万葉秀歌 下 (岩波新書 赤版 6)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004000037

感想・レビュー・書評

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  • 高校生の頃は、和歌といえば新古今。
    本歌取りの、たった一語で元歌を象徴する鮮やかさが魔法のようで、惹きつけられた。
    一方で万葉集は、なかなかとっつきにくい歌集だった。
    万葉仮名からして、ハードルになる。
    その上、作者にしても、当時の時代背景にしてもわからなことが多すぎる。
    というわけで、その後長いこと避け続けてきた。

    それがどういう風の吹き回しか、本書を手に取った。
    しかもたまたま手に入った下巻だけを。

    読んでみて、どっぷりはまった。

    旅人の宿りせむ野に霜降らば吾が子羽ぐぐめ天の鶴群

    遣唐使に随行して難波を発つ子を見送って作った母の歌だという。
    広い世界と細やかな愛情の取り合わせにはっとする。

    潮満てば水泡に浮かぶ細砂(まさご)にも吾は生けるか恋ひは死なずて

    波に洗われ、さらさら動く磯の真砂のイメージは目に見えるようで、鮮やかだ。
    恋い死にしないで生きている自分に驚いているかのような雰囲気が面白い。

    恋の歌といえば、人麻呂のこんな歌はちょっとどきっとする。

    朱らひく膚に触れずて寐たれども心を異しく我が念はなくに

    思いを表現するのにいろいろなもの、ことに寄せるのだが、そこに描かれる場面や風景が新鮮だった。

    ことばも面白い。
    響(とよ)む。御食(みけ)むかふ。息衝かし。
    髪を束ね結い上げるという意味の「たく(いとへんに官)」ということばも初めて知った。

    「ほどろに」「繁(しじ)に」「とををに」。
    「須臾(しまし)くも」「否をかも」。

    何か新しい友達ができたような気がしてわくわくする。

  • 下巻は八巻の1418首目から二十巻の4516首目まで。
    相関歌が多いが、東国の人びとが歌った東歌や、
    防人やその関係者が歌って防人歌が収録されており、
    方言が使われているものもあり飽きさせない。

  • 日本の原点である万葉集をもっともっと知ろう。

  • 30年前、高校生の頃に買った本。当時は分からなかった万葉集の魅力がこの歳になりようやくわかるようになった。

    全巻の中から秀歌を選んでおり万葉集初心者向けだろう。同じ創作者、歌人ならではの評が素晴らしい。

    下巻では東歌と防人歌が自分には合うように思えた。

  • 茂吉の万葉、特に初期への偏重を別にして味わえば、優れた短評を備えた屈指の万葉集入門書である。読後、実際に各自で選に入られたい。

  • 下巻に多く収められている、作者不詳の歌や東歌。
    これがしみじみとよかった。
    特に東歌、おそらく口伝で伝わっていったもの独特の雰囲気があり、また身近に感じられる。

  • 美しき日本語の世界

    上巻につづき、ひきつづき万葉集に収録されている短歌を披露・解説する本書

    中には防人や今で言う遊女?が歌った歌もあるが、それらも総じて美しい

    (過去の)日本人の精神世界及びそれを表現する日本語力の豊かさが感じられる

  •  
    ── 斎藤 茂吉《万葉秀歌〈下〉19681225 岩波新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4004000033
     
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4004000025
    ── 斎藤 茂吉《万葉秀歌〈上〉19681125 岩波新書》
     
    https://twilog.org/awalibrary/search?word=%E8%97%A4%20%E8%8C%82%E5%90%89&ao=a
     
    …… 巻十九に、大伴 家持が此歌に追和した長歌と短歌が載っている。
    長歌の方に、「あしひきの八峯やつを踏み越え、さしまくる情(こころ)
    障(さ)やらず、後代(のちのよ)の語りつぐべく、名を立つべしも」。
     
     Saitou, Mokichi  18820514 山形 東京 19530225 70 /籍=斎藤
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%BA%D8%C6%A3+%CC%D0%B5%C8
     Yokomitsu, Riichi 18980317 福島 東京 19471230 49 /籍=Toshikazu
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%B2%A3%B8%F7+%CD%F8%B0%EC
     
    …… 手前ここに構えとれよ。今度俺とこへ来さらしたら、殴打(どや)
    しまくるぞ。── 横光 利一《南北 1922020200 人間》青空文庫 POD
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4802057008
     
    https://joao-roiz.jp/AOZORA/search
     
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=20081203
     憂国文法 ~ しまくる、しまくら、しまくり、しまくれ ~
    https://oshiete.goo.ne.jp/qa/7544617.html(No.1 20120620 16:39)
     
    (20131025)(20200408)
     

  • 歌論が難しいが、万葉集の神髄がわかる本

  • [ 内容 ]
    万葉集はわれわれ誰もが読むべき宝典であるが、巻二十まで読破しようというのは並大抵のことではない。
    歌壇の第一人者が、四千五百有余のなかから、すぐれた歌を選び、誰もが理解でき、味わえるように平易簡潔な解説を付した本書は、万人のための「万葉集入門」であると同時に、「万葉集精髄」を実現したことにもなる。

    [ 目次 ]
    いはばしる・たるみのうへの(志貴皇子)
    かむなびの・いはせのもりの(鏡王女)
    うちなびく・はるきたるらし(尾張連)
    はるのぬに・すみれつみにと(山部赤人)
    くだらぬの・はぎのふるえに(山部赤人)
    かはづなく・かむなびがはに(厚見王)
    よのつねに・きくはくるしき(大伴坂上郎女)
    なみのうへゆ・みゆるこじまの(笠金村)
    かむなびの・いはせのもりの(志貴皇子)
    なつやまの・こぬれのしじに(大伴家持)〔ほか〕

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