ユートピアだより (岩波文庫)

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制作 : 川端 康雄 
  • 岩波書店 (2013年8月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003590317

作品紹介

目覚めるとそこは二十二世紀のロンドン-緑かがやき、水は澄み、「仕事が喜びで、喜びが仕事になっているくらし」。社会主義者・美術工芸家モリス(一八三四‐九六)の実践と批判、理想と希望が紡ぐ物語。ユートピアの風を伝える清新な訳文に充実した訳注を付す。

ユートピアだより (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 装丁が新しくなっただけかと思ったら、新訳だったんですね。とても読みやすかったです。個人的にモリスというと、作家というよりテキスタイルデザインのイメージのほうが強いんですが、これは装丁もご本人のデザインが元になっているのでとても美しい。岩波文庫の白帯、というとちょっと堅苦しい印象がありますけども、内容はまったく普通に「小説」として読めます。もちろん邦訳のタイトルどおり、ジャンルとしては「ユートピア小説」。

    書かれたのは1890年から。モリスが所属していた社会主義団体の機関紙に連載されていたそうで(ゆえに白帯なんですね)コミュニストが夢見た理想の未来の世界が描かれています。しかし実際に社会主義を貫いた国が結果としてユートピア化を実現したという例を現代の我々は知らないわけで、むしろそれを皮肉ったディストピア小説のほうが現実に近いことを思えばややシニカルな気持ちになったりもするんですが、だからといってあまり政治的な側面から読むとつまらなくなってしまうので、あえて、こんな世界が実現したらいいなあ、というノーテンキな姿勢で読んだほうが純粋に楽しめました。

    小説的な体裁としては、モリスの友人が突然200年後(くらい?)の未来世界へまぎれこんでしまい、観光したあと戻ってきてその内容を語った・・・という形になっており(とか言いつつ、実際には語りではモリス本人に他ならない)、革命を経て、自然や人間本来の美しさのままに生きる人々の天国のような生活(労働はあくまで楽しみであり、報酬や売買という観念もなく、警察も法律も不要なほど人間は清廉で親切)を人々が手に入れるにいたるまでを、さまざまな人物との対話から、語り手は知っていきます。

    自然に回帰した未来の英国の風景は素直に美しく、人々の親切で美しい様子にも心が洗われるので、読み終わった後は物語の中の経験者同様、楽しい夢から覚めたような気持ちになりました。

  • やっと読めた!
    社会主義”ユートピア”が達成された世界を描いた本。全ての労働は喜びになり、貨幣や法律はなくなり、人々は豊かになる。
    歴史はその達成が難しいことを証明しているから、否定をするのは簡単だけれど、良いところを学びながら、より良い世界を作っていきたい。

  • 芸術家、ウィリアム・モリスにより「俺の考える理想の社会」が描かれている。街も女性もみな美しく、貧困は撲滅され、貨幣というシステムも労働もない。誰もがやりたいことをやり、作りたいものを作る。子どもたちに知識を詰め込むための学校すらない。まさに理想郷だが、「モリスの押し付ける理想社会」にお腹いっぱいで吐きそうになり、途中で読了断念。

  • 労働の対価がお金じゃなく、快楽。こんな世界に住んだら自分はどう思うだろうか。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784003590317

  • とことん行き詰まって、何度も絶望し尽くした時に読むと、一筋の光が見える本。

    いいなぁ〜

    まだ、読み返している...

  • 9世紀後半の英国の社会主義者、そして詩人、デザイナー、民衆藝術家の著者によるファンタジーかつ思想小説。著者を思わせる主人公が未来へのタイムスリップし、22世紀の英国を描く。20世紀に起こった民衆パワーの炸裂、ロシア・中国共産革命などを予言するような小説。社会主義がいかに煤煙で薄ら汚れ、商業主義で毒されたロンドンを美しく変えたか、また労働そのものが喜びの国になった、人類愛を強要した宗教が不要になったというクダリはソ連・そして中国の現状を知るだけに今さらというシラケを感じる。しかし英国の田園風景の美しさの描写はさすが詩人。そして「人間の精神労働と肉体労働の両方によって生み出される美」という言葉に著者の思想が凝縮されていると思う。オックス・ブリッジが教養人と称する寄生虫階級の繁殖地だとの批判の言葉が鋭い。これは今の世界にも言えるのだろうか?或いは克服したのだろうか?

  • <閲覧スタッフより>
    22世紀のイギリス。美しい自然と労働を喜びと感じられる社会、それこそが社会主義者モリスの求めるユートピアだった。本書は、そんな“どこにもない場所からの知らせ”。

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    所在番号:文庫||933.6||モリ
    資料番号:10221488
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  • モリスをより知りたいと思った

    あの世界、今の私には暮らせない気がする


    というか想像がたやすくできない

  • スコットランド啓蒙と空想社会主義の交錯地点という感じがする。原文を読んでいないからなんともいえないが、勤労と技芸の洗練の賞賛はまさにヒューム的発想であると思えるし、楽しい労働というのはフーリエの専売特許である。
    翻訳が非常にこなれていて、解説も詳しい。ロンドンという街を詳しく知っていたらもっと楽しく読めるのだろう。現代においては、1989年以来のトラウマというか、ユートピアを描いた物語は必ずディストピアとなる帰結を伴うのであるが、この小説はそんなことはない。
    とはいえ、読み方によってはその側面がないとはいえない。たとえば、怠惰であることは病気とみなされるほどなのである。まぁ、スコットランドの哲学では、怠惰と安逸は明確に区別されていて、強制労働という訳ではあるまいが。また、誰もやりたがらない仕事なくして人々の生活が成り立つものだろうか? ここはユートピアなのだから、そのような質問は野暮である。まさにここのところがフーリエ的であるといえよう。モリスの方が子供達の地位が高いにせよ。

    それにしても、この本を読んでからここ東京の街を眺めてみるとどうだろう!もう2014年だというのに、なんと醜いことか。美しいことが正義であるとは必ずしも言えないが、やはりわれわれは貧しいのではないだろうか。この物語が教えてくれるのは、貧しくないということは例えばどのような状態なのか、ということである。

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