- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004120438
感想・レビュー・書評
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ヴェトナム戦争についての著者の発言をまとめた本です。
本書の冒頭に置かれた「同時代のこと―序に代えて」というタイトルの文章で、著者はジョン・リードの『世界をゆるがした十日間』が、ロシア革命の現場に立つジャーナリストの視点から同時代の世界史的な動きの本質が見事につかみ出されていることに触れています。そして、バルザックの小説のうちにフランスの歴史的な意味を孕んだ「現在」が描き出されているとマルクスが称揚したことを参照し、黄昏時に飛び立つミネルヴァのフクロウとして歴史を語るのではなく、同時代に生きるジャーナリストの観点から深く現実を把握することの重要さを論じています。
これに続く著者の発言は、そうしたジャーナリストとしての矜持に基づいてなされたものと見ることができるように思います。もちろん後年になって本書を読むわれわれには、著者の叙述のさまざまな点に疑義をさしはさむことは可能でしょう。しかしながら、「同時代を論じる」という困難な課題に立ち向かった著者の態度には、現在でも学べるものが多いのではないかと感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
毎週行っている図書館の「リサイクル図書」のコーナーを覗いた時、目についたので手に取ってみた本です。
著者の吉野源三郎氏は、雑誌「世界」の初代編集長で、名著「君たちはどう生きるか」の著者として有名ですね。
本書のタイトルにもなっている「同時代のこと」をテーマに論じている巻頭の「序にかえて」の章は圧巻です。
さらに、序に続く本編は、同時代の歴史的事象としての「ヴェトナム戦争」を材料にした吉野氏の講演や論文等を採録したものですが、当時の吉野氏の強烈な信念に裏打ちされたエネルギッシュな姿が眼前に広がるようです。「君たちはどう生きるか」での穏やかな語り口とはまったく対照的な筆致には気圧されました。 -
今もってアメリカはヴェトナム戦争の影を引きずっているのだと思う。この書を読んで、ヴェトナム人の民族の解放と自主独立を想う比類なき強い心とホー・チミンの偉大さを知った。
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[ 内容 ]
同時代のこととして進行中の歴史的出来事をとらえる場合、どのようにして現実を認識し、肉迫するか――。
アメリカの強大な軍事力をもってしても打ち破れなかったヴェトナム民衆の不屈の意志の意味を明らかにしながら、一つの時代が終わった過渡期に生き、真に明日の時代を予見するとはどういうことかを、理性と情熱をもって語りかける。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
はっきり言って、名文とは思うが、あまりに情緒的過ぎる。
ベトナム戦争を外部から俯瞰し、かつマスコミ情報の批評に
終始しているように思われた。
彼の戦争は、決して外部から見るものではない。
開高や澤田や近藤、トゥイーやレ・カオ・ダイのように
実体験がないと語れないように思う。
その点では、べ平連の小田実と同軸にあるのではないか?
せめて沢木のようにベトナムを歩いていれば、また違った
視点が持てたのかも知れない。
ただ、本書のタイトル、同時代のこと これに目を背けては
いけない。
わが国がいま混沌とした状態であればこそ、いま目の前に
ある状況を深く洞察していくべきだ。 -
有田芳生さんの本棚より
未読 -
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「君たちはどう生きるか」の吉野源三郎の本。雑誌「世界」の編集者の視点から自分の生きる時代を未来に向けてどうとらえるかについて。