読書のすすめ (岩波文庫 別冊 11)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003500156

感想・レビュー・書評

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  • 岩波文庫フェアの小冊子『読書のすすめ』第一集(1991年)~第四集(1996年)に掲載された37篇のエッセイ。豪華なメンバーによる読書論、読書遍歴が語られる。
    岩波のプロパガンダであるにしても、喜んでその手に乗ってみた。
    乗ってみて、本当に良かった。
    熟練の書き手さんたちによる心のこもった言葉が、どんどん胸に迫ってくる。
    97年刊行という古さも味わい深い。

    若い読者を想定して出来るだけやさしく、わかりやすくと編集から依頼されたらしく、「本を読みなさい」という声と読書の効用について語る声が多い。
    自らの若い日々が本によって支えられた体験から出たものだろう。
    戦争体験もいくつも語られる。
    復員後は一面の焼け野原の中を難民のように暮らしながらそれでも活字に飢えていた。
    岩波書店のまわりを数百人の客が取り囲んでいた話には、熱いものがこみ上げる。
    若い世代に向けた示唆に満ちた言葉の数々は、もう若くない私でも心を揺さぶられるものがいくつもあった。

    何か本をと言われたら「モンテ・クリスト伯」を推すという安野光雅さん。
    「古今和歌集」から古典にはまったという大江健三郎さん。
    脳学者の多田富雄さんはプルーストの「失われた時を求めて」を読み、その世界に沈潜して病気のようになったと語る。
    新藤兼人さんは人生の様々な場面で永井荷風を読み込んでいる。
    自分の頭を、三年経ったら無用のゴミの山に化すような本の読み方は愚の骨頂と説く中村真一郎さん。これはもう叱られているようだ。
    乱読・雑読の末にケストナーに出会えた喜びを語るなだ・いなださん。
    「唐詩選」と「ルバイヤート」を勧める京極純一さん。

    「読書から得られる楽しみも大きいが、読書によって得られた知識が、自分の知識体系の中のいずれかの場所に位置を得たことを知る喜びは非常に大きいものがある」

    「古典には、目に見えない無数の襞が隠されていて、読み返すたびに、それまで見えなかった襞がふいに見えてくることがある。しかも、一トンの塩と同じで、その襞は相手を理解したいと思い続ける人間にだけ、ほんの少しずつ開かれる」

    「思想は人がそれを生きて初めて生命を得るというのは本当だ。
    ・・書物はそれ自体は死物かもしれないが、その思想を今に生かす者があることで生命を得る。これが本当の再生というものである」
    ・・中野孝次さんの言葉が、一番心に残る。

    読書というものにどう向き合うか、今一度姿勢を正したワタクシ。
    読書論は沢山読んだからと一瞬でも敬遠しそうになったことを、ちょっぴり反省もした。
    本の前ではまず謙虚であらねば、受け取れるものも受け取れないのだ。
    32人の先人たちの言葉とお勧めする書の中に、求めるものが見つかりますように。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      んー猫の一番は「トム」かなぁ〜決め難い、、、
      nejidonさん
      んー猫の一番は「トム」かなぁ〜決め難い、、、
      2020/09/28
    • nejidonさん
      猫丸さん。
      「トム」は殆どのひとが読んでますよね。
      それに比べると「小さい」方は(笑)いま一つの知名度。
      もっと知られてほしいという願...
      猫丸さん。
      「トム」は殆どのひとが読んでますよね。
      それに比べると「小さい」方は(笑)いま一つの知名度。
      もっと知られてほしいという願いもあるわけですよ。
      2020/09/28
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      ナルホド!
      nejidonさん
      ナルホド!
      2020/09/29
  • 2021/3/30

    ここ最近、訳あって読書から距離をとっていた僕にとって革命的な一冊になりそう。初心こそ突き進むべき道だったんだ。

  • 一昔前の「知識人」なるものがどうやって生み出されたかがわかる。

  • 読書に対するエピソード集。エッセイ的ですね。当然、「本はたくさん読め」的な話は多かったですw
    あまり惹かれないテーマだったものは、流して読みました。

    「分かる本」を読むのは、ある意味無駄な読書、か…

  • この本には星の話が時折でてきます。
    天体の話ではありません。
    その星がなんであるかわかった時、読書通の第一歩を踏み出したと言えるでしょう。

  • 岩波文庫読者の記録。

  • 戦争を体験した人が多い。古典が読みたくなる本。

  • [北村薫さん関連の記事あり]
    「宝石探し」北村薫

  • 読書の面白さや著者にとっての重要性を彼らの読書体験に基づいて語るエッセイ集。
    様々な著名人にとっての読書への深い情熱が読み取れて非常に面白く、思わず読書をしたくなってしまう。

  • “「こんなふうにも読めるし、あんなふうにも読めるから、ほんとうはどういう意味なのかわからない。だから本はむずかしいのよね」”

    少し斜めに。
    三十七人の読書に対する思いとか何とか。

    “自発的、自主的な読書が進行するためには、本人の側に準備がなければならない。最初の準備は体の癖である。本を読むときには、気を散らさず、注意を集中し続けていることが必要である。そのためには、三十分なり、一時間なり、体をジッと動かさないでおかなければならない。本を読むためには、ジッとしているという癖を体につける必要がある。小学校に通い字を読むようになれば、面白い本に出あい、興味がわくと、ある時間ジッとしていられるようになる。
    しかし、中学生になり、高校生になっても、体をジッとさせ、ある時間続けて本を読む癖がついていないと、面白くもない本を読まされることは、実につらい苦行である。そのとき、途中でやめられないほど面白い本を一冊終わりまで読む。その経験をすると、大きくなってしまった体に癖がつく始まりになる。どの本がそれほど面白いか。ひとつのおすすめは夏目漱石の『坊っちゃん』である。私のまわりには、中学生のとき『坊っちゃん』を読んだのが「読書」の始まりになった人が多い。”

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