政治の世界 他十篇 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 松本 礼二 
  • 岩波書店
4.11
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本棚登録 : 107
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003810422

作品紹介・あらすじ

権力はいかにして発生し、正統化され、崩壊するのか-一瞬も静止することのない大小の政治的状況に共通する法則を、ダイナミックかつ包括的に探った「政治の世界」。他に、「権力と道徳」「政治的無関心」など、「科学としての政治学」創造の試みたる十篇を集める。

感想・レビュー・書評

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  •  政治を権力・倫理・技術の3つの側面から取り上げて考える部分が分かりやすかった。

     政治とは、人間集団を組織化し動かしていくこと。組織化に当たっては少数による多数の支配が基本であるが、少数が多数を従えるためにはそれだけの「力」がいる。しかしその力=暴力の正当性を保証するものがなければ、権力は長続きしない。そこで、政治権力は倫理的価値を根拠にして、被治者の自発的な服従を得ようとする。そしてそのために必要なのが、現実と理念を媒介する技術である。ということらしい。

     ともすれば自己の固有の存在根拠を主張する国家権力と、個人の道徳的意識は激しくぶつかり合い、その緊張が極まればシニシズムを生み、和したとしても偽善・自己欺瞞に陥る。両者の均衡をいかに保つかという不断の努力こそが、政治的成熟というもの。と、ドイツを例に出しながら述べている。

     特に興味深かったのは、私たちにとってごく日常的な、政治的な選択についての記述。
     勝ち負けにこだわったり、完璧を求めたり、そういった未熟な意識が、政治に対する無力感や失望につながる。
     全体状況的な判断でもって、少しでも「悪いところを抑制する/牽制する」、それくらいの意識が結局はちょうどいいのかもしれない。
     どれだけ小さなものであったとしても政治的選択権を持ち、決断を迫られる私たちにとって、「なにもしない」はゼロではなくてマイナスにもなりうるという認識を、忘れずにいたい。

  • 現にある前提から生じるという意味で自分自身からの自己批判・現実批判ということを考えていたことがありましたがそういったことを丸山真男さんが明確に書いていてこういった政治なら自分にも覚えがあるし僕は政治が嫌いだと明言したことがありましたが僕自身が政治的人間だったなと感慨を覚えた。

  • 1947年の日本政治学宣言とも言うべき巻頭「科学としての政治学」から、50年代の政治学関連諸論考を集めたもので、かなり読み応えがあった。
    丸山さんの主張に対してはいろいろ反論もあるようだけれども、歴史上日本において、国の主権そのものを論じる余地がなかったのは確かだろう。明治になって少しその可能性が出てきたと思ったら、見る見る絶対主義国家化して自由な言論は封じられた。
    ようやく「政治に関する自由な議論」が可能になったのはようやく敗戦後のことだ。そもそも「国家」という概念が、明治より前には、一般庶民には縁遠かったのではないか。
    しかしいかに無関心であろうとも、現代人のあらゆる生活状況はすべて「政治」の影響に強烈に左右されている、と丸山真男は指摘している。これは敗戦後まもない頃の指摘としては驚くべき先見性だ。現在の状況はもっとラジカルで、政治と無縁なふりをしようとしても、決してそうはいかない。「投票しないこと」すら、それ自体がひとつの政治行動である。
    私はかなり若い頃から、芸術家は政治に極力首をつっこむべきではないと考えてきたが、そうした保護された「聖域」はもはやないのかもしれない。芸術「作品」自体は政治的静かさの「聖域」に置くべきかもしれないが、あいにく作品を発表する行為自体、そして芸術をつくるその人間自体は、絶対的に「社会内」に配置されており、よほど人里離れた場所にエスケープでもしないかぎり、「政治」から逃げることはできない。
    現在の日本で、たとえばつい最近の「美味しんぼ」の福島原発被害に関する言表を政権が必死で非難し、あるいは出版社やマスコミもしくは一般国民が「発言自粛」を集団心理的に忌避するような状況は、日本社会がいま酷い危機状態にあることを教えてくれる。こういう国で、政治と無縁な「純粋芸術」にだけ「専念している」つもりになっているということは、「野蛮である」と言われても仕方がない。
    丸山真男は「政治の世界」(1952)の中で、民主主義により形式上主権が民衆の側に移れば移るほど、民衆の政治的無関心は増していくというパラドックスを語っている。この状況は日本だけではなく、世界全体に共通する現象だ。丸山氏は、消費主義的欲望へと民衆の目を向けさせるマスコミの機能がそれに一役買っていると見ている。
    民主主義と消費主義は、現代社会では確かにリンクしているように見えるが、その根源的関連はいったいどうなっているのだろう。これについては考えてみなければならない。

  • 丸山眞男『政治の世界 他十篇』岩波文庫、読了。1947年から60年までの丸山眞男の代表的論文を収録する一冊。政治と政治学、権力の政治学、政治学入門、市民のための政治学のテーマでまとめ、専門科学としての政治学の特質と方法、基礎概念とは何か。そして、政治をどう考えるのか。丸山の思索は決して古くない。

    編注と解説は松本礼二氏。解説は優れた丸山論。「丸山眞男の政治学において、高度に専門的な理論的探究と市民の政治的実践、それを支える政治教育とが、使い分けでも切り離しでもなく、有機的につながり合い保管し合っていることを見失ってはなるまい」。

    冒頭は「科学としての政治学 その回顧と展望」(1947)。敗戦によって再出発を迫られた日本の政治学の過去を厳しく反省し、欧米の学説の祖述・解説を超え、日本の政治的現実そのものと取り組むべしと課題を提示する論功。戦後日本の政治学の出発点である。

    同論考では、吉野作造の業績に検討が加えられている。日本の政治学の「非力性」という状況の中では、ユニークな存在との指摘。

    「我国の過去の政治学者で、その学説を以て最も大きな影響を時代に与えたのは、いうまでもなく吉野作造博士である。大正時代のデモクラシー運動は吉野博士の名を離れて考えることは出来ない。しかし吉野博士の民本主義に関する諸論文は理論的というよりむしろ多分に啓蒙的なものであり、博士の学問的業績としては政治史とくに日本政治史の法が重要である。ともあれ、博士は上の点でユニークな存在である」。

    という注が「少なくとも我国に関する限り、そもそも『政治学』と現実の政治とが相交渉しつつ発展したというようなためしがないのである」。という一文に付けられている。先駆者の水脈否定しないのは丸山らしい。

  • 岩波文庫 080/I
    資料ID 2013200643

  • 読了14/4/4

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