天体による永遠 (岩波文庫)

制作 : 浜本 正文 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003422519

作品紹介・あらすじ

19世紀稀代の革命家ブランキ(1805‐1881)は、パリ・コミューン勃発の前日に逮捕される。トーロー要塞幽閉中に書かれた最後の著作が本書である。それは革命論ではなく、宇宙の無限から人間を考察したものだった。想像力を広大な宇宙に飛翔させ、そこでブランキが見たものは?ベンヤミンを震撼させたペシミズムの深淵。

感想・レビュー・書評

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  • ナポレオンから第3共和制までの、フランス政治史の中でも激動の時代に生きた「革命家」である。
    半端じゃないよー!
    50回以上の通算40年を超える禁固刑にめげることなく、指導者として革命家であり続け。67歳で幽閉されたトーロー要塞はブルターニュ半島の先端近く、イギリス海峡の荒波に揉まれる岩礁の上に築かれた古い要塞。囚人独りに駐屯部隊がつく。映画「パピヨン(古いわー)」の世界だよ。
    そんな中で想いを馳せるのは無限の天体に循環思想だよ。幾らニーチェとの相似点があったって、この不屈の精神は「ペシミズム」じゃない。
    ノリは全然違うけど、現実からぶっ飛んで、ココロは宇宙に飛んじゃうトコ、足穂ちっくと言えなくもない。

  • 宇宙は無限であるのに対し、原子の種類は有限である。ゆえに無限の宇宙は有限の原子の組み合わせが繰り返されているだけだ。すなわちこの宇宙のどこかに、この地球と同じ星は存在し、そこには私たちと同じ人類が生息しているはずだ。しかもその数は無限なのである。その無限に存在する地球のコピーの星の中にはナポレオンが勝利を収めた星もあれば市民の革命が成就した星もあるはずだ。失敗に終わった企ても、どこかの星では成功しているに違いない……。19世紀フランスの革命家が獄中で構想した本書は、宇宙の無限性を語りつつやがてパラレルワールド論を展開するに至り、永劫回帰の思想にたどり着く。革命の挫折とルサンチマンと希望が織り成す稀有なる宇宙論(といってよければの話だが)。

  • フランス史に名を成す著名な革命家が、40年を超す獄中生活で書き残した思想書。天文学に材をとっている。
    当時(19世紀)の先端的な天文学的発見を根拠にして、宇宙の運動法則を演繹し、あまたの恒星系の行く末を予測している。そこから論は人類におよび、繰り返されるだけで進歩のないペシミスティックな永劫回帰が語られる。
    革命家が悟る、進歩を伴わない永遠の反復は、そのこと自体が悲劇的だ。しかしながら、宇宙的全体性から引き下ろしてきた人類の悲劇的な姿を論ずるブランキの語調は、安息に近いものを感じさせる(諦念を伴いながら)。
    囚われの要塞という息詰まる閉塞状況下で、文字通り宇宙大に翼を広げるブランキの思考に、畏怖する。ある強靱な魂を極限状態におくと、ここまで血の滲んだ思考の膨張が起こりえる、という感動がある。

  •  「宇宙は、いたる所に中心があり、表面がどこにもない1つの球である」と、パスカルをもじって本書で無限のイメージを表す著者は、天文学者でも哲学者でもなく、19世紀を通じた屈指の革命家だ。そのカリスマ性ゆえに時の権力が変わっても迫害を受け続け、獄中で過ごした日々は43年に及ぶ。彼は、19世紀のあらゆる体制を通じて囚人であった。
     本書は、著者が晩年に投獄された、文字通り地獄のようなトーロー要塞で書き綴った宇宙論だ。けれどもページを繰っていくと、最後の著作となった本書を書いているとき、彼は囚人ではなく、科学者であり詩人であったことがわかる。「知性の枠を踏み越えることなく、しかし同時に無限を傷つけることもなく、自由に無際限を拡大する」ことで永遠を描く、「地獄を対象とする真の神学的思弁」(訳者)。

  • 恥ずかしながら革命家たるこの著者の名前も知らず、タイトルに惹かれて(岩波だし間違いはないだろう)と買ったもの。生涯の長い時期を牢獄で、星を見つめながら、この本を書いたらしい。革命的な主張ではなく、かといって天体論でもないのだが、星と宇宙と自己を見つめ続けた内省の書で、深く思想の宇宙の中に下りていけるのがわかる。

  • なんだかSFを読んでいるようでした。

    そして所々、広大で真っ暗な宇宙の真ん中にぽつんと小さな点のように光る星の姿を思わせるような文章で、その奇妙な静けさが印象的でした。

    繰り返しと言う永遠の環。

    ブランキさんはただそれを諦めて眺めているんじゃなくて、「それでもどこかに!」と変化の道を探しているような気が、ほんのりとその奇妙な静けさから滲み出ているような感じがします。

  • これはその生涯の大半を監獄で過ごした「黒服と黒手袋のダンディな革命家」の思想を知る上で非常に興味深い1冊だ。ブランキ(1805-1881)は政治改革者であったのみならず当代一流の天文学者でもあり、有名な「革命論集」のほかに本書のような天文と宇宙についての詩と霊感に満ちた科学書を残してくれたことは嬉しい驚きである。

    美しい幻想と予言が宝石のように鏤められたこの不可思議な天文の書が綴られたのは1871年のパリ・コンミューンの翌年、監禁されていた倫敦のトーロー要塞の地獄のように劣悪な牢獄の真っただ中において、なのであるが、彼は当時の最新学説であったカント=ラプラスの「星雲論にもとづく太陽生成論」などを批判的に継承しながらも、いかにも革命家らしい大胆不敵な宇宙論を提起している。

    彼は全宇宙が無限だとしても、その内部の恒星系群はおよそ100の元素のみによって構成されていることから、その元素が生みだす化合物の組み合わせ(その中には地球やわれわれ人類も含まれている)は有限であるため、全天体はそれがどのような天体であろうとも時空の中に無限に存在すると考えた。

    その結果われわれ人間は、この瞬間にも自分と同じ人生を送っている無数の「自分」の分身をこの膨大な宇宙のあちこちに持つことになる。このような「地球&人間複数論」は、ほぼ同じ頃にボードレールやニーチェによっても唱えられて現在の宇宙物理学説に及んでいるが、ブランキのそれはきわめてメランコリックでペシミスティックな点がユニークである。

    けれども「宇宙は限りなく繰り返され、その場その場で足踏みをしている。永遠は無限の中で同じドラマを平然と演じ続けるのである」と本書のエピローグで述べたブランキは、しとしとと雨降る今宵も、遥かなる宇宙の彼方で永久に終わることなき彼の孤独な革命運動を遂行しているのだろう。

    死してまた蘇りつつ世直しを未来永劫続ける洒落者 蝶人

  • 永劫回帰のことは良く分かった。なるほど、それを考えていたのはニーチェだけでない。
    だが今を生きる私たちにとって、どのようにして永劫回帰という結論にたどりついたがが問われるべきではなく、どうして人は永劫回帰という結論を求めるのかを考えるべきなのだと思う。

  • 岩波文庫 080/I
    資料ID 2012200357

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