お菓子とビール (岩波文庫)

  • 岩波書店
3.96
  • (31)
  • (43)
  • (25)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 620
感想 : 42
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003725054

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ■ある日わたし(アシェンデン)は作家仲間のアルロイ・キアから相談をもちかけられる。”後期ヴィクトリア朝最高”と評される小説家、エドワード・ドリッフィールドの伝記を執筆するので協力してもらえないかというのだ。というのも、そもそもわたしはドリッフィールドと同郷のうえ、15歳の頃から彼とは個人的な付きあいがあったからだ。
    アルロイ・キアの提案に触発されて、わたしは遠い過去の記憶をたどる。そこには懐かしい人々の姿が、そして言葉が。わけてもわたしにとって忘れられないのは、ドリッフィールドの魅力あふれる妻、ロウジーとの切ない思い出であった。
    ■男を虜にせずにいられない女、ロウジー。世間からうしろ指をさされようと陰口をたたかれようと、ロウジーはあっけらかんとただやりたいことをやるだけ。でもわたしは知っている、彼女はいつも誠実だった、そして誰よりも輝いていた。(……モームはこんな女が好きだったんだなぁ。いや~その気持ち、よくわかる。)……【後記:モームってゲイだったんですね……知らなかった……。】
    ■この物語は「ソツのない伝記を書こうとするやり手の作家に乞われて」というのが端緒となり、大ワクの筋はそれに従って展開する。しかし物語のメインは主人公が回想する個人的な思い出で、これは結局伝記では扱われない。そしてこちらの方にこそ、矛盾をかかえた人間の営み、不思議な縁と別れ、つまり本物の人生が描かれるという仕組みになっている。

  • お菓子や麦酒みたいなロウジー。
    翻弄される二人とその中に入り込むロウジーの影響。
    楽しいのに離れられずけど体に影響があり翻弄されるお菓子と麦酒みたい。

  • タイトル的に、エッセイかと思って読んだけど、主人公の青年期の既婚女性との禁断の恋がふんわり描かれていた。表現も、直接的ではなくて文学!って感じで読んでいて気持ち悪くならなかった。タイトルのお菓子とビールが直接的にはほぼ出てこないけど、これは甘酸っぱいみたいなことを意味しているのかなーと個人的に思った。

  • この本の作者モームの『月と6ペンス』を読んで、読みたいと思った本。
    語り手の僕アシェンデンよりも、話の中心になってるはずの文豪ドリッフィールドよりも、その元妻ロウジーのキャラクターの描写に惹かれてしまう。

  • モームが自作の中で一番好きだと言っている作品。文豪無名時代との接点を思い出しながら語っているようで、モーム自身の体験が物語のあちこちに出てくるところが愛おしいのかな? 近所の人の思い出話って誰にでもあるから話にどんどん引き込まれていく。うわさ話の主人公になってしまう人は品行方正でないところが逆に魅力的だったり惹かれてしまう。登場人物が生き生きしているところがなにより素晴らしかった。

  • モームによる人物の描写や造形は冷徹で暖かい.
    いつものように主人公(アシェンデン)はモーム自身であり,彼が友人の作家から,つい最近逝去した文壇の大御所ドリッフィールドの若い頃についての情報提供を依頼されたことをきっかけとして,若き日のドリッフィールド,その年下の妻であるロウジーとの交流を回想する.
    主人公に言わせれば「それほど文才がないにもかかわらず,周囲から大御所に祭り上げられた」ドリッフィールド,天衣無縫なロウジーが魅力的に描かれており,それは訳者の解説によれば「周りの人間を卑小に,風刺して描くことによって」欠点の多い彼らを相対的に浮き上がらせているということだ.
    同じモームの「人間の絆」は大部であったが,本書のストーリー運びには無駄がなく,人物の造形のみで読ませるのではない巧みさもある.

  • 最初に読んだ頃―当時は21才だった―はローズの魅力や、繰り返し何度も現れる「誠実」というキーワードについて深く悩んでいたような記録が残っているのですが、今読み返すと、ローズにとって女性であるってことはどのようなことだったのかな?とか、ドリッフィールドの2度の結婚生活はそれぞれ、彼にとってどのような意味を持っていたのだろうか?とかそういう事を考えた。こうやって再読したりなんかすると特にそうだけど、本って再読するたびに違った感想になるから面白いし、こうやって記録に残すことで、当時の自分の考え方を見返せるのも楽しいですね。

  • エドワードの夫人が出てきておもしろくなってきた。
    何故6章はこんなに短いのだろう。この6章、許可をとるくだりが面白い。話の運び方が上手い。子供視線で、客観的な事実だけを書き、そこから大人の関係性を読者にそれとなく匂わせる手法は鮮やかだ。おこずかいをもらった怒りが、消えていき、自分自身を納得させる描写、礼状を送らない事で自分の傷ついたプライドを和らげる。この描写が好きだ。「君はナイフみたいに切れる人だから用心しないと自分のことをきってしまうよ」「エリートは人気というものを軽蔑する。凡庸の証というのだ」筆者の美への感想が面白い。美とは退屈なものだ。「ライバルとなる恐れの無い人を褒めるのはライバルとして恐れる人を牽制することになる」作者は皮肉屋という評判は作家にとってマイナスだ」と言ってるがどうゆうことか。構成が上手い。

    で、結局最後まで読み切ったが、俄然後半になるほど面白くなっていく。なるほど名作として後世に残り、未だにファンがいるのも頷ける。この書き方、小説家を目指す作家の卵には絶対おすすめの作家さんだと、改めて思った

  • 語り手がモームを思わせる作家で、作家という立場についての語り方が面白い。この小説の魅力はロウジーに尽きるだろう。道徳的にはいろいろと破綻しているが、自分の良心に素直でいきいきと人生の舵をきっていく女。お菓子と麦酒のタイトルは両方の味わいのある人が面白いということかな。

  • 皮肉っぽいのに、美しい作品。

全42件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

モーム W. Somerset Maugham
20世紀を代表するイギリス人作家のひとり(1874-1965)。
フランスのパリに生まれる。幼くして孤児となり、イギリスの叔父のもとに育つ。
16歳でドイツのハイデルベルク大学に遊学、その後、ロンドンの聖トマス付属医学校で学ぶ。第1次世界大戦では、軍医、諜報部員として従軍。
『人間の絆』(上下)『月と六ペンス』『雨』『赤毛』ほか多数の優れた作品をのこした。

「2013年 『征服されざる者 THE UNCONQUERED / サナトリウム SANATORIUM 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

モームの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
冲方 丁
サマセット・モー...
村上 春樹
ヘミングウェイ
池井戸 潤
ミヒャエル・エン...
バルガス=リョサ
村上 春樹
三浦 しをん
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×