支配について I 官僚制・家産制・封建制 官僚制・家産制・封建制 (I) (岩波文庫 白210-1)

  • 岩波書店 (2023年12月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (546ページ) / ISBN・EAN: 9784003421017

作品紹介・あらすじ

支配はいかにして成り立ち、何によって支えられるのか。支配の諸構造を経済との関連で論じたテクスト群。ウェーバー没後に編集された『経済と社会』のうち、『支配の社会学』として知られてきた部分を全集版に基づき訳出。詳細な訳注や用語解説を付す。Ⅰは官僚制・家産制・封建制をめぐる章を収録する。(全二冊)

みんなの感想まとめ

支配の構造を経済との関連で深く考察する本書は、官僚制、家産制、封建制といったテーマを通じて、歴史的背景や現代社会への影響を探ります。新訳版は、難解な表現を和らげ、一般読者にも理解しやすい内容に仕上げら...

感想・レビュー・書評

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  • ノリが悪いとか、契約したからとか、昨日約束したでしょうとか。なんだか“断れない雰囲気“でやらされてしまう。そこに一つの“支配の本質“がある気がしてならない。明日、目を覚ます私やあなたは確実に昨日までの設定を引きずっている。見知らぬ土地なら全く違う振る舞いで、自由に生きても良さそうなものだが。そんな約束事、社会や言葉、いや“自我の呪力による拘束“こそ、よく生きるために見つめ直すべきなのだろう。

    本書で書かれているのは、支配という現象を「なぜ人は従うのか」という構造の問題として捉え直す試みであり、少なくとも私はその部分に注目して読んだわけだ。

    一般に支配というと、支配者と被支配者が対立的に存在する図式が想定される。しかし実際にはその対立構図は外部にあるだけではなく、個々人の内部にも根強いている。その際、人は単に命令に従うだけでなく、その命令が“正当である場合“規律的に振る舞おうとする。

    ウェーバーが提示する「正当化(レジティメーション)」の三類型について。合理的支配、伝統的支配、カリスマ的支配。人がいかにして自発的に従うかという経路を示す。例えば、官僚制においては、安定した給与や昇進の予測可能性、名誉を損なわない規律といった条件が、支配と服従の構造を確たるものにする。

    この構造がシステム化されたのが近代であり、資本主義や民主主義などの制度であろう。システムにより支配者を交換可能な部品にする事に成功した。レジティマシーをお金や学歴などに定量化する事もシステム化には重要だったのである。

    少し話を変え、本書の歴史的意義について。

    この著作の重要性は、近代国家を「官僚制」という概念で捉え直した点にあるのだと思う。ウェーバーが生きた時代は、封建制や家産制的支配から、近代的な国家・行政システムへと移行する過渡期だった。彼はこの変化を、「支配原理の転換」としてし、人格や伝統に依拠する支配から、ルールと手続きに依拠する支配への移行としたのだ。

    この思想は、国家だけでなく、企業、軍隊、教育機関といったあらゆる組織が、同じ官僚制的原理で運営されていることを説明する枠組みになったはずだ。ウェーバー以前にあったものを彼がより明確に言語化した。

    お金さえ貰えば何でもしそうな“資本を支配者とした官僚制的原理“に私は時々不安になる。イルカが飛び跳ね、猿が曲芸を。そして人間は日々、働き続けるのだ。

    人は命令に従っているのではなく、「従うべきだと思っている自分」に従っている。

  •  学生だった云十年前、政治学や社会学の講義では、ウェーバーの『プロ倫』は必読文献、『支配の社会学』は大体参考文献に挙げられていた。当時『プロ倫』はなるほどと思う程度には読んだものの、『支配の社会学』は、いかにものドイツ的な固い文章が読みにくかったし、叙述されている事項について基礎知識にそもそも乏しかったため、官僚制とカリスマの箇所をつまみ食い的に読みはしたものの、途中で挫折してしまった。
     今回、文庫版の新訳が出たということで、再チャレンジ。

     はじめに、「支配」の定義その他の概論的事項について叙述。続いて、「官僚制」「家産制」「封建制」の議論に。
     「官僚制」は現代にまで続いている仕組みであり、また自分も社会人として長く組織で勤務したこともあって、なるほどと思う箇所が多かった。
     「家産制」「封建制」については、ウェーバーが古代のエジプトやローマ、中国、ヨーロッパ、イスラームそして日本まで、多くの歴史的実例に基づいて議論を進めていることに今回気付いた。(その例が今日の学問水準から見て正しいと評価されているかどうかは分からないが、)だからこそ、歴史が単純に一方向に進むものではないことをいろいろな箇所で論じているのだろう。
     そしてまた、本書が『経済と社会』という全体の中に置かれていることからも分かるように、家産制や封建制といった仕組みを支えている、あるいはこれらの仕組みが影響している”経済”というものの位置づけの重要性というものもある程度理解できた。

     訳者は訳語や訳文について、一般読者に分かりやすいようかなり留意してくれているように思う。この調子で行けば、Ⅱも完読できそうだ。
     

  • 大学生の頃、ゼミで下巻の「カリスマ」に該当する部分を読んだ思い出があり懐かしさから購入。大学生の頃に読んだので旧訳版だったと思うのだが、あまりにも難解で正直ほとんど理解できなかったように記憶している。それに比べると大分読みやすいようには感じたが、やはり難しかった。上巻は「支配」「官僚制」「家産制」「封建制」について。「支配」「官僚制」の記述については、現代の政治や行政にも思い当たる節があり、読み継がれるのにはやはり理由があるのだなと感じた。注釈や用語解説は大変ありがたい。

  • テキスト自体は私にとってかなり難解であり、歴史的事象との結びつきについて十分に理解ができなかったが、支配構造の背景にある原因、または結果と見られるものとの相互作用について丁寧に論じていると思う。十分な理解には再読が必要である。

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著者プロフィール

1969年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。2003年、ボン大学哲学部で博士号(Ph.D)取得。早稲田大学政治経済学術院助教、岐阜大学教育学部准教等を経て、2010年4月より立命館大学法学部准教授。専門は政治学、政治思想史。主な著訳書に、Kampf und Kultur: Max Webers Theorie der Politik ausder Sicht seiner Kultursoziologie( Berlin: Duncker & Humblot, 2005)、『闘争と文化―マックス・ウェーバーの文化社会学と政治理論』(みすず書房、2006年)、『官僚制批判の論理と心理――デモクラシーの友と敵』(中公新書、2011年)、『はじめて学ぶ政治学』(共著、ミネルヴァ書房、2008年)、『大学と哲学』(共著、未來社、2009年)、クラウス・オッフェ『アメリカの省察――トクヴィル・ウェーバー・アドルノ』(法政大学出版局、2009年)、などがある。

「2011年 『比較のエートス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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