死と乙女 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2023年8月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (222ページ) / ISBN・EAN: 9784003770139

作品紹介・あらすじ

「あの医者よ。」海辺に立つ一軒家。シューベルトの四重奏曲から逃げ続ける女主人公パウリナが不意の客人の声に探りあてたものとは何だったのか。それぞれの過去を抱えた三人が息詰まる密室劇をおりなす。平和を装う恐怖、真実と責任追及、国家暴力の闇という人類の今日的アポリアを撃つ、チリ発・傑作戯曲の新訳。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

過去の傷と復讐心をテーマにしたこの作品は、女性が軍事政権下で受けた深いトラウマと向き合う姿を描いています。主人公パウリナは、かつて自分を虐待した男と再会し、復讐を企てるものの、夫との関係や社会の変化に...

感想・レビュー・書評

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  •  読みふけるあまりに駅を乗り過ごす、という経験を久しぶりにした。1973年にチリで起きた軍事クーデタ。その後続く軍事政権下で拉致され、その身体を蹂躙され続けた女性は、国が民主主義へと移行していくなか、偶然に目の前に現れた男が、かつて自分をなぶりものにした男であると信じ、復讐を企てる。彼女の夫はいまや政府の役員であり、己の立場を失うことを恐れて妻の企てを止めようとするが、妻は、かつて夫が性欲のおもむくまま娼婦と幾夜もまぐわったことに今でも傷つき続けており、夫を責め立てる。そんな過去のことなど忘れてこれからを生きようじゃないかと夫も囚われの身の男も繰り返し言うが、彼女がその身を男たちに犯され続けたことによる傷は、忘れることも、過去のものとして片付けることもできないほど深い。レイプという犯罪に対する男女の向き合い方の絶望的な差。目には目を、という彼女の行動は、未来へは向かわず、憎しみの連鎖しか生まないけれども、それを我々は愚かと嘲笑うことができるのか。同様のことは、チリにとどまらず、2023年の今現在、世界中のあらゆるところで起きているのではないか。

  • 読んでいて心が苦しくなりました。こんな悲劇が、今も世界のどこかで起こっているのかもしれないと思うと恐ろしくなります。自分や愛する家族が、絶望的に卑劣で残酷な行為の犠牲になったとき、どうやってそこから立ち上がることが出来るでしょう。相手を許すなんてあり得ない。復讐を誓うのはとても自然な感情だと思います。でも、それをすると相手と同じになってしまうんですよね。なんというジレンマでしょう。

    人間の尊厳を踏みにじられるというのは耐えがたいことです。でもそれは、私たちには確かに人間の尊厳があるということです。
    傷つけられた苦しみも悲しみも消えることはありませんが、人間の尊厳を本当に自覚している人は、こんな時どんな行動をとるだろうと考えさせられました。

  • 朗読劇で観たあとに、解説として一読。
    あとがきのほうが難解。
    歴史を知れば知るほど、心苦しくなるような。

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