ヨブ記講演 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003815113

作品紹介・あらすじ

罪のない人になぜ災いがふりかかるのか、なぜ神は黙しているのか-深遠な問いを人間に投げかける旧約聖書「ヨブ記」を、内村は「実に個人的なるが故にまた普遍的」な「魂の実験録」ととらえた。神に向かって叫ぶ人ヨブの物語に寄り添い、徹底的に読むことによって蘇らせる、血のかよった講演録。

感想・レビュー・書評

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  • 因果応報という固定観念からの脱却。因果応報に落とし込むことで、自分で状況をコントロールできるのではないかという錯覚をごまかせるから、そう思いたくなるのが人情。自分の非力と卑小さを自覚することから始まる。

  • 岩波文庫青
    内村鑑三 
    「ヨブ記講演」ヨブ記の講義録。ヨブ記の内容は 「苦難は罪の結果なのか」をテーマとした ヨブと三人の友人の論戦。

    違和感ある宗教的な部分もあるが、全体的に「カラマーゾフの兄弟」を 想起させる論戦が面白い


    ヨブ記から感じたのは、科学や経済は 人間の苦悩に関係なく進むが、宗教は 苦難の時に寄り添ってくれるかもしれないということ


    ヨブの結論
    *苦難は罪の結果ではない
    *苦難=神が信仰を試すために与えた愛→来世への希望
    *友に幻滅し、神を真の友とすることにより幸福と安心の絶頂に達する


    ヨブ記から導き出した著者の結論
    *ヨブが自覚した愛の神=キリスト→つまり ヨブ記=キリスト待望論
    *三友への批判=神学者への批判〜三友は教義を知っていても愛を知らない。愛ありてこそ教義も知識も生きる


    キリスト待望論
    ヨブの来世の欲求→キリスト復活により神の約束→来世の希望に転換


    ヨブ記をキリスト待望と結びつけてしまうと、ユダヤ教の神概念では信仰が完結しないとした論調にも読める


  • 無教会派隆盛のきっかけにもなった伝説の講演会の記録。文語体なので、講演の内容そのままではないだろうが、それでも当時の熱気が十分に伝わる。共感できる部分と疑問の残る部分が半々という感じだった。又「ヨブ記」全体ではなく、中間部の註解を大幅にカットしてあるのが少し残念だった。

  • ユングの言うには、無意識状態のヤハウェは、ヨブが苦しみの中で至った正しさの高みに明らかに届いてなく、愛の神のイエスの必要さを発見した、と。
    内村鑑三の言うには、ヤハウェは、ヨブをさらなる高みへ導くために苦しみを与えており、その苦しみのなかで、ヨブはキリストを見出した、と。

    旧約にあって、キリストを予言してる書だというとこは、両者共有で、ただ、ヤハウェを是とする内村鑑三の正統と、ヤハウェの無意識状態を見つめるヨブを是とする異端的なユングと。

    内村鑑三のほうが14歳年上

    期待以上に綺麗な対比を見つけれたのと、予想外に共有してたキリストの萌芽

    次は何読むかなー

  • (07.29.2016)

  • カジュアルに評する類の書籍ではなさそうだが、「熱い!」という感想がやはりしっくりくる。「悪人が得をして、善人が不幸になるのはなぜか?」という、宗教・道徳上ある意味で最難関の問いに対して、ヨブ記という大古典を通して真っ向から立ち向かう内村鑑三、すごいなあと。100年前の講演録だけど、語り口も平易で今でも十分読み応えある。

  • 内村鑑三の著作は、文語体表記で、簡単には読めない。
    特に最後の最後で否定形が出て来たりして、またそれが2重否定だったりもあって
    読み飛べせなくてイライラしてしまう。とはいえ、折角だから思い、赤ペンでアンダーライン引きながら頑張って読み通した。

    特に目新しい解釈は無かったと思う。結局のところ、ヨブは、彼に与えられた試練を通して、神を個人的に知る事が出来た。全人格をぶつける対象としての神を。

    個人的には、彼が再度、世間的な成功の象徴を手に入れた記述に対して、抵抗を感じる。これではご利益信仰ではないか?と思ってしまう。しかし、彼がこの世的に成功するしないは神の目からは全く関係のない評価対象であるからして、どっちだって良いのだという事への理解はしている。それが、個人的にはしっくりこないのであるが。。。。。。

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著者プロフィール

1861年生まれ、1930年没。思想家。父は高崎藩士。札幌農学校卒業後、農商務省等を経て米国へ留学。帰国後の明治23年(1890)第一高等中学校嘱託教員となる。24年教育勅語奉戴式で拝礼を拒んだ行為が不敬事件として非難され退職。以後著述を中心に活動した。33年『聖書之研究』を創刊し、聖書研究を柱に既存の教派によらない無教会主義を唱える。日露戦争時には非戦論を主張した。主な著作は『代表的日本人』、『余は如何にして基督信徒となりし乎』など。
佐藤優
作家、元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。現在は、執筆活動に取り組む。著書に『国家の罠』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。おもな著書に『国家論』(NHKブックス)、『私のマルクス』(文藝春秋)、『世界史の極意』『大国の掟』『国語ゼミ』(NHK出版新書)など。『十五の夏』(幻冬舎)で梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。ほかにも著書多数。

「2021年 『人生、何を成したかよりどう生きるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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