ソクラテス (岩波新書)

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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004120193

作品紹介・あらすじ

ソクラテスはなぜ毒杯を仰がねばならなかったか。この問いは、知を愛するとはどういうことか、人間はいかに生くべきかという問題につながっている。著者は、最新の研究にもとづき、ソクラテスの生活、その啓蒙思想、ダイモン、哲学を検討するとともに、アテナイの情報を明らかにすることにより、この問題に肉薄する。

感想・レビュー・書評

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  • 古代ギリシャの哲学者ソクラテス(前470年頃~ 前399年)に関する、云わば入門書。
    ソクラテスと聞けば、むずかしい形而上学のイメージを抱く私である。だが、本書を読了し、その思想・哲学は実にシンプルなものであると知った。
    要約すれば、以下の言葉に尽きる。 
    「徳」そして「無智の自覚」。
    このふたつである。
    ソクラテスの生涯は、『徳』を追求し、その成就をめざすものであった。(自分自身がすぐれた者となり、よりよく生きる、正しく生きることを求める)。

    画期的な思想・哲学の体系を切り拓いた、というよりも、自分の理想に恥じない立派な生き方を全うした男なのだ。
    そして、その一方で、彼は問答法の名手であり、その手腕は「弱論の強弁」とも称された。足腰の弱い主張を、説得力あふれる明快な論理で補強するものだ。力づくの論理展開で相手を論破する技術だ。ただ、その問答は、ときに大いなる詭弁にも聞こえてしまう。ソクラテスのこの側面は、その後多くの政敵を生む一因になったようだ。
    さらに、ソクラテスはいわゆる「デルフォイの神託」以降、『無智の自覚』を追求。その道程で、本当の智者を探し続け、政治家や有識者らに次々に議論を挑む。ソクラテスは、相手を打ち負かしては、あなたは智者ではない、と宣告していたという。これでは敵が増えるのも道理である。
    本書には「ダイモーンに憑かれて」という章がある。この内容が、実に興味深く、驚きであった。
    プラトンの「ソクラテスの弁明」にもダイモーンの言葉が出てくる。ソクラテスを裁く法廷で、彼は糾弾される。
    ソクラテスの思想はダイモーン的なるものに毒されており、若い人を毒する恐れがある。さらには、国家社会の脅威でもあり、よって大いなる罪である、と。
    ダイモーンは“新しい鬼神”とも訳されていることから、私は英語の「デーモン」と同じニュアンスで受け止めていた。そして、ダイモーン的だとする批判と糾弾は、“体制への脅威として悪魔的なのだ” という文脈で理解していた。
    ところが、この章で詳述される、ソクラテスのダイモーン的なるものの実態は、文字通りの霊的な存在なのだ。
    ソクラテス自身は、若い頃から、神がかり的な状態や幻覚を頻繁に経験してきたという。こうした神秘体験を通じて、ソクラテスは神の声を聞き、それに従っていた、というのだ。これは、大いに意外であった。知らなかった。 
    本書では、そのほか、ソクラテスの生きた時代のアテナイ国家をとりまく国際情勢や、国内政治の状況も解説していて、ためになる。 文章も比較的平易で読みやすい。良い本である。

  • デルポイの神託は告げた。「ソクラテスよりも智慧のある者はない。」しかしソクラテス自身には自分を智者であるとみなすことなどできない。――愛智者ソクラテスはなぜ刑死させられねばならなかったか。そして本当の哲学(愛智)とは何か。歴史的ソクラテスをたずねながら、その答をさぐる。たぶん、現代のぼくたちもみな、ソクラテスを死においやったことがあるのです。

  • 概説書としてそつなくまとめられている。ソクラテスがここまでプラトンだったことすら今まで知らなかった。そういう事情のためこの本では歴史的アプローチが大きめでした。

  • [目次]
    1. 何をどこまで知ることができるか
    2. 生活的事実
    3. 啓蒙思想の流れに
    4. ダイモンに憑かれて
    5. デルポイ神託の謎
    6. 哲学
    7. 死まで

    [「はしがき」より]
    いわゆるソクラテス問題は、ギリシア研究者の間にあっても、難問題の一つとして、既によく知られている。ほとんど一体化されているプラトン的ソクラテスのうちから、いわゆる歴史的ソクラテスを区別し出すことは、技術的に極めて困難だからである。全面的否定もしくは全面的肯定の、極端論はむしろ安易な行き方であって、その間のいろいろな可能性を、実際にためしてみるのが、かえってむずかしいことなのだと思われる。

    かれの生死と言行は、プラトンを始めとする、かれの直弟子たちにとっても、既に謎だったのではないかと思われる。そしてそれ以来、今日に至るまで、かれは依然として問題の人なのである。ヘーゲルとキェルケゴール、ミルとニーチェでは、正反対の解釈と評価を受けている。

    わたしは読者が直接に、プラトンの「ソクラテスの弁明」「クリトン」「パイドン」「饗宴」など、いわゆるソクラテスの四福音書を読まれることをすすめたいと思う。わたしのこの書物は、プラトンのこれらの著作への前書き、あるいは補注のようなものであって、法廷におけるソクラテスや、かれの死の場面を、誰もプラトンほどに書くことはできないであろう。

    この書物を、無論、わたしは一般の読者のために書いたのであるが、しかし全篇は、わたし自身の研究と解釈にもとづくものである。

  • 50年以上前に書かれた本である。図書館のリサイクル市で手に入れた。柄谷さんの「哲学の起源」を読んで、ソクラテスを読む気になった。残念ながら、その哲学にぐっと引き付けられるものがなかった。通勤途中で読んでいたりで、字面だけ追っている場合もある。私の読み方が浅すぎるのかもしれない。割と読みやすく書かれていると思うのだが、そのためかあまり深く読み込めなかった。「無知の知」のことと、ダイモンのこと、どうして逃げようとせずにそのまま毒を飲んで死んだのか、そのあたりのことはある程度わかったように思う。それと、どうでもいいように思うが、ソクラテスがけっこう性欲が強かったらしいということ。生活的事実については哲学を知る上で必要だったのかどうだかわからないけれど、どうも時代が古すぎて、イメージがしにくい。最近テレビで見た映画「テロマエロマエ」くらいの感じで思っておいてもいいのだろうか。

  • ソクラテスの入門書に当たる作品。

  • ソクラテスというと昔の哲学者というイメージだけだったが、この本を読んで人間らしさが感じられた。また自分の考えに純粋に従って死さえも避けなかった。難しい話を極力偏らずに書いているので、比較的わかりやすかったと思う。

  • 50年以上前に初版が出てるんですね、まさにロングセラーですね。

  • プラトンの著書の副読本らしい。

    ソクラテスの人となりを明らかにしようとしているが、
    第一章のタイトルにある通り完全に理解は出来ないとしている。

    議論をふっかけ相手の考えを否定しまくった人だと聞いていたので、
    嫌なジジイだなあ。という印象だったが、それは物事を深く追求し、
    お互いの徳を高めるための行為だったことが理解できた。
    もといなんとなく分かったような気がする。

  • ソクラテスはなぜ毒杯を仰がねばならなかったか。この問いは、知を愛するとはどういうことか、人間はいかに生くべきかという問題につながっている。著者は、最新の研究にもとづき、ソクラテスの生活、その啓蒙思想、ダイモン、哲学を検討するとともに、アテナイの情報を明らかにすることにより、この問題に肉薄する。

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