心変わり (岩波文庫)

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本棚登録 : 178
感想 : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (482ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003750612

作品紹介・あらすじ

早朝、汽車に乗り込んだ「きみ」はローマに住む愛人とパリで同棲する決意をしていた。「きみ」の内面はローマを背景とした愛の歓びに彩られていたが、旅の疲労とともに…。一九五〇年代の文壇に二人称の語りで颯爽と登場したフランス小説。ルノードー賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ようやく読了。いまのところヌーウ゛ォー・ロマンのひとつとして位置づけられており、名高い小説だ。

    主観をそのままに表すリアリスムのために、主人公は常に「きみ」(vous)で語られる。

    そのことも確かに風変わりだが、僕はこの小説が、全て列車のなかで主人公の想起するところによって語られていることに着目したい。列車の、三等の客室という狭い場所、移動する場所、揺れ動く場所だからこそ成立する仕組みによって成り立っているのが、この小説なのだから。

    心変わりにおける時系列の乱れ(という言葉でとりあえず説明させてもらうならば)が起因するのは、その語り手の認識、意識により物語が語られるということである。語り手としての主人公は列車の客室のなかで、過去の記憶、目の前の客のこと、ローマあるいはパリでの出来事の予測、そして全てを包括する夢・・・というように、思考を巡らせる。これは「きみ」という語り口もさることながら、列車という地理的な移動形式、またコンパートメントという、常に定まった人間が向かい側、あるいは隣にいる、そのために他のことを考えながらでもついつい思考が目の前の、お馴染みの観察相手に向かってしまうという状況、そのことに大きく原因がある。

    また、アエネーイスに端を発する夢のなかでは、主人公は幾度も、覚めたり夢に入ったりを繰り返す。これは意識の覚醒と沈滞ということだが、それはそのままに、列車の揺れのせいだと言える。揺れ動く電車のなかで寝入ったときの、あの半分まで現実におり、半分まで夢に足を踏み入れたままの状態だ。

    そして個人的に新しく勉強になったのは、アウグスティヌスがまとめたところの、ローマ汎神が行為それぞれに付されるということである。作中では男女が性行為に至り、身篭るまでがなんと、神の名において説明されるのである。これは驚きであった。

  • ちょっと思い込みの激しい四十路オヤジになって恋人に逢うつもりで長い列車の旅にゆられる。主人公が好きではないのに、列車と雨とパリとローマの記憶が透明感があって美しい。意外と読みやすくて、疲れない。

  • 日本語を原文の息の長さに合わせて訳しているが、句点の打ち方が日本語の構造と論理からいって不適切。

  • ふーん。フランス小説・・。

  • 倉橋由美子「暗い旅」の本歌

  • 一人称より内面的になるのに気付いた

  • Nouveau roman と呼ばれる小説が時代と巧みな連関をもって現れた頃を私は知らない。
    進む列車に乗り込んだ主人公の心の変異が時間軸を巧妙に操りながら構成されている小説。

  • 二人称の特性に彩られてローマ=パリの往復を重層的に描き上げた一章の構造は素晴らしいの一言。三章からの混乱の伏線もここにある。

  • 電車に乗るとただ前に進むのではなく、進んでは戻るようなゆるやかな振動を感じることができる。その揺れのように想いは過去に未来に現在にゆったりと揺れる。目的地は定住の地であるのかはたまた単なる享楽の地であるのか。目新しい楽しみを見つけた時から馴染み深く退屈で穏やかな生活は陳腐化され、新しい楽しみを邪魔する憎しみの対象となる。物事はそのまま存在するだけだ。必要以上に意味づけているのは彼自身なのに。変わったのは彼なのに。
    彼の「心変わり」それは結局、他人を巻き込んでいるだけで実際のところ深く人とぶつかることも思いやることもなく彼の内部だけで勝手な理屈で完結する。つまり彼自身が「汽車」であり「乗客」であり他者は彼にとっては通過駅のひとつである。たまに乗客になってもそれは旅を共にする「仲間」ではないのだ。ゆえに他者の痛みを知ることもない。
    私たちはひとりひとり乗客ではある。でも単に乗り合わせた行きずりの人であっても心通わせ、ときには一緒に旅をする仲間になる。なのに彼にはそれがない。彼がもっているのはプライド、他者を物のように扱う人間味のない気持ち、そして孤独だけだ。

  • 「きみ」という言葉で主人公は誰かによってかたられる。
    二人称が我々読者の主人公へのなりきりを気持ちよくふせぎながら、
    傍観者としてのじれったい位置へとどめようとする。

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著者プロフィール

(Michel Butor 1926‐2016)
フランスの小説家、詩人、批評家。フランス北部モン゠ザン゠バルールで生まれる。ヌーヴォー・ロマン(Nouveau Roman)の作家の旗手のひとりと目される。1956年、小説第二作『時間割』(L’emploi du temps)でフェネオン賞(le Prix Fénéon)を受賞、翌年1957年第三作目の『心変わり』(La Modification)でルノドー賞(le Prix Théophraste Renaudot)を受賞し注目を集めた(主人公に二人称代名詞「あなたは」を採用した小説作品として有名)。1960年に四作目の『段階』(Degrés)を発表後は小説作品から離れ、1962年『モビール──アメリカ合衆国再現の習作』(Mobile: Étude pour une représentation des États-Unis)を皮切りに空間詩とよばれる作品を次々と発表し始める。画家とのコラボレーション作品が数多く、書物を利用した表現の可能性を追究し続けた。

「2020年 『レペルトワール 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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