没日
    1919年1月15日、ローザ・ルクセンブルク逝去から100年。彼女を偲ぶための書簡集を。

  •  
    ── ローザ・ルクセンブルク/秋元 寿恵夫・訳
    《獄中からの手紙 1952 世界文学社 19820517 岩波文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4003414039
     
    ♀Luxemburg, Rosa 18710305 Poland Germany 19190115 48 /虐殺
     Liebknecht, Karl 18710813 Germany    19190115 48 /虐殺
     
     平時の平和論者
     
    ── 訳者の秋元 寿恵夫さんは、ローザについてこう書いています。
    「戦争がないとき、漠然と戦争に反対するのは誰にでもできる。また、
    ある種の戦争を予想し、それについての反対として明確な見解をもつ事
    は、必ずしも至難ではない。だが、すでに戦争が始まってしまってから
    でもなお、自らの見解に誤りがないと信じ続けるものの数はだいぶ減っ
    てくる。しかし、少しは、ある。
     けれども、この意見を公然と表明し、できることならその戦争をやめ
    させようと働きかけるものに至っては、もはや希有の存在に属するので
    ある。ローザ ルクセンブルクというひとこそは、正しくそのひとりな
    のであった。」と。── ローザ ルクセンブルクの時代(20070727)
    http://plaza.rakuten.co.jp/articlenine/5010 (20080811-1219)
     |
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19710228 細菌学史 ~ 十三人の狩人たち ~  
     
    http://q.hatena.ne.jp/1422823923#a1243467(No.2 20150202 15:25:45)
     ↑実録 ↓長期と短期 ~ 平時の勇将、非常時の知将 ~
    http://q.hatena.ne.jp/1372655128#a1206358(No.1 20130701 16:49:51)
     
    (20150215)
     

  • 2014.4.18
    86ページからの手紙が授業で使えそう。
    後書きも読み応えがある。こちらも授業で使えそう。

  • カウツキーやベルンシュタインといった修正主義者たちにはあくまで反対しつつ、革命的マルクス主義者の地歩を守り1月蜂起で虐殺されたローザ・ルクセンブルクの書簡集。獄中にあっても人間的な感性を失わず、花鳥風月を悠々と楽しむ姿には、社会主義者の理想を見る思いがする。

  • どの手紙からも感ずる、ローザの愛情深さと、そして、自然や動物に対する豊かな感性と、表現力。

    辛いことがあったとき、「すべては、苦悩、別離、そして渇望、この3つに帰着するのです。ひとはいつかいかなるときでも、このすべてを甘受せねばなりません。」というフレーズが浮かんできます。
     いかなる境遇に置かれても心底からの幸福感を失うことはないという人生観に励まされてきました。

    私にとって大切な1冊です。

    • うさこさん
      私も好きな一冊です。背筋はピンとするのですが、心が穏やかになります。
      翻訳も綺麗ですしね。
      私も好きな一冊です。背筋はピンとするのですが、心が穏やかになります。
      翻訳も綺麗ですしね。
      2010/05/27
  • ローザ ルクセンブルクについてはよく知らない。
    ただ獄中にいながらも底しれぬ希望、信念、好奇心は何も変わることがないようであった。

    いかなる逆境でも全てを前向きにとらえ、全てを自分のホームグラウンドに変えていった。そして何より常に朗らかであった。

    この本を読んでいて、ローザが獄中にいることを全く感じなかった。おそらくこれは壮大な世界観が彼女の手紙の中に描かれていたからであろう。


    ローザはこの世に生きる人間の模範となるような人物だったことが、手紙から感じられた。

  • 書簡集。

    瑞々しい文章。感性。

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著者プロフィール

1871年3月5日、当時ロシア支配下にあったポーランドのザモシチに、同化ユダヤ人の商人の末娘として生まれる(1870年生まれの説もある)。高校時代より社会主義運動に加わり、18歳のとき、逮捕の危険を逃れてスイスへ亡命、チューリヒ大学で学びながらポーランドの運動のためにはたらき、学位取得後にドイツ市民権を取得してベルリンに移住。以後、本格的に政治活動・文筆活動をおこなう。1904年以降は幾度となく投獄されながらも、ドイツ社会民主主義陣営の政治理論家・革命家として活躍し、とくに第一次世界大戦が始まって社会民主党が戦争支持にまわってからは、党内最左派として反戦活動に力を注ぎ、そのため長い獄中生活を強いられる。ドイツ敗戦後の1918年11月に釈放された後、カール・リープクネヒトとともにスパルタクス団を再編し、機関紙Die Rote Fahne(『赤旗』)の編集長、1918年12月から1919年1月1日のドイツ共産党創設にあたってその中心メンバーとなる。それから二週間後の1919年1月15日、ベルリンでの争乱のさなか反革命軍によって虐殺された。

「2021年 『獄中からの手紙【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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