ジェイン・エア(上) (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003570029

作品紹介・あらすじ

伯母に疎まれ、寄宿学校に入れられた孤児ジェイン。十八歳の秋、自由と自立をのぞみ旅立つ-家庭教師に雇われた邸で待つ新しい運命。信念と感情に従って考え行動する主人公の真率な語りが魅力的な、ブロンテ姉妹のひとりシャーロット(一八一六‐五五)の代表作。

感想・レビュー・書評

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  •  ジェインは孤児。母方の叔父に引き取られたが、叔父は亡くなり、伯母と従姉妹たちにまるで「キャンディ・キャンディ」のようにいじめられる辛い日々。唯一の味方は女中のベッシーと体調が悪い時に来てくれた薬剤師さん。
     薬剤師さんの薦めもあって、叔母はジェインを「厄介払い」のために学校に入れる。
     その学校というのは、孤児院で、「贅沢はさせるべきでない」という尊大な経営者のために、食事は食べられないほど不味いものが僅かだけ出されたり、天然パーマの子が「忌まわしい巻き毛」と言われたり、ジェインの叔母から「ジェインはどうしようもない嘘つき」と吹き込まれたことを皆の前で公表されたりという酷いところだった。
     しかし、そんな中で、テンプル先生という美しく優しく聡明な校長先生やヘレンという崇高な精神を持った友人との出会いがあり、ジェインは心を強く持って、勉強に励み、何処へ出ても恥ずかしくない教養を身につけた。
     孤児院(「ローウッド」)も改善されてゆき、居心地のよい場所になり、やがてジェインは教師になったが、テンプル先生が結婚退職したことを機に、「もっと広い世界を見てみたい」という衝動に駆られた。そして、こっそり家庭教師の広告を出すと、ソーンフィールドという場所にある、由緒正しいお屋敷に雇われた。
     10歳まで、虐げられながら過ごした叔母のお屋敷とその後8年間過ごした孤児院以外の初めての場所にジェインは自分の力で踏み出したのだ。

    (抜粋)
    自分の運命に無言の反抗をする人も無数にいる。政治的な反乱以外に、人々の間に燃え立っては消される反乱がいかにたくさんあることだろう。一般的に女性は穏やかだと思われているが、女にも男と同じ感情がある。能力を発揮し、努力の成果を生かす場を、男性同様に必要としている。

     ジェインは男女の固定観念が強い時代に不遇な子供時代を送ったにも関わらず、自分の足でしっかり歩いて行くことを選ぶことが出来た知的な女性だ。
     ソーンフィールドのお屋敷に普段、ご主人は不在だが、ある時帰ってきたご主人は、見かけがいかつくて、性格も偏屈な感じだった。だけど、ジェインに対し、ユーモアや皮肉を交えながらもまっすぐな気持ちをぶつけてくれるご主人、ロチェスター様にジェインは惹かれていく。そして、ロチェスター様のほうも社交界のチャラい女性達よりも美しくはないが知的で誠実なジェインに惹かれていく。

     子供の頃にみたアニメのシリーズ「日曜名作劇場」のようにワクワクする。だけど、男の子の冒険物語とは違い、ジェインという女の子の物語は小さな「自分の世界」を自分の力で少しずつ少しずつ勇気を出して広げていく、精神的な冒険物語だ。

     もう一つの魅力は“イギリスらしさ“だ。どんよりして凍てつく冬の厳しさの描写。それに対してさまざまな花がさく美しい春の自然の描写。
     また、イギリスらしく、お屋敷には「幽霊」!ではないのだが、幽霊と同じくらい不気味な謎の人間が住んでいるようなのだが、実態が分からない。
     ミステリー要素も含め、下巻が楽しみ。

  • 胸が熱くなる小説。続きを知りたい、でも読み終わるのが惜しい、と心の中でせめぎ合った。
    話の展開は、海のように、穏やかに凪いでいるときと大荒れのときとがある。荒れた海では、予想以上の大波乱が起き、小舟に乗った読み手は息をつくことすらままならない。

    孤児のジェインは、親戚の家でいじめられ、救貧院に預けられる。生徒として六年間、教師として二年間、質素でまじめな生活をした後、新天地を求める。そこで、中年紳士ロチェスター様のお邸に家庭教師として雇われることになった。

    お邸には、姿はあまり見かけないけど奇妙な笑い声をあげる召使いがいた。時々、不可解な事件が起きた。一度は主人のロチェスターの部屋が燃やされ、尋ねてきた友人が何かに襲われて片腕が血でぐっしょり濡れたこともあった。
    このお邸には、ジェインに知らされていない秘密があるようだった。

    下巻へ続く

  • 2021.12.03.上を読了。
    じつはル・グウィンの創作教室『文体の舵をとれ』に紹介されていたのに惹かれてたどり着いた。いまのところ、ジェインが「どの時点」から書いているのか、まだわからないからどきどきしている。
    かの女の幼少期の記憶は精密で、ここからなにが語られるのか興味を抱くとともにかなしい。また某人物については、時折このイカサマがと怒りたいような気もするくらい、内心がみえない。ジェインの揺れる様子が描写されるのに、覆い隠されているのだろうか。だとしたらレイヤーを重ねて組み直すように、完成形から物語を作っていったことになるのだろうか。ジェインの行く末ももちろんだけれど、描き方の妙を知るのも楽しみ。

  • 表紙絵は本作のために書かれたものではなく、ヴィクトリア朝時代の画家の作品らしいが、本編のエピソードによく合っていると思う。物語の本筋は現代ではよく見るものだが、ここに源流があると考えると、当時はだいぶセンセーショナルだったのだろう。人物描写が細かく、冷静な語り口。飽きずに先へ先へと読み進められる。

  • ジェイン・エアに試練は続く。
    親の死、引き取り手のいじめ、すれ違う愛。
    なかでも最後は、切なすぎる。

  • JANE EYREというスペルなのであった。

    性悪な伯母家族のもとでいびられた少女時代。そしてジェインはほどなく伯母から「孤児」扱いで家を出されて寄宿学校へ。その後ジェインは18歳のとき、家庭教師の口をみつけてあるお邸へ。「ソーンフィールド」の名で呼ばれる邸宅で、貴族ロチェスター・フェアファクス氏のおうちである。
    上巻はかような展開。「日の名残り」を思わせるお邸が舞台である。

    物語はジェイン主観の独白・回想の形式で進む。
    ジェインは周囲の環境や、周囲の人物の人格を観察し評価してゆく。そして、ジェイン自身の心境や内面を語ってゆく。その語り口は、客観性があり、ジェイン個人の思考のものさしが感じられて現代的。自分の考えをしっかり築き始めている。因習や慣習に従属した思考でなく、風通しのいい感じをうけた。これは18世紀半ばの読者には痛快で、あるいは衝撃的だったのではあるまいか。

    <以下若干ネタばれ的な>
    **********
    上巻はロチェスター氏の邸に舞台を移してから少々平板な印象が続く。ジェインの成長物語が淡々と進行するのかな…。
    と思いきや、ミステリーな要素が続々と盛られる。後半、不可思議な事件が相次ぐのだ。
    狂女めいた使用人の存在の謎。深夜のボヤ騒動(放火)。そして、或る夜魔女めいたジプシーの老婆が占いをしに邸に押し掛ける。
    しかも「ジプシー魔女」のプロットでは幻想文学のような趣も感じさせ、多彩な味わいを見せる。
    ロチェスター氏が秘める過去とは? 謎が積み残されたままで、下巻が楽しみである。

  • ヘレン・バーンズは、ジェインとはまた異なる強い意志を持っているが、どちらも決して消えない火であるのは、それを燃やし続けているのが自らの手によるからだ。
    ロチェスターの意外な告白で上巻が終わり、下巻を手に取らずにはいられない。

  • 4.16/320
    内容(「BOOK」データベースより)
    『伯母に疎まれ、寄宿学校に入れられた孤児ジェイン。十八歳の秋、自由と自立をのぞみ旅立つ―家庭教師に雇われた邸で待つ新しい運命。信念と感情に従って考え行動する主人公の真率な語りが魅力的な、ブロンテ姉妹のひとりシャーロット(一八一六‐五五)の代表作。』

    冒頭
    『その日は、散歩などできそうもなかった。わたしたちは午前中に一時間ほど、すっかり葉の落ちた林の中を歩き回ったが、午餐(リード夫人は来客のない日には正餐を昼にとる習慣だった)のあとに冷たい冬の風が吹き出して暗い雲が広がり、雨がしとしとと降りはじめると、戸外の運動はもう無理だった。』


    原書名:『Jane Eyre』
    著者:シャーロット・ブロンテ (Charlotte Brontë)
    訳者:河島 弘美
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎448ページ(上巻)

    メモ:
    ・英語で書かれた小説ベスト100(The Guardian)「the 100 best novels written in english」
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 感想は下巻で。

  • 翻訳がとてもとてもよいです。

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著者プロフィール

Charlotte Brontë(1816- 1855).

「2014年 『シャーロット・ブロンテ全詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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