信仰の遺産 (岩波文庫 青N115-1)

  • 岩波書店 (2015年3月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (592ページ) / ISBN・EAN: 9784003811511

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  • 岩下壮一は信仰があくまで客観的な真理に基づくものであるとの立場から、これを主観的な体験に還元しようとするルターに遡る一切の試みに徹底的な批判を加え、同時に神を人間の理解を超えた隔絶した存在に追いやることも退ける。そこには人類の罪を贖うためのキリストの受肉、神の肉体としての可視的教会という、現代の世俗的合理精神ではおよそ理解し難い神秘そしてドグマこそがキリスト教の核心的な真理であり、その真理の上に立った信仰なくしてキリスト教はキリスト教たり得ないという根源的理解がある。評者には岩下神学の当否を論じる資格はないが、信仰の主観化と神と人間の隔絶は、一見相反するかに見えて実は近世に始まる人間中心主義の世界観を共通の土台にしていることは確かだろう。またイエスの説いた信仰という営為が共同的なものである以上、信仰箇条の統一、したがって教会が権威的に決定するドグマがどうしても必要になるが、信仰の主観化が万人司祭主義を経由して教会の否定に行き着くことは見易い道理である。

    第二バチカン公会議以降のエキュメニズム(教会一致運動)の流れの中にあって、カトリック内部においてすら岩下師の神学を古臭い正統主義と敬遠する向きもあるようだ。エキュメニズムの潮流に一定の影響を与えたジャック・マリタンは、晩年には第二バチカン公会議の方向性に失望を隠さなかったが、「現代化」の名のもとに信仰の世俗化に迎合するかに見えるカトリック教会の現状を天国の岩下師はどう受け止めているだろうか。教会の意義を否定しかねない教会の教えもやはり不可謬と言うべきなのだろうか。

    詳細な注解と解説のおかげで本書が近付き易くなったことは事実であるが、それでもキリスト教神学に馴染みのない者にとって難解な書物であることに変わりはない。今では入手困難となっているが、岩下師が書いた公教要理の解説『カトリックの信仰』との併読を奨める。大部ではあるが初心者にはこちらの方が取っ付き易い。

    追記: カトリックの信仰 (ちくま学芸文庫) 復刊しました!

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/706574

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