- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003751282
作品紹介・あらすじ
20世紀フランス文学において特異な存在感を誇るジュリアン・グラック(1910‐2007)のデビュー作。舞台は海と広大な森を控えてそびえ立つ古城。登場人物は男2人と女1人。何かが起こりそうな予感と暗示-。練りに練った文章で、比喩に比喩を積み重ね、重層的なイメージを精妙な和音や不意打ちの不協和音のように響かせる。
感想・レビュー・書評
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倉橋由美子の書評エッセイ(偏愛文学館)で絶賛されていたので、いつか読みたいと思っていた作品が岩波文庫に入ったので迷わず(元は白水社から出ていた安藤元雄訳)。
なんというか、ありていに言えば三角関係のお話なのだけれども、現実感の薄いゴシックなお城と森で、現実感の薄い男女(親友同士の男二人と女性一人)が繰り広げる、やはり非現実的なエピソードや思索の数々は、いっそ悪夢的。シュールというよりはゴシック寄りだと思ったけれど、ブルトンが絶賛したというのはわかる気がする。
会話文を排除してひたすら描写に費やされる文章は、しかしさほど難解ではなくするする読めるので、ゆえに逆に、油断して集中力を欠くと全く頭に入って来ず、後半のやや唐突な展開には、あれ?どっか読み飛ばした?と不安になるほどでした。
正直な印象を述べるなら、この人たちはもしかしてゾンビなのだろうか?(笑)。殺されても殺されても生き返り、永遠に3人で不毛な殺し合いを続けているだけなのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三人の若く美しい男女、古城、それを取り巻く森と海。設定も筋立てもごくシンプルで、様式的といってもよい。
はしがきで作家はこの物語が『パルジファル』の書き替えとして読まれることを認めている。文中には『ローエングリン』への言及もあり、ワーグナーの神秘主義的作品世界との響き合いは作品のひとつの柱だろう。主人公たちが礼拝堂の廃墟を訪れる場面など、ワーグナーからさらに踏み込んで聖杯伝説本体の中世的色合いも帯びている。
しかし最も強烈な余韻を残すのは、その観念的で凝りに凝った耽美な文章そのものである。古城の石の床に、深い森に、波打ち際に、光と影がゆらめきながら描いていく絵を眺める。それは一瞬として留まることなく絶えず姿を変える。やがて物語も登場人物たちもどこかへ行ってしまって、文章が呼び起こす陶酔のような感覚だけが体内に満ち満ちる。
ゴシックロマン風の筋やブルターニュの風光の助けを借り、素朴な読み手は華麗な文体のめくるめくリズムとイメージに巻き取られ翻弄されていくのだった。 -
自然が人工物に、動物に、人間にたとえられ、人間が人工物に、自然にたとえられ、森が海にたとえられ、そういう比喩の連鎖が登場人物行動に結びつく。それらは余りにも壮大でどこか現実離れしているが、その実なかなか的確である。
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2014-2-17
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ンン~~やっぱり仏文学むつかしい…
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無声映画のように言葉なく綴られた物語。
原文の文章は美しいのだろうかと想像するけれども、翻訳が硬いので雰囲気だけ感じる。 -
1/23 読了。
スローモーションと鮮烈な静止画。重たくてかたいチョコレートケーキのような小説。 -
倉橋由美子が絶賛したゴシック小説。
比喩を多用した、ある種『クドい』文体で描かれる閉ざされた城と3人の人間関係は、確かに倉橋由美子が評したように能を思わせるところがある。