大いなる遺産(下) (岩波文庫)

著者 :
制作 : 石塚 裕子 
  • 岩波書店
4.13
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本棚登録 : 41
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003725085

作品紹介・あらすじ

贈られた遺産をミス・ハヴィシャムからと信じたピップは、ハヴィシャムの娘エステラと結婚できるものと期待に胸をふくらます。しかし、成り上がりの紳士になったピップの前に、思ってもみなかった人物が恩人として現われる。はたして、その人物とは?

感想・レビュー・書評

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  • いかにも作り話めいた棚ぼた的幸運は物語だと割り切って読もうと思ってもなんとなく腑に落ちないタイプなので半信半疑で読み進めたが、どうやらそれでよかったみたい。むしろ何故ピップがハヴィシャムさんが自分に遺産を残してくれるとそんなに信じきっていたのかが解せない。
    ハヴィシャムさんが自分のしたことを悔いる様子や、マグウィッチが満足そうに天に召される様子は、人間は一人で生きているようだけどやはり周りの人々に影響し影響されながら生きて死んでいくんだなと感じさせられた。こういう話読んでると、自分が叶えられなかった夢を誰かに託すって自然なことに思えるな。エステラさんは生き方を選べなかったと言っているけど、従うことを選んだ時点で自分で決めてるともいえるし…。ピップも幸運にあぐらをかいていたのだから自業自得のような。でも身近な人のありがたみって普段は忘れがちということも事実で、身にしみる部分も。
    ハーバートはどこまでもいいやつだし、ウェミックはチャーミングだし、ジョーは言わずもがな、脇役の方が魅力的だな。ウェミックのお城にお茶飲みに行ってみたい。

  • 2017.10.01読了 上下巻読み終わっての感想

     孤児であるピップは、姉夫婦に引き取られ、育った。姉の夫であるジョーは優しく鍛冶屋で実直な働き者だったが、姉ちゃんは、おっかない存在で、倹約家だった。しかもピップが何もしないと親族のおじさんにこぼし、おじさんは真に受ける。夫ジョーも姉ちゃんには頭が上がらないといったところだ。ジョーはピップを親友と呼び、ジョーを兄とも友達とも思い慕う。
     ある時、ピップは湿原で出会った男に声をかけられる。男は、脱走囚だった。恐々求めに応じるピップ、名前を聞かれ気が気でなかった。
     おじさんの紹介でミス・ハヴィシャム邸へ行き、同い年のエステラと知り合うが、すげなく扱われる。それでもピップは、めげずにハヴィシャム邸へ通い続ける。
     ピップがジョーに弟子入りしたころ姉ちゃんは家の中で強盗に殴られ、要介護状態になる。雄叫びが得意な姉ちゃんも
    喋られず、だんだん弱っていく。 
     ピップが年季奉公の何年目か、後見人たる弁護士が現れる。ピップは焦るが、匿名の申し出によりピップが相続人としてのジェントルマン修行のためロンドンに行くよう指示、年季奉公も中止となる。
     ピップは意気揚々とロンドンへ出かけ、そこで出会った男性はハヴィシャム邸で見た男性だ。彼が、マシュー・ポケット先生の息子、ハーバートでピップの無二の友人となる。
     ピップがロンドン生活を満喫していたころ、久しく離れ離れになってたジョーが訪ねてくる。贅沢を知るようになったピップは、ジョーが鍛冶屋の格好で訪ねてくるのを嫌がった。ジョーも場違いなところへ来たと察してかそそくさと帰った。この黙って帰るあたりジョー人が好いというか、人間出来てる、と思った。
     ミスハヴィシャムのところへは、何度か行っていて、ピップもてっきり、ハヴィシャムがピップを相続人にすべくエステラと結婚させてもらえると早合点していたが、そうはならなかった。ピップもジョーにつれなくしたこと後悔したかな。
     いきなり、その恩人が名乗り出て、ピップは後見人弁護士やハーバートに相談する。最初は疎ましく思っていたピップだが、情がうつる。で、そのあといろいろあって(エステラさんの素性も分かったし)、ピップは文無しになり、病気になる。そこへ、知らせを聞いたジョーがやってきて、かいがいしく看病し、溜まった借金まで、清算してくれて、元気になるや、置手紙して帰ってく。ジョーっていい味出してるなと思った。
     じつは、ピップはハーバートに自分がある人に貰ったと同じようにお金を送っていたので。
     大いなる遺産って、遺産相続の話じゃなくって、人を介して財産を拵える事なのね、って、財産て言ってもお金じゃない。信じる事なんだ。友達がいることが財産なんだ。もし、筋書き通り遺産相続したとしても、ジョーと疎遠になっていたらピップは幸せにはなれなかっただろう。なんか読後スッキリした感じで、こういう友達が自分も欲しいなと思った。




     

  • ヒロイン、エステラさん。ハヴィシャムさんの英才教育により男を誑かす最強悪女となった彼女ですが。そういう彼女ですから、結局自分が何を望んでいるのか彼女自身も分かってないんじゃないか。で、勝手に想像するのが彼女は自傷願望が芽生えたのではないか、と。あえて自分を汚す方を選んでしまう生き方を望んだんじゃないかなー。

  • この訳者は著者に対して少し批判的

  • 事象だけで言えば結局彼の手に残るものは何もなく、尚且つそれは読者の予想できうる範囲だったろうけども、主人公の生々しい心理の変遷、割り切れない感情が素晴らしくて一息に読んでしまった。
    神の見えざる手という表現を聞いたことがあって、それは作者という神がストーリーに意味合いを与えるべく素晴らしい偶然や奇跡を主人公に落としていくことを表すのだけれど、仮にその手があったとしても主人公はついぞ神をちらと仰ぎ見ることもなくただ自分の人生を生きていた。
    歩んでも歩んでも先行きの知れない人生を人生として生きている、その歩みは作者や読者の期待とに乱されることなく、彼だけのものだった。

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