黄金の驢馬 (岩波文庫)

制作 : 呉 茂一  国原 吉之助 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 59
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003570012

作品紹介・あらすじ

唯一完全な形で伝わるローマ時代のラテン語小説。梟に化けるつもりが驢馬になってしまい、おかげで浮世の辛酸をしこたま嘗める主人公。作者の皮肉な視点や批評意識も感じられ、社会の裏面が容赦なく描き出されており、2世紀の作品ながら読んでいて飽きさせない。挿話「クピードーとプシューケーの物語」はとりわけ名高い。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公である若者ルキウスは旅の途中で道連れになった二人組の男の片方から奇妙な話を聞かされる。その男アリストメーネスの友人ソークラテースの妻パンティアはなんと魔女で、その姉妹メロエーと共に次々と気にいった男たちに飽きたら動物に変えてしまうというのだ。

    しかしルキウスはこの伏線からなんの教訓も得ない。町に到着、知り合いのミロオの家に泊めてもらい、その家の小間使いフォーティスと良い仲になるが、彼女からこの家の奥様パンフィレエは魔女で、気にいった男を手に入れるためにあれこれ魔法を使うという話を聞かされる。

    ある晩、好奇心に駆られたルキウスはこっそりパンフィレエが魔法で梟に変身する現場を覗き見、真似をして自分も変身しようとするが薬を間違えてなんと驢馬になってしまう。実は薔薇を食べればもとに戻るのだけれどなかなかチャンスがない。そうこうしているうちに盗人一味に拉致られて驢馬としてこき使われ酷い目に。

    この盗賊一味がさらってきた娘カリテーに、一味の世話係の老婆が語って聞かせる挿話が有名な「クピードーとプシューケーの物語」。独立した物語としてこれだけで十分面白いし、実際ページ数も70~80頁くらいあって、読んでるあいだ驢馬のルキウスのことはしばし忘れてしまった(苦笑)その他、ルキウスが転々とする人生ならぬ驢馬生の中で見聞したちょっとした挿話が面白く、確かデカメロンにも流用されてたと思うのだけどエロティックなエピソードも多い。カリテーについては後日譚がありこちらは悲劇的。

    その後紆余曲折あってピレーブスという男(名前は男色者の意)に買われたルキウスは、シュリア・デア(シリアの女神)を奉じる去勢者たちの一団に、女神像を背負わされて旅をする。この一行は鞭うち行者みたいなことをして狂乱状態に陥るパフォーマンスなどをして似非占いで荒稼ぎしつつ巡業していて宗教団体というよりは見世物団みたいだけど、当時こういう集団がいたのだという事実が興味深い。ちなみに、当時まだキリスト教はよく知られておらず、「一神教なんてw」みたいな、まるで胡散臭い新興宗教のように扱われている。

    さてこのように驢馬のルキウスは運命に翻弄され次々と売り飛ばされてはこきつかわれ必要以上に酷い目に合いながらもしぶとく生き延び、最後はイシス女神の恩寵により人間に戻してもらい、イシス女神に帰依する。正直、この終わり方というか最終章はルキウスの信仰の話になってしまってつまらなかった。

    当時のローマはさまざまな宗教が平和共存していたようで、ギリシャ神話、ローマ神話、エジプトの神々の名前までいっしょくたになって物語の中で語られていたのでとてもいいなと思っていたのだけど、最後はキリスト教の話ではないにもかかわらず、キリスト教圏の話に多い神様のおかげ、信じる者は救われるみたいな妙に説教くさい展開になってガッカリ。個人的にはルキウスくんはそんな改心などしないで、驢馬として痛めつけられた辛い経験は踏まえつつ、快楽主義者として人生を謳歌してほしかったな。

    あと翻訳についてちょっと気になったのが、前半部分「それで」というのを「そいで」「そいだもんで」等、田舎言葉?みたいな言い回しですべて書かれていること。これが登場人物の職業や身分で使い分けてあるならよいのだけど、そこそこ身分の高いきちんと標準語を喋っている人のセリフの中でも「そいで」「そいだもんで」となっているのでちょっとモヤモヤした。前半翻訳はギリシャもの定番の呉茂一だけど、翻訳者のクセだろうなあ。後半は別の翻訳者なので普通だった。

    まあなにはともあれローマ時代(2世紀頃)のラテン語小説が現代まで伝わっていて楽しく読めるというのは素晴らしい。もちろん社会制度などは違うけれど、それでも人間の感情の動き自体は現代日本人の我々となんら変わらないし、共感したり笑ったり悲しんだりできるわけで。あと挿話にやたらと「女性の不倫」の話が多かった気がするのだけど、そういうのも含めて現代人も古代ローマ人も大差ないんだな(苦笑)

  • 田舎のボンボンが驢馬になってしまい
    世の中の辛酸をしこたま嘗め尽くし、
    ナンセンス極まりない出来ごとが
    惚けた語り口調で平然と語られる変身譚

  • 驢馬が死なずに最後まで生き残ったのが不思議なくらいです。

  • 岩波文庫 080/I
    資料ID 2013200114

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