ユダヤ人 (岩波新書)

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  • 岩波書店 (1956年1月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784004110798

みんなの感想まとめ

差別や偏見の根源を鋭く分析し、私たちの社会に潜む「ユダヤ人」というカテゴリーの意味を問い直す内容が展開されています。著者は、反ユダヤ主義の構造や心理を探求し、ユダヤ人自身の受け入れ方についても考察。サ...

感想・レビュー・書評

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  • フランスの哲学者、サルトルの反ユダヤに対する徹底的な批判。
    哲学的な概念を使って記述している部分もあるので、やや難解に思えるところもあるが、論理は実に明快で、認識をベースにした物理学あるいは数学の証明を読んでいるよう。
    「ユダヤ人」とか「ユダヤ人的」という見方を作り出したのは私たちであり、集団内の分断を回避するために、敢えて「ユダヤ人」と「非ユダヤ人」というカテゴリを作り出し、ユダヤ人を敵とみなすことで団結を図っている。
    そして明らかな敵、明らかな悪を設定することで、自らが自らの「善」を積極的に探求することをしないでいられる。
    とにかく痛烈。そして、私たちがなんとなく感じている違和感をきちんと言葉に変え、言葉で伝えるサルトルの能力に舌を巻く。すごい。

    要するに私たちは、自分が楽をするために、ありもしない敵を作り出し、それを攻撃することで様々な認知的な負荷を解消しようとする。
    人間の仕組み上どうしようもない部分でもあり、安全な社会を構築する上での大きな欠点でもある。

    これはユダヤ人差別にかかわらず、すべての差別や偏見に当てはまる。
    私自身の考え方も、サルトルの指摘に心当たりがある部分があり、恥ずかしくなった。
    一方で、これを読んだからと言って、いまの様々な問題がどうとかこうとか言うつもりはない。
    ただ、みなも是非これを読んで、私のように恥ずかしくなって欲しい。

  • 書かれた時期のせいもあり、反ユダヤ主義に対する非難とユダヤ人の保護を主に考えられた内容なのだろうとは思う。そしてサルトル自身もユダヤ人、反ユダヤ、イスラエルに対する態度が終始一貫していたわけではないらしいので、この様な書籍があるのも致し方ないが、これを現代のイスラエル・パレスチナ問題に敷衍するのは危険だと思う。

    「反ユダヤ主義がユダヤ人を生むのだ」とか「正当でないユダヤ人に対する批判」は、読んでいてもかなりの疑問を感じる。最終章では実践を重視することを説きながら、そこに至るまでの道筋は決して現実に即しているとは言い難い。かなりサルトルの思い込みや先入観、独自過ぎる視点で話が進んでいく。残念ながら充分な説得力は無い。
    しかし、サルトルの思想を上記の様な観点で捨て去ってしまうのはもったいない。

    『特定の特徴を持つ人の集団を差別する』のは差別される側ではなく、差別する側の問題である。解決するには差別する側を変えるしかない。
    ある特徴のある人々だけを狙って攻撃する集団が存在するのか。
    ・その特徴が分かりやすいこと
    ・攻撃しても反撃される可能性が低いこと
    ・攻撃することで憂さ晴らしになること
    ・仲間・同志を作りやすいこと
    などなど…
    要するに“する側“の『身勝手な』思考により生まれたもの。
    当然過ぎるが、「される側」は変えることが出来ない。一つ一つの差別に対して「する側」を分析し、十分に説得力のある批判をし、自ら誤りを正す方向に進めて行くしかない…
    う〜ん単純化し過ぎか……

  • ジャン=ポール・サルトルの「ユダヤ人」問題論。欧米社会に根強いユダヤ人差別問題を真正面から捉えた論文である。
    「ユダヤ人」という存在について、社会における反ユダヤ主義の構造・心理・思わくなどをベースに分析するとともに、それに対するユダヤ人自身の受け入れの在り方をも考察し、その差別の本質をサルトル的な皮肉を交えた文学的表現にて説明、「ユダヤ人」問題は非ユダヤ人自身の問題であり、われわれ自身の自由の問題でもあるとして、解決の道筋をサルトルならではのアンガージュマンの見地(社会主義革命、連盟結成など)にて指し示す。
    率直に言って「ユダヤ人」については日本ではそれほど馴染みのある話ではないと思われるが、差別行為に対する分析は「ユダヤ人」を例えば、いじめや同和問題などといった話に置き換えてもよく、人間社会における負のあり様を鋭く突き付ける内容であると感じた。

  • もちろん戦後にフランスにおける反ユダヤ主義を批判した本だというのは前提として、古今東西大きなものから小さなものまで、根深ければ根深い程にあらゆる差別と排除、迫害についての構造への考察と批判が記されていた
    現代の様々な人権問題へのインプリケーションが得られるこの本が、日本語でしかもこんなに安価に手に入るということに感謝しつつ、できるだけ多くの人に届く機会があるといいなと思う切なる気持ちが湧き上がるお勧めの一冊です。

  • 今も色褪せない差別論の古典。差別は加差別側が生み出す。加差別と被差別の双方の人間を精緻に描出している。最後の社会主義革命によるユダヤ人問題解決の十分性への言及が唐突で、実効性に疑問が残るがそれ以外はどのくだりも傾聴に値する。

    ・反ユダヤ主義者は恐怖にとらわれ、それもユダヤ人に対してではなく、自分自身に対して、自覚に対して、自分の自由に対して、自分の本能に対して、自分の責任に対して、変化に対して、社会に対して、世界に対して、恐怖を抱いているのである。しかもかれは殺すときには群衆に紛れて、集団的処刑に加わるに過ぎない。
    ・反ユダヤ主義者は、ユダヤ人がユダヤ人であることを非難するのだが、民主主義者はユダヤ人が、自分をユダヤ人と考えることを非難しがちなのである。
    ・ところが家庭では、ユダヤ人であることに誇りを持てと言われる。恥辱と苦悩と傲慢の間をさまよう他はない。
    ・ユダヤ人の野心が根本的に、安全性への欲求だからである。
    ・人種という観念そのものが、不平等の観念を含んでいる以上、その観念の機構の深い部分には、既に価値判断が含まれているのではあるまいか。
    ・ユダヤ人がなによりもその所有形態(金銭)を好むのは、それが普遍的だからである。
    ・形而上的不安が、今日、ユダヤ人や労働者には、許されていない贅沢品であると言いたい。世界における人間の位置とその運命について、反省しうるためには、自分の権利を確信し、世界に深く根を下ろしていなければならない。
    ・ユダヤ人の関心の普通の対象は、まだ、世界における人間の位置ではなく、社会における彼の位置なのである。
    ・ユダヤ人の性格が反ユダヤ主義を引き越しているのではなく、反対に反ユダヤ主義者がユダヤ人を作りあげたのだ。
    ・宣伝や教育や法的禁止によって、反ユダヤ主義者の自由に呼びかけるだけでは不充分であろう。他の人間同様、彼もまた状況の中における自由体なのであるから、完全に改革しなければならないのはその状況なのである。

  • 分類・優劣・差別がいかに社会的、外在的かを的確に論じている。社会的課題を考える上での土壌となると思う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/702105

  • 【書誌情報】
    原題:Réflexions sur la question juive (1946→1954)
    著者:Jean-Paul Charles Aymard Sartre(1905-1980) 哲学。
    訳者:安堂 信也(1927-2000) フランス演劇史。
    通し番号:青版 B-79
    刊行日:1956/01/16
    ISBN:9784004110798
    仕様:新書 並製 カバー
    頁数:200

    世界中の人びとがユダヤ人に対して抱いている偏見は,実に古くかつ根強い.サルトルは,まったく新しい観点から,数々の具体的事実をあげて,この根深い偏見の源をつきとめ,ユダヤ人問題の本質をはじめて明らかにした.たんにユダヤ人問題のみならず,今日の人種問題に対して正しい解決の方途を示唆した画期的な書.
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b267095.html

    【私的メモ】
    ・「胆汁質」(72頁9行目)
     →西洋で流行って廃れた性格類型の一つ(血液・胆汁・黒胆汁・粘液)。日本でいうABO式血液型占いのようなよなもの。サルトルはこの語を、ありふれた形容詞として使っているようだ。

    『世界大百科事典 第二版』の【気質】より
    “〔……〕気質を表す英語 temperament などの西欧語は語源的に〈ほどよく混ぜ合わせる〉という意味のラテン語 temperareに由来しているが,これは,ヒッポクラテス以来,人間の性格類型を血液・胆汁・黒胆汁・粘液という4種の体液の混合のぐあいから考えたためである。このうち,血液が優勢ならば,陽気で快活な〈多血質 sanguine〉が,胆汁が優勢ならば,短気で興奮しやすい〈胆汁質choleric〉が,黒胆汁が優勢ならば,陰気で憂鬱な〈黒胆汁質 melancholic〉が,また粘液が優勢なら,鈍感で冷血な〈粘液質 phlegmatic〉がそれぞれ生ずると信じられた。このいわゆる四性論(四体液説)は,こんにちの目からみれば,科学的根拠を欠く空想の産物にすぎないが,体液病理学を医学の基本とみなした古代ギリシア・ローマ期に広く行きわたったばかりか,ルネサンス期を経て,近代医学の成立する19世紀まで受け継がれ,下記のクレッチマーの気質論にも多少の影響をおよぼした節がある。〔……〕 ”


    【目次】
    まえがき(一九五六年一月 安堂信也) [i-v]
    目次 [vii-viii]


    I なぜユダヤ人を嫌うのか 001
      ユダヤ人を嫌うのは自由だろうか
      嫌う理由があるのだろうか
      ユダヤ人を嫌うのはどういう人々か
      凡庸、因習、事大主義
      原始的暴力団
      責任の無視
      悪魔にされるユダヤ人
      善玉、悪玉、聖戦
      サディズム
      殺人犯人間の条件への恐怖


    II ユダヤ人と「民主主義」 
      抽象的民主主義の弱味
      抽象的人間と具体的ユダヤ人
      人の自覚を恐れる「民主主義者」


    III ユダヤ人とはなにか 
      人間の違いは、その状況と選択による
      ユダヤ人の状況、人種、宗教、国家、歴史
      状況の一致による共同体
      同化を拒絶されたユダヤ人
      常に脅かされているユダヤ人
      ユダヤ人というレッテル
      めくらにされたユダヤ人
      歴史を取り上げられたユダヤ人
      国賊でない証拠を求められて
      不安な生活
      正統でないユダヤ人の逃げ道
      ユダヤ人の反ユダヤ主義
      マゾヒズム、理性主義、批判精神
      肉体観
      「要領の悪さ」
      金欲と功利主義
      ユダヤ人の感受性と不安観
      正統なユダヤ人
      正統になっても問題は残る


    IV ユダヤ人問題はわれわれの問題だ 
      真の敵は反ユダヤ主義者
      われわれの目標は具体的な自由主義
      反ユダヤ主義の絶滅  
      反ユダヤ主義は階級闘争の神秘的・ブルジョワ的あらわれ
      社会主義革命こそ必要
      それまではどうすべきか
      反ユダヤ主義に反抗する連盟を
      反ユダヤ主義と国
      家社会主義ユダヤ人の自由とわれわれの自由

  • (「BOOK」データベースより)amazon
    世界中の人びとがユダヤ人に対して抱いている偏見は、実に古くかつ根強い。サルトルは、まったく新しい観点から、数々の具体的事実をあげて、この根深い偏見の源をつきとめ、ユダヤ人問題の本質をはじめて明らかにした。たんにユダヤ人問題のみならず、今日の人種問題に対して正しい解決の方途を示唆した画期的な書。

  • 2011/4/29 My本棚のこれまでに登録していなかった本を登録。
    古い本、こだわりの本がある。
    TT用も 

  • 【由来】
    ・amazonでたまたま

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

  • 「ユダヤ人とは、他の人々が、ユダヤ人と考えている人間である。これが、単純な真理であり、ここから出発すべきなのである。・・・反ユダヤ主義者が、ユダヤ人を作るのである。」私のユダヤ人に関する知見のほとんどは内田樹氏の『私家版・ユダヤ文化論』に負っているので、サルトルの主張には与しない。しかし、このような思考法も、たまには、必要である。

  • ユダヤ人について何故迫害されるのかについての論考。何故と書いたが、迫害されることに妥当性はないという観点で書いている。特に、ユダヤ人について感情によるのではなく、論理で物事を考え、心がこもっていないという反ユダヤ主義のかんがえについて、そもそも感情で批判されているので論理を拠り所とするしかないだろうという点、また反ユダヤ主義を主張する人々としてはいわゆる大衆階級ではなく、中産階級の人が多いという観点が、現在日本でも強くなりつつあるヘイトスピーチ精力に対抗する上で必要な観点だと感じた。

  • 作中でサルトルが引用する、リチャード・ライトのことば「合衆国には、黒人問題など存在しない。あるのは白人問題だ」。この考え方には目を見開かされる思いがする。

  • 既読のサルトル(殆ど読み止しだが‥)の中でも格段に読みやすい。ユダヤ人が迫害される理由の構造的なものはなんとなく理解できた。反ユダヤ主義者に焦点を絞った分析は、ユダヤ人に限らず全ての差別に通じるし頷ける。ただここでは歴史的な考察はされていないので、ユダヤ人の根源や本質は全くわからない。サルトルによればそれは反ユダヤ主義者と周囲が作り上げた社会的構造に過ぎないらしいが。果たしてそれだけでこれほどの差別が根付くのか?疑問だ。解決策として最後に強引に畳み掛けて「社会主義革命を!」で締め括る。嗚呼これサルトルよ‥

  • ユダヤ人問題について平易に解説した本。しかしやや単純化の趣があり、最終的な解決方法が社会主義革命であるというのはいただけない。

  • ものすごく人種差別がわかる。
    ユダヤと反ユダヤ
    読んでいくうちに、凹みます
    筆者である サルトルが怒りに満ちています。
    もう何世紀も
    人種差別や偏見が続いてるという事実。
    とても昔の本だけど
    読みごたえはあります。
    ただ
    ものすごく句読点が多いのが気になりました。

  • [ 内容 ]
    世界中の人びとがユダヤ人に対して抱いている偏見は、実に古くかつ根強い。
    サルトルは、まったく新しい観点から、数々の具体的事実をあげて、この根深い偏見の源をつきとめ、ユダヤ人問題の本質をはじめて明らかにした。
    たんにユダヤ人問題のみならず、今日の人種問題に対して正しい解決の方途を示唆した画期的な書。

    [ 目次 ]
    1 なぜユダヤ人を嫌うのか(ユダヤ人を嫌うのは自由だろうか;嫌う理由があるのだろうか ほか)
    2 ユダヤ人と「民主主義」(抽象的民主主義の弱味;抽象的人間と具体的ユダヤ人 ほか)
    3 ユダヤ人とはなにか(人間の違いは、その状況と選択による;ユダヤ人の状況、人種、宗教、国家、歴史 ほか)
    4 ユダヤ人問題はわれわれの問題だ(真の敵は反ユダヤ主義者;われわれの目標は具体的な自由主義 ほか)

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    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ユダヤ人は外部から作られた、概念なのだろうか。

  • ユダヤ共同体は、国家的でも、国際的でも、宗教的でも、人種的でも、政治的でもない。それは、一つの半ば歴史的な共同体なのである。ユダヤ人をユダヤ人たらしめているものは、その具体的な状況であり、彼を他のユダヤ人達と結びつけているのは、状況の一致なのである。
    ・・・・・・『ユダヤ人』180頁

    反ユダヤ主義、日本では馴染みのない問題かもしれないが、世界中に蔓延り、確実に存在している問題。ユダヤ人というものがいかに造られ、利用されてきたのか。その現実とその原因を知るためにとても役立つと思う。

    理性的で批判的な態度は、ユダヤ人の特徴とされているらしい。だが、これも、非理性的な反ユダヤ主義者によって造られた性格といっていい。

    彼が相手と推論し、論争するのも、出発点において精神の一致を得るためである。彼は、すべての論争以前に、出発点となる原則について意見の一致を見ることを希望する。・・・・・・人が非難するあの絶え間ない批判行為も実は理性の中で、相手と共感しようという素朴な愛と、人間関係では、暴力は全く無用であるという、更に素朴な信仰とを求めているのである。
    ・・・・・・『ユダヤ人』143頁

    非理性的な人間は、理性的な論争を嫌う。それでも、理性的な人間は、理性的な解決を望む。理性的な人間と非理性的な人間との食い違いは、何もユダヤ人問題に限ったことではない。より身近で、いつでも、いつまでもある問題だ。

    何故、理性的な人間がより理性的になろうとするか。
    その原因を私はこう想像する。
    非理性的な人間によって、非理性的な迫害、理不尽な中傷を浴びせられ生きてきた人間は、理性的にならざるを得ない。理性的に自己の正しさを確立しなければ生きていけないのだ。もしそれができなければ、全てを諦めるしかない。

    無知と無理解と無思慮が、人を貶めるのだ。

    著者サルトルは、これはわれわれの問題だと言っている。
    彼にとってはフランスの問題であり、我々にとっては我々の問題なのだ。黒人作家のリチャード・ライトの言葉、「合衆国には、黒人問題など存在しない。あるのは白人問題だ」本書でも引用されている(187頁)この言葉を使うなら、「ユダヤ人問題は存在しない。あるのは反ユダヤ主義問題だ」ということになるだろう。

    非理性的で利己的な人間が齎す過ちを、見つめ直さなければならない。

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