ユダヤ人 (岩波新書)

制作 : Jean‐Paul Sartre  安堂 信也 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004110798

作品紹介・あらすじ

世界中の人びとがユダヤ人に対して抱いている偏見は、実に古くかつ根強い。サルトルは、まったく新しい観点から、数々の具体的事実をあげて、この根深い偏見の源をつきとめ、ユダヤ人問題の本質をはじめて明らかにした。たんにユダヤ人問題のみならず、今日の人種問題に対して正しい解決の方途を示唆した画期的な書。

感想・レビュー・書評

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  • 今も色褪せない差別論の古典。差別は加差別側が生み出す。加差別と被差別の双方の人間を精緻に描出している。最後の社会主義革命によるユダヤ人問題解決の十分性への言及が唐突で、実効性に疑問が残るがそれ以外はどのくだりも傾聴に値する。

    ・反ユダヤ主義者は恐怖にとらわれ、それもユダヤ人に対してではなく、自分自身に対して、自覚に対して、自分の自由に対して、自分の本能に対して、自分の責任に対して、変化に対して、社会に対して、世界に対して、恐怖を抱いているのである。しかもかれは殺すときには群衆に紛れて、集団的処刑に加わるに過ぎない。
    ・反ユダヤ主義者は、ユダヤ人がユダヤ人であることを非難するのだが、民主主義者はユダヤ人が、自分をユダヤ人と考えることを非難しがちなのである。
    ・ところが家庭では、ユダヤ人であることに誇りを持てと言われる。恥辱と苦悩と傲慢の間をさまよう他はない。
    ・ユダヤ人の野心が根本的に、安全性への欲求だからである。
    ・人種という観念そのものが、不平等の観念を含んでいる以上、その観念の機構の深い部分には、既に価値判断が含まれているのではあるまいか。
    ・ユダヤ人がなによりもその所有形態(金銭)を好むのは、それが普遍的だからである。
    ・形而上的不安が、今日、ユダヤ人や労働者には、許されていない贅沢品であると言いたい。世界における人間の位置とその運命について、反省しうるためには、自分の権利を確信し、世界に深く根を下ろしていなければならない。
    ・ユダヤ人の関心の普通の対象は、まだ、世界における人間の位置ではなく、社会における彼の位置なのである。
    ・ユダヤ人の性格が反ユダヤ主義を引き越しているのではなく、反対に反ユダヤ主義者がユダヤ人を作りあげたのだ。
    ・宣伝や教育や法的禁止によって、反ユダヤ主義者の自由に呼びかけるだけでは不充分であろう。他の人間同様、彼もまた状況の中における自由体なのであるから、完全に改革しなければならないのはその状況なのである。

  • ジャン=ポール・サルトルの「ユダヤ人」問題論。欧米社会に根強いユダヤ人差別問題を真正面から捉えた論文である。
    「ユダヤ人」という存在について、社会における反ユダヤ主義の構造・心理・思わくなどをベースに分析するとともに、それに対するユダヤ人自身の受け入れの在り方をも考察し、その差別の本質をサルトル的な皮肉を交えた文学的表現にて説明、「ユダヤ人」問題は非ユダヤ人自身の問題であり、われわれ自身の自由の問題でもあるとして、解決の道筋をサルトルならではのアンガージュマンの見地(社会主義革命、連盟結成など)にて指し示す。
    率直に言って「ユダヤ人」については日本ではそれほど馴染みのある話ではないと思われるが、差別行為に対する分析は「ユダヤ人」を例えば、いじめや同和問題などといった話に置き換えてもよく、人間社会における負のあり様を鋭く突き付ける内容であると感じた。

  • 「ユダヤ人とは、他の人々が、ユダヤ人と考えている人間である。これが、単純な真理であり、ここから出発すべきなのである。・・・反ユダヤ主義者が、ユダヤ人を作るのである。」私のユダヤ人に関する知見のほとんどは内田樹氏の『私家版・ユダヤ文化論』に負っているので、サルトルの主張には与しない。しかし、このような思考法も、たまには、必要である。

  • ユダヤ人について何故迫害されるのかについての論考。何故と書いたが、迫害されることに妥当性はないという観点で書いている。特に、ユダヤ人について感情によるのではなく、論理で物事を考え、心がこもっていないという反ユダヤ主義のかんがえについて、そもそも感情で批判されているので論理を拠り所とするしかないだろうという点、また反ユダヤ主義を主張する人々としてはいわゆる大衆階級ではなく、中産階級の人が多いという観点が、現在日本でも強くなりつつあるヘイトスピーチ精力に対抗する上で必要な観点だと感じた。

  • 作中でサルトルが引用する、リチャード・ライトのことば「合衆国には、黒人問題など存在しない。あるのは白人問題だ」。この考え方には目を見開かされる思いがする。

  • 既読のサルトル(殆ど読み止しだが‥)の中でも格段に読みやすい。ユダヤ人が迫害される理由の構造的なものはなんとなく理解できた。反ユダヤ主義者に焦点を絞った分析は、ユダヤ人に限らず全ての差別に通じるし頷ける。ただここでは歴史的な考察はされていないので、ユダヤ人の根源や本質は全くわからない。サルトルによればそれは反ユダヤ主義者と周囲が作り上げた社会的構造に過ぎないらしいが。果たしてそれだけでこれほどの差別が根付くのか?疑問だ。解決策として最後に強引に畳み掛けて「社会主義革命を!」で締め括る。嗚呼これサルトルよ‥

  • ユダヤ人問題について平易に解説した本。しかしやや単純化の趣があり、最終的な解決方法が社会主義革命であるというのはいただけない。

  • ユダヤ人迫害の問題はユダヤ人にあるのか反ユダヤ主義者にあるのか。
    サルトルは反ユダヤ主義者こそがユダヤ問題を生み出しているのであると断じている。
    反ユダヤ主義者は階層的には中間層ないしそのちょい下くらいの人たち(ちょうど、ナチズムに共感していった層)で、ユダヤ問題を解決するためには、それら階級の解体すなわち階級闘争しかなく、よって社会主義革命なくしてユダヤ問題解決はないと結論している。
    えー!そうくるか?

  • ものすごく人種差別がわかる。
    ユダヤと反ユダヤ
    読んでいくうちに、凹みます
    筆者である サルトルが怒りに満ちています。
    もう何世紀も
    人種差別や偏見が続いてるという事実。
    とても昔の本だけど
    読みごたえはあります。
    ただ
    ものすごく句読点が多いのが気になりました。

  • [ 内容 ]
    世界中の人びとがユダヤ人に対して抱いている偏見は、実に古くかつ根強い。
    サルトルは、まったく新しい観点から、数々の具体的事実をあげて、この根深い偏見の源をつきとめ、ユダヤ人問題の本質をはじめて明らかにした。
    たんにユダヤ人問題のみならず、今日の人種問題に対して正しい解決の方途を示唆した画期的な書。

    [ 目次 ]
    1 なぜユダヤ人を嫌うのか(ユダヤ人を嫌うのは自由だろうか;嫌う理由があるのだろうか ほか)
    2 ユダヤ人と「民主主義」(抽象的民主主義の弱味;抽象的人間と具体的ユダヤ人 ほか)
    3 ユダヤ人とはなにか(人間の違いは、その状況と選択による;ユダヤ人の状況、人種、宗教、国家、歴史 ほか)
    4 ユダヤ人問題はわれわれの問題だ(真の敵は反ユダヤ主義者;われわれの目標は具体的な自由主義 ほか)

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