花火・来訪者 他十一篇 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2019年6月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784003600351

作品紹介・あらすじ

大逆事件と時代への批判,諦観の想いを述べた「花火」,反時代性の果てにあるエロスをテーマとした「夏すがた」,爛熟した江戸情調への追慕を綴った戦前の小説,随筆を精選した.「来訪者」は,戦中に執筆され,終戦直後,発表の実験小説,鶴屋南北の「四谷怪談」を連想させる,男女の交情を凄愴の趣を込めた描いた問題作.(解説=多田蔵人)

感想・レビュー・書評

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  • 随筆だったり小説だったり。読みやすかったり読みにくかったり、興味の問題かもしれないがサラッとはいけなかった。夏すがた、来訪者は面白かった。綺麗な文章で描かれるので変にスケベな感じがない。

  • 貸出状況はこちらから確認してください↓
    https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00291814

  • 大体面白く読んだ。深い教養に裏打ちされた文章なのに、どことなく、投げ出したような能天気さがあり、その更に向こうに社会に対する諦念を感じる。ような気がする。あと、全作品を通して男性に都合のいい、どこか"淫乱"な女性像が多いのは何とも苦笑させられた。

  • ひたすら文章が美しい。
    ときに淫靡な痴情を描く場面も、その美しい日本語で絵画のような情景を想起してしまう。
    しばらく嵌りそうだ。
    きれいな日本語を読みたい方は、是非。

  •  本作品集に収録されているのは1910(明治43)年から1944(昭和19)年頃にかけてのもので、随筆と小説、そしてこの両者の領分が混ざって境界線にあるかのような作品が入っている。
     どちらかというと随筆は一つの場所に静止して言葉を美しく紡いでいく感が強く、小説はプロットに沿って先へ先へと突き進むストリームのスピード感が強い。永井荷風の編み出す随筆フィールドは、美文を噛みしめることに醍醐味があるようで、なかなか味わい深かった。祭りに浮かれ騒いで踊る世相を隔絶したアウトサイダーの視点で見つめる「花火」(1919《大正8》年)など、光景と1個の主体との距離感がフィールド上を彷徨って面白い。また、東京(市)の様子を折々に描いているので、東京の変遷に興味のある人には、荷風の文章は注目すべき資料となるだろう。
     しかし私はやはり、小説作品の方が好きだ。荷風は様々な女性像を生き生きとヴィヴィッドに描き上げており、ここでは生命の輝きと移ろいゆく事象の連なりがひとつの体験として読者の胸に迫る。
     自然主義運動にも私小説にも加担しなかった荷風は、歴史から身を引き剥がしつつ、その時その時の世相を克明に見つめる確たる主体を確立していた。文章も美しいので、もっと荷風を読み、既読のものも読み返してみたくなった。

  • 目次
    ・花火
    ・曇天
    ・怠倦
    ・銀座界隈
    ・花より雨に
    ・蟲干
    ・初硯
    ・夏すがた
    ・にくまれぐち
    ・あぢさゐ
    ・女中のはなし
    ・来訪者
    ・夢

    永井荷風にとって小説と随筆の間が極めて近いことを改めて感じた。
    決して私小説ではないのに、随筆だと思って読んでいるといつの間にか小説の世界に迷い込んでしまう。
    きらびやかではない、いぶし銀の華やかさ。
    「女中のはなし」「来訪者」など、読んでいてぞくぞくする。

    偏屈で頑固で、身近にいたら絶対困らされるだろう困った爺さんだけど、すごく好き。
    洋行帰りで江戸趣味で、本質を抑えているからこその、同時代の日本への止まらない苦言。
    上っ面だけの洋風にかぶれ、美しい日本の風習を捨て、ただ時代に踊らされているような日本人を嘆く荷風は、今の日本をなんというだろうか。

    新潮社と森鴎外の確執は知らなかった。
    森鴎外の死に際して、新潮社の出した記事「鷗外博士は翻訳こそしたが彼の仕事が文壇にとってどれだけ意義あるものかは疑わしい。」
    これに激怒して、荷風は新潮社からの作品の出版を断ったという。
    ちなみに、現在は森鴎外の本も永井荷風の本も新潮社から出版されています。
    荷風からしたら不本意かもしれないけれど、読者としては、ああよかった。

  • ある程度の金がある男は妻以外の女を囲うことが当たり前だった時代があったのだ!またそのような男の欲望に合わせた女性もいたのだ.表題作は「花火」と「来訪者」だが、後者が面白かった.偽物の書籍を作る木場と白井.それが商売になった時代.それにしても全く意味の分からない語句が頻出.漢和辞典の出番が多かった.でも、現代語訳の形になっているからなんとか読めるのだが、原文はどうかな?

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著者プロフィール

(ながい・かふう)1879-1959
東京市の現・文京区小石川生まれ。官僚のち実業家の父・久一郎の長男で、早くから江戸・東京の落語、歌舞伎、戯作などに親しむ。文学を志し、広津柳浪に師事して作家活動を始めるが、父の意向で実業を学ぶため1903年からアメリカ、フランスに渡る。帰国後その体験をもとに『あめりか物語』『ふらんす物語』を上梓、注目を集める。実業家となることなく、1910年慶應義塾大学の教授に就任、「三田文学」を創刊。1916年に大学を辞してからは、『濹東綺譚』をはじめとする作品のみならず、実生活も江戸戯作者のごときであった。そのさまは1917年以降の日記『断腸亭日乗』に詳しい。

「2024年 『小説集 蔦屋重三郎の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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