思想とはなにか (岩波新書)

著者 : 古在由重
  • 岩波書店 (1960年6月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004120025

作品紹介

思想というものは書物のなかにあるのではない。その本来の姿は、われわれの生活のなかにあって、時代や人間と結びついて生きている。この思想というもののありかたを、さまざまな側面からさぐりながら、ひとりひとりが行動の指針としての生きた思想を自己の内部にきたえあげていくために、どうすればいいかを考える。

思想とはなにか (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 「ある哲学者の軌跡 古在由重と仲間たち」を読んでこの新書の存在を知った。古書だけど取り寄せて早速読んで見た。その冒頭の論文を読んでみたかったからである。

    「歴史は創造的である。しばしばそれはたいくつな反復の日々であるようにおもわれるかもしれない。しかし、ときには、あらたな事態がすさまじい速さで全面へひろがりはじめ、やがてわれわれ自身をもそのなかに巻きこんでしまうことがある。このとき、現実そのものの発展ははるかにわれわれの計画と想像をこえ、その汲み尽くせない創造性をはっきりわれわれの眼のまえにあらわす。」
    「あらゆるおそれやためらいにもかかわらず、人をそのような行動へ決意させるものはなにかということである。」
    「これらはいわば客観的な事態にぞくする。しかしこれらだけでは、もちろん、まだ特定の意欲と行動は起こらないだろう。なぜなら、これらを特別な関心なしに見過ごすこともできるし、さらに同じ事態から現実逃避の態度も生まれるからである。重要なのはむしろ主体的条件、思想的な背景であるだろう。すなわち直接的には新憲法による戦後教育の力、これに基づく人権意識と平和意欲の成長であり、間接的にはやはり戦後の様々な闘争がもたらした成果である。あの怒りと悲しみは、すべてのこれらのものを踏みにじる非人間的なものにむかっての激情、抵抗にほかならない」
    「勤労するすべての人間の生命、自由、幸福への道はこの激情から出発する。それらを約束する未来へのビジョンも、まさにここからのみ生まれるだろう。このビジョンから、われわれの未来への正確な設計図が作成されなければならない。それに必要なのは冷厳な理知であり、科学の思考である。これによってのみ、たぎり立つ激情の花火はわれわれの進路を照らし出す照明となり、ひとつのたくましい思想となることが出来る。思想はーあつい心臓、つめたい頭脳を要求する。」(2-17p)

    この抜き出しのみ読めば、この前の反原発20万人デモについて書かれた文章のようにも思えるし、これから起こる沖縄県民の闘いのようにも思える。実際は、一千万にものぼった国会請願の著名数、30万人に達した国会前のデモに発展した1960年5月の安保闘争のことについて書かれた文章である。

    安保もその直後から(成立してしまったのだから)「負けた」という声が聞こえた。原発も稼働容認の自民党が圧勝したのだから、諦めが広がりつつあるだろう。がしかし、と古在由重は言うのである。

    あの激情はホンモノで、重要だった。そこから「のみ」、未来への設計図が作られるだろう。

    世の中のことをただ批評するだけで、実際に何のアクションも起こさないのだとすれば、60年安保の時に先生に止められながらも思わずデモの隊列に加わった女子高生に恥ずかしい。「思想は冷凍保存を許さない」。

    地震と同じように、我々の生きている現代、歴史は「激動期」に突入していると私は思う。かつて古在由重は周りの人民と共に「少数奮闘」した。これからはその教訓を生かし、「多数奮闘」出来るように「あつい心臓、つめたい頭脳が要求」されるだろう。
    2013年9月29日読了

  • 思想がどの様な状況で生まれてくるかを様々な事例を取りながら説明していく。

    パスカルやダンテを引きながら人間にとっての思想の存在について考えていく。

    安保闘争の時代の本なので、資本主義経済への批判が多くなっている。
    反対するのは良いが、識者はそれなりの改善策を提示してほしい。
    もちろん、多くの労働者が自分だけの思いに従って行う抗議には一定の意味があるとは思う。
    しかし、それだけでは国が回らないと分かるであろう知識業の人はそのことにも目を向けてほしい。
    おそらくマルクス主義が著者の考えている解決策なんだろうが...。

    最後の対談においては、何も考えないで素直に意思を表現できるのが良い社会だという実につまらない理想卿が語られる。
    まあ、その社会にもメリットはあるがつまらなすぎる社会だろう。
    個人的には是非住みたくない。

    また、文を読むのが辛く、先を読ませるような文の力を感じなかった。

  • 思想とは何か を読みながら 
    若いころ 一途で 必死だったことを 思い出した。
    1969年という時代に 
    私は 積極的に かかわりあいを持たざるをえなかった。
    無関心では いられなかった。

    そのとき、何を 日本のグランドデザイン としていたのだろうか?
    抽象的でしかなかった ような気がする。
    はっきりしていたのは ふたたび戦争への道は歩まない。
    平和であってほしい という ことだったのかもしれない。
    反戦 という ものではなく、平和主義なのかな。
    もっと、自分の内面に向かっていたような。
    ニンゲンらしく生きられる社会ができればいいと思っていた。

    そして 私の人生を どう設計するか?さえも
    考えていなかったような気がする。
    いまでは 農業をする ということの意味が 少しづつ
    理解されるようになった。

    1960年8月15日に 書かれた 「思想となにか」は
    戦争が終わって、15年という時期であるがゆえに、
    戦争の傷跡が 深く残っている。
    そして 明るい未来 というものに 
    少なくとも 夢があり共感があった。
    「閉塞状況」ではない・・・頼もしささえある。

    安保反対闘争に 拍手せざるをえない 女子高校生の純真な気持ちが
    みごとに 掬い上げられている。
    古在由重の時代のトレンドを見ようとする 素直な気持ちが
    なんともいえないほど ほほえましくも見える。

    転向について かかれた論文が 正しい というのは
    一体どういうことだろうと 考えさせられた。
    「弁証法的唯物論と史的唯物論」は 科学 である。
    キリスト教 の信者が 神を信じなくなるのは 
    信仰 であり、宗教だからだ。
    科学は 信じないことではなく、原理なのだ。
    だから、その原理に目を向けるか 向けないか であるのだが・・・
    古在由重が 今の時代を生きていたら どんなことを言うのだろうか?

    なぜか ゴツゴツ したものが 手触りとして残った。

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