原子力発電 (岩波新書)

  • 岩波書店 (1976年2月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (206ページ) / ISBN・EAN: 9784004111092

みんなの感想まとめ

原子力発電に関する基礎的な情報を丁寧に解説した本書は、1976年に出版されて以来、今なお重要な警鐘を鳴らしています。科学的知見は時代とともに進化していますが、経済的合理性を重視するあまり安全性が不十分...

感想・レビュー・書評

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  • 原子力発電の危険性について、基礎的な情報から解説した良書。1976年の出版であるため、科学的な知見についてはアップデートもあるだろう。しかし、経済的合理性を重んじるあまり安全性が十分に確認できていない技術を社会実装していく政策に対する警句として、今なお一読に値すると感じる。

  • 序の部分で、戦後はじめのうちは、戦争からの反省もあったのか、政府の原子力委員会は知識人集会である日本学術会議の意見を取り入れているが、だんだんと意見を無視し、無根拠、また根拠の弱い安全性を誇示するようになったことに武谷は強い怒りを感じているように思えた。そこからこの本は始まっている。なぜ知識人の声は届かないのか。原子力については詳しくなかったが、戦後日本の抱える知識人の社会的役割という観点からこの本を読ませてもらいました。1976年の本だが、平成の原子力発電問題を考える上でもためになる本だと思った。

  • 原子力発電 (岩波新書 青版 955)
    武谷 三男

    もう一冊原子力の勉強のために読んだ本です。原子力の危険性の理解にはなりました。アポロの例がとてもわかりやすい。すなわち、安全性をほぼ100%を狙って各要素の確立を挙げていくと、厳しすぎる要求値になる。かつそれでも失敗は起きる。
    エラーを前提とし、トライ&エラーで安全性を高めていくという考え方が必要ではないだろうか。
    全体安全は無い。事故を起こることを前提に、起こっても対応できるようにするというのが良いのではないかと思った。

    ◯原子力発電の歴史
    ・原爆開発はロシアと米国が牽引
    ・世界初の原子力発電所は1954年のソ連5MWのもの。英国のコールダーホールが1956年、これが日本に輸入された。
    ・日本政府の原子力政策は外国の宣伝に煽られ、科学的根拠を理解せず右往左往してきた。
    ・安全性に対してきちんと評価されず、科学者が反対運動を起こすということが当初から起こっていた。

    ◯発電の仕組み
    ・核分裂を同時に多数の原子核で起こすと大規模なエネルギーを取り出せる。
    ・核分裂を起こすのはウラン235で、0.7%しかない、残りは238。濃縮しないと反応が連鎖しない。
    ・中性子発生源(ベリリウム)で周囲を包み、火薬の力で中性子を発生させる。
    ・重い原子核は核分裂を起こしやすいが短命。核燃料になりうるのはウランだけ。
    ・核分裂で発生する中性子と吸収あるいは外へ逃げていく中性子の数がバランスしたのが臨界状態。、
    ・ウラン258は中性子を取り込みプルトニウム239になる。毒性が強く原爆になりうるため、使いやすい。
    ・連鎖反応で蓄積された死の灰(核分裂生成物)が外へ出ないように閉じ込めている防壁は、燃料棒の薄いジルカロイのさや、高温で水蒸気と反応して水素を発生するため、1000度以上は危険。
    ・ウラン235が2/3ほど消費されたところで新しい燃料棒と取り替える。死の灰が溜まると中性子の吸収が大きくなり、被覆も痛むから。一年で1/3程度入れ替える。
    ・使用済み燃料は水中で100日放置して放射能を減少させ、ウラン235とプルトニウムを回収し、再処理工場へ送る。
    ・ピューレックス法は、燃料棒を濃い硝酸で溶かし、ウランとプルトニウムを回収する方法。

    ◯許容量
    ・放射線障害の危険さが明らかになるにつれ、徐々に許容線量が小さくなっている
    ・細胞の増殖が盛んな器官が放射線に敏感、絶えず血液細胞を作る骨髄、消化器官の小腸粘膜が弱い。
    ・放射線はDNAの螺旋構造を破壊する、修復されるDNAは元のものとは異なり、分裂時に障害を受け継ぐ
    ・放射線によるガン発生率の増加は線量に対して一定の割合で掛け算的に増加する。
    ・原子力発電は恩恵を受ける人とリスクを抱える人が異なる。

    ◯安全性
    ・100万kwの原発は3kg/日のウラン235を死の灰に変えている。
    ・1gのラジウムを基準にした放射能の強さを1キュリーとした➡︎370億個/sで原子が放射線を出して壊れている。半減期が倍なら0.1gで1キュリー。
    ・体内に取り込まれやすい放射性物質が危険、甲状腺・ヨウ素、Caに似て骨に集まるSr、Kaと同じ動き・Cs、
    ・職業人許容線量の1〜100兆倍の放射性が炉心内部に常時溜まっている。
    ・発電所の死の灰からのγ線(透過力が最も高い)でも、数百mまで。放射性煙霧に含まれる死の灰が影響大。
    ・一番の安全措置は距離
    ・100万kwへのスケールアップに際してECCS(緊急炉心冷却装置)に全てを託す方針がとられる。しかしこの有効性は卓上計算でしか示されておらず、かつ単純化したモデル上でしかない。
    ・ラムスッセンはfault tree分析を行ったが、設計や建設が全て上手くいっており、設計の欠陥や人間の誤動作は評価に入っていない。しかし過去の事故の経過や安全装置の要素分析が系統的にしらみつぶしになされて明らかにされた。
    ・アポロ計画では成功率0.9999となるよう同様にfault tree分析を行ったが、実際には故障続出だった。何度も手直しを重ねようやく0.96。
    各々の部品への要求故障率が1億分の1といった途方も無い数値となり、膨大な卓上計算の産物になったのが原因。
    事故の減少はテストを重ね、起こった事故の着実な原因分析とその対策に寄った。

    ◯二次利用
    ・プルトニウムは濃縮の必要がなく、10kg程度と爆薬があれば簡単に原子爆弾が作れる。
    ・10$/gと麻薬の数倍の値段で取引されており、アメリカの原子力関係施設では麻薬関係取引で辞める人が後を絶たない。
    ・長崎の原爆はプルトニウム5kg、1500万円あれば作れる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/702113

  • ①②

  • 温故知新。
    古い本だが、内容はいまでも変わらない原子力の問題を扱っているため、ためになると思う。

  • 1970年代に、p192「利用率80%で20年から30年仕えると考えてそろばんをはじいている」。p193ちょうど福島第一に関する利用率の数字がある。なぜ30年経って、廃炉にしていなかったのだろう。なぜ発電機の位置を変更していなかったのだろう。経済性の数字を示す必要性からなのだろうか。より具体的な設計に踏み込んだ、意見が必要だったと反省しながら読んでいる。

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