社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」 (岩波文庫 白 209-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003420928

作品紹介・あらすじ

今世紀初頭、社会科学に巨大な業績をのこしたヴェーバーが、社会科学の方法論について論じた記念碑的論文(1904)。認識理想としての「価値自由」と方法概念としての「理念型」を定式化し、後世に大きな影響を与えた。本文の理解を助けるための付録3篇、詳細な解説・注、索引を付す。旧版『社会科学方法論』の補訳新版。

感想・レビュー・書評

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  • 補訳者の働きが見事。一番重要なキーワード「理念型」についても、提示された「理想気体」とのアナロジーが本当に見事で、かつ、概念の理解を易しくしてくれる。

    それにしても幾度となくうならされる。大変な本。

    ===(以下、論旨)===

    社会政策と科学の結びつけ(関係)について、問題の所在を指摘する。まずは「存在(sein)」と「当為(sollen)」の分離の必要性のこと。
    経験科学が論じ得るのはせいぜい前者。後者、つまり価値の妥当性を評価するのは科学ではなく信仰であり、そこには「価値秩序の神々の争い」がある。
    個別問題において"さえ"、特定の目的の自明性は薄れるのだから、実践的な個別問題の解決のための一義的規範・原理など、存在しえない!
    だから、自分が念頭に置く「究極最高の価値基準」がいかなるものか(どこで悟性に、どこに感情に訴えているのか)を、常に鋭く明示する必要がある。
    但し、「問題」性を見出す瞬間に、それへの関心という形で、主観的見方が元になってしまう、という危険がある。では、社会科学的認識(研究領域)とは、どう画定されるされるのか?(我々の追求する心理の客観的「妥当」とは?)

    われわれの科学は、"ひとつの"特定の観点のもと、歴史解釈を得ようと努め、"ひとつの"部分像ないし予備労作を提供するもの。
    だから、一元論的「唯物史観」――例えば経済学において、「経済的動因から演繹できないものは"すべて"、まさに"それゆえ"、科学上"意義のない"『偶然』として取り扱われるか、判別しがたいほどに拡張されて、なにほどか外的手段に結びついている人間の利害関心が、ことごとく当の概念のなかに引き入れられる」ようなもの――は、断固拒否すべきなのだ。
    文化生活ないし社会現象の分析にあって、特定の「一面的」観点を"ぬきにした"、端的に「客観的な」科学的分析といったものは、"およそありえない"!

    個別問題の認識において、「法則」なんかでなく、「独自の布置連関」が大切。だが"比較"は有意義で、そのための"手段"としてのみ、法則・要因の確定は必要だ
    (但し、最も普遍的な法則は無価値で、特殊化された固有観点から!
    自然科学等では普遍法則の発見こそ志向されるが、社会科学ではそうもいかない)。
    そこで、"理念型"――実在の特定要素を、"思考の上で"高めてくれる、一つのユートピア的性格をもつし思想像――を提案したい。これは、理想や規範とは異なり、純然たる理念上の極限概念であり、その構成は目的でなく手段。
    もっとも、社会はつねにゆれ動くものであり、各概念は暫定性・不確実性をもつため、つねにこれに追いつこうと「総合原理の探求」を志向すると共に、抽象と具体の行き来により、「概念の意義の限界」を指摘し批判することこそ、社会科学の役割である。

  • 昔読んだ本

  • 対象が「何であるか」と「何であるべきか」を区別するように。「何であるべきか」は価値判断。自分の価値観を自覚し、それに捉われずに事実を認識するように。価値から自由であれ。人は主観的であることを自覚し、なるべく客観的であるように心がけよ。特定の価値に基づいて物事を見ていないか、認識が一面的でないか、常に自問せよ。▼ある対象に反対だからと言って非難の感情を抱いたり、賛成だからといって称賛の感情を抱くな。人々が非難したり称賛している事実を観察し、その行動の背景にある規則や社会の仕組みを明らかにするのが社会科学。

    社会現象の本質的な特徴を示す抽象的な概念。混沌とした複雑で多様な社会現象の中から本質的特徴を抽出して論理的な説明を加えたもの。これを使って現実を探索する。これを現実に当てはめると、ズレが出てくる。どうズレているかを調べることで、現実はどうなっているのか知ることができる。現実とのズレを探り出し、より鋭く現実を認識できる。▼あらかじめ設定した型に現実を押し込めることで理解する類型とは異なる。

    ウェーバー『客観性』1904

  • 1段から 客観性、妥当性について
    40段あたりから 理念型について
    60段あたりから 結論

    科学における客観性は、おのれの価値に基づいた主観的な要素を排除することが出来ない。にもかかわらず、その根拠とする価値に対してなんらかの信仰をもっている。価値と経験(事実)の区別を前提とした上で、社会科学とは、時代によって変わっていくが、その時代のおよその概念「理念型」でもって、たえず更新していく作業といえるのではないか。

    「理念型」は完全なものではないし、価値から自由になることもできない。その時代の価値の中で、「理念型」を「使用」(印象的な表現だったため)することでしか妥当性を保証することはできない。

    また、実在と理論(実在には到達しないもの)の反転の危険性を指摘している。マルクスを例に、現実が理論に従属することはありえないとする。理論は目的ではなく、「手段」であると。

  • 力量不足によりぼんやりと、非常にぼんやりとしか理解できなかった。
    解説がわかりやすい。(解説がなかったら理解は不可能だったであろう)

  • 読み直したさ:★☆☆
    理念型は意義ある連関を分析するための手段である。
    〈感想〉
    社会科学について勉強し慣れていないため,頭の切り替えができるまで読むのが苦しかった。仲正・ウェーバーを読むをサラッと読んでから読んだが,あらためて仲正本を読み直したい。
    解説は読んだ方がいいのだろうか。

  • [ 内容 ]
    今世紀初頭、社会科学に巨大な業績をのこしたヴェーバーが、社会科学の方法論について論じた記念碑的論文(1904)。
    認識理想としての「価値自由」と方法概念としての「理念型」を定式化し、後世に大きな影響を与えた。
    本文の理解を助けるための付録3篇、詳細な解説・注、索引を付す。
    旧版『社会科学方法論』の補訳新版。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 非常に難しい本。何度か読んでいるがまだよく理解できていない。カーの『歴史とは何か』、内田義彦の『読書と社会科学』などに通じている内容だと思う。

  • 事実認識と当為認識は如何にして分離し得るか。-ヴェーバーはそれを自分の認識が徹頭徹尾、主観的な認識であることを自覚すること、そしてそれを明示することだ、と言う。そうすることで主観的な認識は客観性によって担保される、言い換えると、認識を事実認識へと高めることができる、と考えた。つまり、それは自己を他者化すること、他者に対して自己を啓くことである。

  • 世界に起こる出来事がいかに完全に研究され尽くしても、そこからその出来事がいかに完全に研究されつくしても、そこからその出来事の意味を読み取ることはできず、かえって意味そのものを創造することができなければならない。つまり世界観とは決して経験的知識の進歩の産物であり、したがって、われわれをもっとも強く揺り動かす最高の産物ではないものである。したがって、われわれをもっとも強く揺り動かす最高の理想はどの時代にも、もっぱら他の理想との闘争を通して実現されるほかはなくその際、他の理想が他人にとって神聖なのはわれわれの理想がわれわれにとって神聖なおとまったく同等である。

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著者プロフィール

1864-1920。ドイツ、エルフルトに生れる。ハイデルベルク、ベルリン、ゲッティンゲンの各大学で法律学を専攻し、歴史、経済学、哲学に対する造詣をも深める。1892年ベルリン大学でローマ法、ドイツ法、商法の教授資格を得、同年同大学講師、93年同助教授、94年フライブルク大学経済学教授、97年ハイデルベルク大学経済学教授、1903年病気のため教職を去り、ハイデルベルク大学名誉教授となる。1904年Archiv für Sozialwissenschaft und Sozialpolitikの編集をヤッフェおよぴゾンバルトとともに引受ける。同年セント・ルイスの国際的学術会議に出席のため渡米。帰国後研究と著述に専念し上記Archivに論文を続々と発表。1918年ヴィーン大学教授、19年ミュンヘン大学教授、経済史を講義。20年ミュンヘンで歿。

「2019年 『宗教社会学論選 【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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