ケインズ: 新しい経済学の誕生 (岩波新書 青版 449)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004110729

作品紹介・あらすじ

一九二九年の大恐慌いらい、資本主義世界の経済運動は、ケインズをぬきにしては理解できなくなった。「新しい経済学」あるいは「ケインズ革命」とよばれるケインズの思想と理論が、イギリス社会の現実のなかから、いかにして生み出され、それが、従来の経済学の体系を、そして資本主義の現実をどのように変えていったかを明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • ケインズについての歴史が書いてあるのが新鮮でした。教科書で出てくる理論の時代背景が理解できていい。

  • 経済学者の大御所、伊東光晴さんの本です。
    ケインズ経済学と聞くとどうしても公共事業という悪いイメージや、古い経済政策というイメージが付きまとうようです。
    本書ではケインズがいかなる理念を以て一般理論を書いたのかや、一般理論を書く基となった若い時代のケインズにもスポットライトが当てられています。
    ケインズは何もしないで金利所得を得るような人物を嫌い、それが当時のイギリスにあったものでした。
    また、当時の古典派経済学では失業者の発生を労働者が賃金を高く求めているという結論でしかありませんでした。
    ケインズはこれら当時の古典派経済学者に対抗すべく、また金利所得者が「安楽死」させるために一般理論を作成します。
    ケインズ経済学を支持するか、あるいは現代に大きく回帰した古典派経済学を支持するかという立場を越えて読んで欲しい一冊です。

  • 「新しい経済学」あるいは「ケインズ革命」と呼ばれるケインズの思想と理論が、イギリス社会の現実のなかから、いかにして生み出され、それが、従来の経済学の体系を、そして資本主義の現実をどのように変えていったのかを明らかにする。

  • J.M.ケインズについてその主張の大枠及びそれを支える生い立ち、背景について概説。

    経済学科生でありながら、2年の時点でこの内容程度の知識が不足していたことは大いなる反省。
    今思い返すと起爆剤的な存在だったのかもしれない。

  • ケインズ経済学の理論だけでなく、ケインズの人となりや生きた時代についても書いた本。国?受験のときはマクロ経済学=式を立てて計算としか思っていなかったけれど、こういう本を読むとちょっと親しみを感じるようになります。

  • ケインズの有名な一般理論のみならず、ケインズの生活、思想などにも触れることができる一冊。読みやすい。

  • ケインズの経済理論を、その時代の社会背景も含めて分かりやすく解説してくれており、勉強になった。

    中心にケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』の骨子の説明を置き、その前の章では、ケインズが経済を分析する際の視点を生んだ当時の経済状況やかれの生い立ちを、後半では、ケインズの経済学が戦後の世界経済や資本主義自体の姿をどのように変えていったのかについて概説をしている。

    『一般理論』の解説では、彼がセーの法則に典型的に見られる完全雇用かつ需給が一致する状態での均衡理論から離れ、有効需要の理論を構築する必要があった背景がよく分かった。

    また、同じく『一般理論』の中心的な要素である利子については、ケインズが節欲への報酬ではなく流動性に対する対価としての利子という考え方を提起したこと、そして流動性に対する選好により利子率が高止まりし、完全雇用に必要な額の投資が行われないという状況を描き出した考え方の流れが、分かりやすく説明されている。

    ケインズ自身は時評家としての側面や投機家としての側面、そして戦前の英国財務省での働きや戦後のIMF創設への関与など、実務家としての側面を持っている。

    このような多様な人物像を織り交ぜながらも、単にケインズ評伝に留まることなく、かれの『一般理論』を丁寧に説明する内容になっており、ケインズの経済理論の入門書として、とても良い一冊になっていると思う。

  • 【要約】


    【ノート】

  • 【目次】
    写真(ケインズ、リディア・ロボコヴァ) [/]
    はしがき(一九六二年三月一九日 伊東光晴) [i-iv]
    目次 [v-vii]

    序説 001

    I 三つの階級・三つの政党――ケインズの階級観 011
    チャーチルとケインズ/一九二○年代の経済問題/三つの問題/三つの階級/金本位制復帰はいかなる階級への利益をもたらすか/海外投資の変質/ケインズの提案/三つの政党/チャーチルの経済的帰結/ケインズと政党/ケインズ理論の中核

    II 知性主義――ケインズの思想 047
    マーシャルとケインズ/ソサエティーとその思想――ベンタム主義への批判と叡知主義/ブルームズベリー・グループ-若い芸術家の集団/知性主義の二側面――ケインズの人間観/自由放任主義批判/投機家ケインズ――フロー分析からストック分析への転換をもたらしたもの/ケインズの結婚

    III 新しい経済学の誕生 075
    1 新しい現実古い理論 
    資本主義の危機/古い経済像/ケインズの苦闘/自動車が故障してしまった。運転技術だけではどうにもならない
    2 『一般理論』の骨ぐみ――(i) 
    新しい労働市場分析/有効需要の原理とセー法則/社会全体の生産量はどうして測るか/消費性向と有効需要の原理/投資と貯蓄との関係/乗数理論/乗数理論の実践的意味/伝統的な金融市場批判/結合のあやまり
    3 『一般理論』の骨ぐみ――(ii) 
    利子は何に対する報酬か/利子率の高さはどうしてきまるか/ケインズ利子論のビジョン/資本の限界効率と投資の決定/『一般理論』の要約とケインズの政策/ケインズの戦争観/ケインズは平和主義者であったか/ケインズはインフレ主義者か/貯蓄は美徳か/ケインズの資本主義

    IV 現代資本主義とケインズ経済学 165
    投資決定論の修正/ケインズの見なかったもの/ケインズ主義の二つの流れ/ビルト・イン・スタビライザー/新しい労資関係/新しい病い/戦後の国際通貨制度――ケインズの最後の努力/ケインズとマルクス

    ケインズ経済学をより深く学ぶために 201
    投資と貯蓄との関係/『一般理論』の解説書/『一般理論』とケインズの周辺を知るためのもの/ケインズ経済学の発展を学ぶためのもの/ケインズの著書

  • (2015.06.20読了)(2011.10.01購入)
    副題「〝新しい経済学〟の誕生」
    「世界を変えた10冊の本」池上彰著、で『雇用・利子および貨幣の一般理論』ケインズ著が取り上げられているのですが、直接『一般理論』に取り組めるほどの蛮勇はないので、解説してくれそうな本ということでこの本を手に取りました。
    直接、政治経済の世界に関わった人と言うことですので、非常に感心しました。経済の世界では、需要供給曲線というので教科書にもあることですが、労働賃金と失業者に関して、それまでの理論に異を唱えて、修正を加えたことに関して、非常に感心しました。
    景気回復、失業対策として、公共事業を行うべしということに関しても、実に感服しました。現代の政治は、ケインズの影響下のもとにあることが実によくわかります。
    でも、現代は、もう一人の、ケインズが必要とされているようです。
    必要なものはすでにある、景気を刺激するために、公共投資はしたいけど、財政赤字が許容範囲を超えているのじゃないかという状態をどうしたらいいのか?
    この難題を解決するための、実務家出でよ!

    【目次】
    はしがき
    序説
    Ⅰ 三つの階級・三つの政党―ケインズの階級観
      チャーチルとケインズ
      一九二〇年代の経済問題
      三つの問題
      三つの階級
      ほか
    Ⅱ 知性主義―若き日のケインズの思想
      マーシャルとケインズ
      ソサエティーとその思想―ベンタム主義への批判と叡知主義
      ブルームズベリー・グループ―若い芸術家の集団
      知性主義の二側面―ケインズの人間観
      ほか
    Ⅲ 新しい経済学の誕生
      1 新しい現実、古い理論
      2 『一般理論』の骨ぐみ―(ⅰ)
      3 『一般理論』の骨ぐみ―(ⅱ)
    Ⅳ 現代資本主義とケインズ経済学
      投資決定論の修正
      ケインズの見なかったもの
      ケインズ主義の二つの流れ
      ビルト・イン・スタビライザー
      ほか
    ケインズ経済学をより深く学ぶために
      投資と貯蓄との関係
      『一般理論』の解説書
      『一般理論』とケインズの周辺を知るためのもの
      ほか

    ●ソヴィエト・ロシア(62頁)
    もし私がロシア人であったならば、あらゆる点を考慮したあとでさえ、私は帝政ロシアよりもむしろソヴィエト・ロシアのためにはるかに多く、私に割り当てられた活動を捧げたいと思っている
    旧いロシアの残忍性と愚劣さからはなにものも生まれることができなかったが、新しいロシアの残忍性と愚劣さの背後には理想がなにか一点ひそんでいる、と思う
    ●なまけ者(94頁)
    伝統的な考えをもっともよくあらわしているのは失業者を idle man とよぶ言葉である。〝なまけ者〟。なぜ失業者のことをなまけ者といったかといえば、働かないでぶらぶらしている人間というのは、「こんな安い賃金で働くのはいやだ」といって働かない人間である。だから idle な人間なのだ、という考え方である。
    ●完全雇用(100頁)
    かれらは、完全雇用を前提している理論で失業の問題を解こうとしたのである。だからそこから出てくる失業は労働の移動が円滑でないために生まれる一時的な失業(摩擦的失業)か、自分の意志で働かない人(自発的失業)か、いずれかよりない、としたのである。
    ●賃金切り下げ(125頁)
    ひとつの企業で賃金が下がればコストは安くなり、企業の利潤はふえる。しかし社会全体として賃金が切り下げられたとするならば、それは所得の減少であり、消費需要の減少をきたす。その結果はといえば、需要が減っただけで製品の価格は下がり、賃金の切り下げによって生じた利潤は、もとのもくあみになってしまうかもしれない。賃金の切り下げは、社会全体としては需要の減少である。
    ●貨幣の役割(139頁)
    貨幣にはいろいろの役割がある。ものの価値を「いくら」といって測るという尺度の役割(価値尺度)、つくった米を売って貨幣にかえ、この貨幣で布を買うというように交換の仲立ちをする役割(交換手段)、そして、富をそれでたくわえるという蓄蔵手段としての役割などである。伝統的な理論はこのうち、第一と第二を認めたが、第三の、貨幣で貯えるという点を見落とした。
    ●投資家階級(147頁)
    投資家階級の、自分たちの利益をはかる行動が、労働者には大量失業をひきおこし、企業家には慢性的な不況をもたらしている。
    ●相続税(149頁)
    かれ(ケインズ)は遺産相続のとき、極端な累進税をかけることを主張する。親からの財産というのは、それを受ける個人の能力とは無関係である。
    ●貯蓄(158頁)
    ケインズは、節倹するということ―今までよりも多く蓄積しようという行動―は有効需要を少なくし、乗数の値を低め、所得と生産の縮小をもたらすことである、それは失業を増大させることであり、社会的には悪であることを強調した。
    ●ガルブレイス(188頁)
    ケインズの理想は完全雇用であり、不況の除去であり、資本、資源の完全利用の状態であった。しかしガルブレイスが『豊かな社会』のなかでいったように、物価騰貴は完全雇用または資本資源の完全利用に近いときにおこる。

    ☆関連図書(既読)
    「ケインズ」西部邁著、岩波書店、1983.04.14
    「アダム・スミス」高島善哉著、岩波新書、1968.03.20
    「アダム・スミスの誤算 幻想のグローバル資本主義(上)」佐伯啓思著、PHP新書、1999.06.04
    「超訳『資本論』」的場昭弘著、祥伝社新書、2008.05.01
    「超訳『資本論』第2巻」的場昭弘著、祥伝社新書、2009年4月5日
    「超訳『資本論』第3巻」的場昭弘著、祥伝社新書、2009.04.05
    「高校生からわかる「資本論」」池上彰著、ホーム社、2009.06.30
    「マルクス・エンゲルス小伝」大内兵衛著、岩波新書、1964.12.21
    「賃労働と資本」マルクス著・長谷部文雄訳、岩波文庫、1949..
    (2015年8月12日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    一九二九年の大恐慌いらい、資本主義世界の経済運動は、ケインズをぬきにしては理解できなくなった。「新しい経済学」あるいは「ケインズ革命」とよばれるケインズの思想と理論が、イギリス社会の現実のなかから、いかにして生み出され、それが、従来の経済学の体系を、そして資本主義の現実をどのように変えていったかを明らかにする。

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