大衆の反逆 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003423110

作品紹介・あらすじ

スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセット(一八八三─一九五五)による痛烈な時代批判の書。自らの使命を顧みず、みんなと同じであることに満足しきった「大衆」は、人間の生や世界をいかに変質させたのか。一九三〇年刊行の本文に加え、「フランス人のためのプロローグ」および「イギリス人のためのエピローグ」も収録。(解説=宇野重規)

感想・レビュー・書評

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  • ちくま学芸文庫版は大学の時、さらに社会人になっても読んでいたが、今回は岩波文庫版を読んでみた。

    100年前の話なのだが、個人の自由が脅かされているのではとの雰囲気がある、自らの頭で考えない人が増えている、固有の文化が転換点にある、など現代に通底するテーマと視座を提供してくれる。オルテガの歯切れ良い語り方もよい。

    名著は出版社を超えても名著なのだと感じた。

  • 名著「大衆の反逆」、南相馬発の新訳版 スペイン思想研究家が十数年かけ完成、直後に死去|好書好日
    https://book.asahi.com/article/13429514

    佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史『大衆の反逆』オルテガ・イ・ガセット|文藝春秋digital
    https://bungeishunju.com/n/nb07b977135f3

    大衆の反逆 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b505582.html

  • 激高した労働者が武装蜂起、世界初の労働者政権(パリコミューン)が成立(1871)。▼労働者たちは、労働運動など集団になると一体感をもち、無意識に同一の方向に動く。個々の労働者の性質とは異なる集団の精神が生まれる。▼群衆は衝動で動き、他人の言葉を軽率に信じこむ。熱しやすく冷めやすい。大衆主導の民主主義への不信。ル・ボンLe Bon『群衆心理』1895

    大衆(的な性質)。個性を持たない。同調しやすい。現状に満足している。責任感がない。わがまま。下品。社会について深く考えない。特別の資質をもたない。平均的な人たち。他の人と同じであることに喜びを見出す。自分の意志をもたず、受動的に行動する。自分の権利を押し通そうとする。こうした大衆(的な性質をもつ人々)がいま最大の権力を握っている。ファシスト党もボリシェヴィキも大衆に支えられている。自分の専門に閉じこもり傲慢で他人の言葉に耳を傾けない専門人(知識人)も「大衆」的な人々。▼エリート(的な性質)。良い意味で個性をもつ。行動が自律的。向上心がある。責任感がある。公共の利益を優先。高い品格。社会全体を導こうとする意識。常に自己懐疑を持ち、自分が愚劣に陥る危険性を感じている。▼大衆(的な人々)とエリート(的な人々)を分けるのは階級でも財産でもない。オルテガ・イ・ガセットGasset『大衆の反逆』1930

    人はみな独りぼっちだと不安を感じる。仲間からの承認がほしい。そこで他人の行動を見て、自分の行動を決めるようになる。常にレーダーを張って、他人の期待や好みに敏感に反応。社会の側が個人に世界への反応の仕方を要求している(社会的性格)。▼政治に無関心か、もしくは政治について知識や情報を得ることには熱心であっても、自ら進んで政治に関わろうとしない。傍観者。デイヴィッド・リースマンRiesman『孤独な群衆』1950

    自分が権力をもてる&エリートに操作されやすい「大衆社会」△。自分が権力をもてる&エリートに操作されにくい「多元的社会」◎。自分が権力もてない&エリートに操作されやすい「全体主義社会」×。自分が権力もてない&エリートに操作されにくい「共同体社会」。共同体社会では支配層と一般人が隔絶されている。ウィリアム・コーンハウザーKornhauser『大衆社会の政治』1959

  • 大衆社会論の名著。デモクラシーとテクノロジーの興隆によって誕生した大衆社会は、歴史を顧みず、自己満足した空虚な人々が前面に出てくる社会だ。

    大衆とは階級のことではなく、いわば精神の持ちよう。専門家であっても、総合知へ向かわず、対話しないタコツボ知識人であれば、大衆と同じだ。大衆とはいわば甘やかされた子供、「満足しきったお坊ちゃん」である。

    そんな大衆が支配する社会はかつてなく野蛮なものだ。発刊から1世紀たってもなお、その指摘は重要だ。特に現代、「1億総発信」の時代だからこそ、大衆への警戒は必要だ。

  •  原著1930年。
     このあちこちでやたらと言及される本について、かつて読んだと思っていたが、所有はしていなかったのでこの岩波文庫の「新訳」を購入してみた。が、読んでみると、どうやら読んだことが無かったようだ。何故か読んだと思い込んでいただけらしい。
     解説によると著者のオルテガは観念論的な哲学者のようで、社会学者でも歴史学者でもない。本書は本格的哲学のおもかげはなく、多分にエッセイ的な文明批評である。もともとスペインの新聞に連載された文章なので、こういう書き方になったのだろう。
     ヨーロッパに台頭し街に溢れかえるようになった「大衆」について、自分だけは正しく、確実であると信じ込んでいて、遠い未来のことについては考えず、モラルも理想も欠如している、とする指摘は、なるほど、現在の日本のヤフーニュースのコメント欄や2ちゃんねるのようなところに巣くっている連中に当てはまるように思えて興味を惹かれた。
     しかし、本書は社会学的な確かさを持っていないので、実際にどういう言動が見られたとかいうデータは全然なく、著者のおおざっぱな感想を延々と開陳しているだけである。ヨーロッパの歴史に関する意識も、なんだか思い込みで書いているような気がした。
     読み進めていくと、だんだんこの著者が頑迷なオッサンで、巷の若者批判の持論をぐだぐだとまくしたてているように思えてきて、次第にウンザリしてしまった。
     哲学者なら、もっと厳密な概念定義を行い、自らの思考をも深く考究していくべきではないのか。
     そんな印象が強くなり、面白い読書体験とは感じられずに終わってしまった。

  • 熱狂を疑え。炎上をして、すぐに忘れるということが起こりがち。
    カーニバル的熱狂は超民主主義となり、保守ではない。

  • 単純に今読むものではない…。大衆論についてはもはや常識的なことばかりだし、内容も論文というよりはエッセイに近く、散文的。

  • 【電子ブックへのリンク先】
    https://kinoden.kinokuniya.co.jp/hokudai/bookdetail/p/KP00048242

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  • 数の理論に近いかもしれません

  • 随分と癖のある論を張る書物である。「大衆」という用語が使用されているところから主知主義に基づいた寡頭支配制(or 選良支配制)讃美者によるポピュリズム否定論かと思いきや、「大衆」の定義を一般的なイメージであるそれとやや異ならせて進めていく「大衆」支配体制への批判という視点はかなり面白かった。序盤の印象は政体を支持する有権者批判かと思いきや、急にヨーロッパという限定されたエリアでの国民国家論が展開され、終盤ではナショナリズム(含むファシズム)と共産主義(含むボルシェビキズム)批判が展開され、そして急転直下の全体主義擁護とも受け取れる論で終了させている。果たしてこの三つはどう関連しているのか理解に苦しんだ。著述された時代背景を考え合わせると、微視的には、大衆化した国民がナショナリズムとボルシェビキズムを基とする政体を発現させ、このことに政治家は発現当初から虫に近い態度を決め込んでいたことがヨーロッパの危機を招いてしまって、結局は全体主義によるヨーロッパ蹂躙を自由主義がなんとかかんとか駆逐してヨーロッパ社会は進展するだろう、と読み取った。としても、そのためにかなりの分量を割いて大衆の反逆を言う論を展開させている理由が疑問として残る。自分なりの理解としては、大衆化して批判の対象としているのは、一義的には支配者層であり、民衆はその次だからなのだろう。具体的には、ヒトラーとスターリン。そして、その対応に失敗したチェンバレンをはじめとする英国首相。つまり、当時の危機はそういった支配者層が大衆化した結果なのだと。それに対して現代の視点からは、どうしてもそういった政体の発現を許した有権者批判が極めて弱いことに物足りなさを感じる。タイトルがそう期待させただけに。加えて、偏差を考慮しない平均の概念を多数の集合体である大衆にあてて定義づけるのははたして適切なのだろうか?そんなこんなでどうも消化不良気味。

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