贈与論 他二篇 (岩波文庫)

制作 : 森山 工 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 116
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003422816

作品紹介・あらすじ

贈与や交換は、社会の中でどのような意味を担っているのか?モース(1872‐1950)は、ポリネシア、メラネシア、北米から古代のローマ、ヒンドゥー世界等、古今東西の贈与体系を比較し、すべてを贈与し蕩尽する「ポトラッチ」など、その全体的社会的性格に迫る。「トラキア人における古代的な契約形態」「ギフト、ギフト」の二篇と、詳しい注を付す。

感想・レビュー・書評

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  • 読んで良かった。等価交換どころか、交換とも異なる概念、贈与による経済が如何に広く人類社会に存在していたかを示唆。
    体系的にまとめたり現代西欧文明の中に分析したりとかはほぼ無く、ただ幾つかの事例を列挙して示唆して行くので、全体としては同様の内容の繰り返しも多く散漫な所がある。
    しかしそれでも、ポトラッチやクラから伺える、気前の良さが社会の中で非常に重要な位置を占める構造は、今も鮮烈であり、思考の発展に大きな影響を与える。
    資本主義の末路を回避するための方法として考えられた共産主義は、資本主義の発展系であって、交換の経済。
    それとは根本から違う意味での格差是正の概念として取り上げられる贈与。
    上述の様に本としてのまとまりは低いので、図書館などで借りて、気になる部分から読むのが良いかも。

  • 個人が個人の利益の追求に走る社会に警鐘を鳴らし、全体に対する意識(全体給付)を向け、円満な社会(アーサー王の円卓[p]のような)を目指そうという論。社会主義的か?成功した富裕層が、被災者に多額の寄付やNPOなどを組織をしたり、匿名で学校などに何かを寄付したりするようなことについての考察。

    一方的にお返しもせずに、贈り物をもらうことはどういうことなのか、部族などのトップたるものがなぜ贈り物などを与えなければ威信を保てないのか[※ポトラッチ]というのはおよそ信仰(迷信)と結びついている[p100、p231など]。類似した例が世界各地にみられる。例示内容は興味深い。

    個人と個人が契約を履行するとしても、それは個人ではなく集団と集団(の連盟関係(アリアンス))である。集団はクランや部族や家族のこと。過去はいまほど「個人」が際立つことはなかったらしい[p446]。従って、あるまとまった集団のなかで権力を持つには、ポトラッチは欠かせなかったのであり、それが下位集団との信頼関係、自分の身分の明示。

    誰かから何かを一方的に貰う(贈与される)、ということは従属である。ただし、例えば、返済能力のない被災者が寄付を受け取るのは、しっかりとした生活を取り戻すということなどによって返済できるといえるだろう。





    ポトラッチ(競覇型の全体的給付)[p74]

    贈与[p212]


    ネクスム(法的な縛り)[p304、307など]

  • たぶん20年ぶりぐらいで買った岩波文庫。
    そして相変わらず難しくてよく分からない。

    貨幣が登場する前から,人類には贈与というかたちで
    モノのやりとりがあり,そこには「贈与する義務」
    「受け取る義務」「お返しをする義務」という,通常の
    売買とは異なるルールがあって,という話。

    分かりやすいのは香典とか,お歳暮とか,冠婚葬祭的なものなんだろうけど,
    著者によれば社会保険とか協同組合の考え方にも通じているらしい。
    なるほど……?

  • マルセルモース 「 贈与論 」

    贈与を 集団間における給付と定義し、お返し(反対給付)を義務としている。集団間の贈与が 集団の規範、宗教儀礼、交換経済に組み込まれている

    「贈与により 人、物、霊魂が混じり合う」感覚は 集団の感情を理性的にコントロールする手段だったのではないか?

    全体的給付の体系→交換(集団から集団へ)
    *法的、政治的、経済的、宗教的な体系
    *給付と反対給付を繰り返すことにより 相互に結びつく
    *交換するのは 財、ふるまい、饗宴、女性、子供、踊り

    ポトラッチ=競覇型全体的給付(相互に対抗し合う)
    *お返しは 絶対的な義務
    *富によって授けられる名誉、権威→義務を果たさなければ 権威と富を失う〜暴力や敵対関係を生む

    3章の古典ヒンドゥー法は 宮沢賢治「なめとこ山の熊」の世界観と同一
    *物の真の所有者=死者の霊、神々〜食糧が神格化
    *人間と神々との契約、交換→目的は 平和的関係を手に入れること

  • (01)
    最終章では、政治、社会、経済、倫理の各側面から現代における贈与のあり方を示唆しており、著者が過去や他の民族を生きられている世界としてとらえている点は重く受け止める。
    贈与は、決して一方的な(*02)ものでもないし、贈与が非対称である場合は、社会全体としてバランス(*03)が図られるように機能することをも示している。物々交換や自然経済といった概念が一般的に流布している未開の単純さといった認識を批判し、贈与や交換が単なる経済の範疇にとどまらない拡散や集中を現象することを捉えている。

    (02)
    売買がバイバイとして、売ることと買うことが等価というよりも同義であること、担保や保証や分割や賃貸などの現行の制度にも残る物のやりとりをめぐる諸々の契約も贈与が示すある点で統合されることなどは目から鱗の視点かと思う。
    語源をあたり語幹を見出すことで贈与の諸関連を暴くという方法論も、まだまだ適用できる範囲が広いように感じた。

    (03)
    賭けとその賭場、シャーマニックな呪術、名前と言葉、性と結婚といったテーマも贈与をキーとすることで、そこにある問題に新たな視野を開いており、非常に冴えた論考として読める。富の集積や蓄積(*04)といった権力集中にも、権力の停止や廃棄すら予感させるポトラッチというバランサーを与えることで、贈与システム(*05)の有効を説いている。

    (04)
    考古学的な対象となる、何らかの理由で図るも図らざるも埋設されたモノについてもこの贈与論によることで理解が進む。意図的に壊され埋められたモノ、保存と伝授のために埋められ伝えられたモノ、それらの聖性が拠るところを本書からはうかがい知れよう。

    (05)
    レヴィ・ブリュルの未開社会の心性との関連、柳田國男が説いた「おつり」との関連も、この贈与論から改めて考えてみたいものである。

  • 『贈与論 他二篇』(岩波文庫 2014)

    原題:
     Une forme ancienne de contrat chez les Thraces, 1921
     Gift, Gift, 1924
     Essai sur le don: forme et raison de l'échange dans les sociétés archaïques, 1923-24
    著者:Marcel Mauss(1872-1950)
    訳者:森山工(1965-)〔もりやま たくみ〕

    【メモ】
    ・「そのた」の二つの論文は、日本語訳が初めてだそうな。
    ・目次を手打ちした後に、ウィキには『贈与論』の大まかな目次が載せられているいることに気づきました。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/贈与論>


    【目次】
    凡例 [003-005]
    目次 [007-009]

    ○トラキア人における古代的な契約形態 011
      I  013
      II  017


    ○ギフト、ギフト 035


    ○贈与論――アルカイックな社会における交換の形態と理由 051
    序論 贈与について、とりわけ、贈り物に対してお返しをする義務について 053
      エピグラフ/プログラム/方法/給付。贈与とポトラッチ 

    第一章 贈り物を交換すること、および、贈り物に対してお返しをする義務(ポリネシア) 079
    一 全体的給付、女の財‐対‐男の財(サモア) 079
    二 与えられた物の霊(マオリ) 089
    三 その他の主題。与える義務、受け取る義務 100
    四 備考――人への贈り物と神々への贈り物 108
      さらなる備考――施しについて

    第二章 この体系の広がり。気前の良さ、名誉、貨幣 131
    一 寛大さに関する諸規則。アンダマン諸島 131
    二 贈り物の交換の原理と理由と強度(メラネシア) 136
      ニューカレドニア/トロブリアンド諸島
     このほかのメラネシア社会 188
    三 アメリカ北西部 196
     名誉と信用 196
     注記 198
     三つの義務――与えること、受け取ること、お返しをすること 230
     物の力 258
     「名声のお金」 280
     第一の結論 298

    第三章 こうした諸原理の古代法および古代経済における残存 301
    一 人の法と物の法(非常に古拙なローマ法) 303
      注解
     インド=ヨーロッパ語系の他の諸法 335
    二 古典ヒンドゥー法 338
     贈与の理論 341
    三 ゲルマン法(担保と贈り物) 372
     ケルト法 389
     中国法 390

    第四章 結論 393
    一 倫理に関する結論 393
    二 経済社会学ならびに政治経済学上の結論 413
    三 一般社会学ならびに倫理上の結論 436

    訳注 [455-466]
    訳者解説――マルセル・モースという「場所」 [467-489]

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