悪魔祓い (岩波文庫)

制作 : 高山 鉄男 
  • 岩波書店
3.52
  • (5)
  • (5)
  • (8)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 122
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003751084

作品紹介・あらすじ

西欧世界とはまったく異質な輪郭と色彩をもつインディオの世界認識のありかたを称揚し、ヨーロッパ文明とインディオ社会のヴィジョンの対立をストレートに描く、ル・クレジオの記念碑的著作。失われた土着の宇宙観とその残照を擁護する、現代文明批判の書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 西欧文明に行き詰まりと限界を感じている著者のル・クレジオが、その対極にある、いわば理想の姿としてインディオの文明を位置付けている。例えば、自己を際立たせる主体的な言語行為(西欧的)に対して、多くは沈黙を持ってなされる呪術的な言語とその論理(インディオ)。絶えず発展や進化を強要され、何ものかの実現をめざし続ける西欧に対して、何ものも欲しないインディオなど。そのように、音楽や美術などあらゆる点において、インディオのそれが称揚されるのである。そして、多数の図版もまた、この目的のために供与されている。

  • 都市とインディオ、ハイとワンドラ。文明への強烈な批判、クレジオの作品は依然にも読んだことがあったから、多少理解の前提の上に読めた。
    このアフリカ出身のフランス人作家の手によって書かれる言葉は、常に西洋文明に対し一定の距離を置こうとする。彼は支配や権力、科学というの冷徹さに対して、嫌悪感をむき出しにし、アンチテーゼとしてのより原始的で人間的だった世界へのノスタルジーを募らせる。ここでは「インディオ」という一つの世界に、クレジオはその濃縮された価値観を見たのだろう。そして、それが強烈な文明批判である上に、さらに美しい散文詩の色彩が本全体を一つの色に染め上げている。それはインディオ達が顔に塗料として塗る、深い深い赤の色だ。
    レヴィストロースの本を読んだ直後だっただけに、とても印象に残った本だった。もっともクリスチャンとしては、少し心情に抵抗を抱きながら読んだ本でもあったのだけど。

  • フランスのノーベル文学賞受賞作家、ル・クレジオのインディオとの生活体験をもとに書かれた。「現代文明批判の書」とあるが、そもそも文明-インディオの二項対立自体への問題提起であるようにも感じられる(p25「両者を分けることは不可能だ」)、緊迫感溢れる若々しい作品。詩のよう。フランス的な思わせ振りの表現がはなについたり、生理的に無理な人にも感覚的に訴えるはず。そう願うのは、個人的にフィーリングの合うものだったから。こういう考え方、観点に共感し思い入れをするひとは、まともな社会生活を送ることが困難なひとだろうが。

    インディオに仮託して自身の思想を機能させようとしているのか。沈黙(言葉への懐疑)、歌(鳥は歌わない)、道具としての絵画(p112インディオは絵を展示しない、p113)。

    原題はHai(ハイ)、「活動と精力」。最後に(p159)世界はハイとワンドラで成り立つと主張する。対立項は「現代文明」ではなく、「ワンドラ」だ。

  • 2017年7月9日に紹介されました!

  • ほとんどわかってなくて、装丁が綺麗な本という印象が強いんだけど、それでも学術的な文章ではなくて、ル・クレジオ個人の感覚を強く感じさせる文章だったのは惹かれた。ひとつの文化を突き詰めて、そこに色々な感覚が付随してくる感じも好きだった。

  • これこそが異なる価値観だ。異なっていても理解できることもある。

  • 2010/12/29購入
    2015/12/11読了

  • ル・クレジオは、私が高校生の頃なぜか惹き付けられて読みあさった、図書館のヌーヴォー・ロマンのシリーズに数冊あって、たぶん初期のものを読んだと思う。その後、大学生の頃、あの美しいリアリズム小説『ロンド』を買って読んだ。
    ノーベル文学賞をとったことで、ル・クレジオの本は最近ずいぶん入手しやすくなった。昔読んだのも含めて、ぼちぼち買っていこうかなと思っている。

    この本は小説ではなく、エッセイでもなく、むしろ南米インディオをめぐる散文詩ふうのものだ。
    一年のうちの半分以上をインディオとともに過ごすということを何年もかけてやったというから、ル・クレジオの体験は観光気分の生半可なものではない。アフリカ彫刻に惹かれたピカソや、メキシコ体験に強烈なイマジネーションをかき立てられたアントナン・アルトーよりも、もっと密着的な、なまなましい体験である。

    彼はそこで、西洋の伝統とはまるで隔絶した「芸術」に出会う。呪術的行為としての音楽や装飾図絵の輝きが、西洋の芸術を逆に、徹底的に批判する。
    なんとなくざっと読んだだけだが、この芸術観はとりわけ私にも印象深かった。
    歌、もはや聴かれることをさえ必要としていない、行為そのものとしての音楽。西欧的基準からすればおよそ音楽的とは言えないその音楽は、どのようなものだったろうか。
    私はふとアイヌの「ムックリ」(口琴)を思い出した。
    何度聞いてもあの「びよーん、びよーん」という演奏を、音楽的に感じることができなかったのだが、いま思えば、あのアイヌの音楽もまた、「聴かれるためには存在していない音楽」なのではなかったろうか。

    薄くて岩波文庫にしては高いが(だが紙質がよく、鮮烈な写真が沢山載っている)、示唆に富んだ本だった。

  • ふと手にとった一冊。横にいた人にどん引きされた。

  • 岩波文庫(赤) 080/I
    資料ID 20102004403

全12件中 1 - 10件を表示

ル・クレジオの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
J・モーティマー...
ドストエフスキー
M.バルガス=リ...
三島 由紀夫
J.L. ボルヘ...
サン=テグジュペ...
M.バルガス=リ...
フランツ・カフカ
ウンベルト エー...
ポール・オースタ...
有効な右矢印 無効な右矢印

悪魔祓い (岩波文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする