社会心理学入門 (岩波新書 青版 305)

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  • / ISBN・EAN: 9784004120612

作品紹介・あらすじ

付: 参考文献 213-218p

感想・レビュー・書評

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  • 分類ばかりで、メカニズムの解明、説明がなく、内容に不満。
    でも、社会科学はそういうものなのかも。

  • 【目次】
    はじめに 001

    I 欲求 006

    II 社会行動の基本的なかたち 021
    協力 022
    対立 029
    逃避  033

    III パーソナリティー 037
    パーソナリティーの構造 037
    パーソナリティーの形成  040
    集団的習性 045

    IV 対人行動  054
    一体化、同一化 055
    役割学習 059
    コミュニケーション 061
    共感  067
    模倣 070
    暗示 073

    V 集団行動 079
    集団 079
    一、統制行動 086
    風習 087
    慣行 089
    規範 099
    流行 100
    二、非統制行動 111
    群衆行動 112
    乱衆行動 118
    心理伝染 123

    VI 集団態度 127
    集度と集団態度  127
    集団態度の種類 130
    集団意見 138
    世論 148

    VII マス・コミュニケーション 153
    一、パーソナル・コミュニケーションとマス・コミュニケーション 153
    二、コミュニケーションの歴史 156
    三、マス・コミュニケーションの機能 161
    報道 162
    教育 164
    宣伝 166
    娯楽 175

    VIII 社会行動の体系 188
    体系 189
    制度 189
    人間関係 190
    パーソナリティー 194

    IX 現代の社会心理 205

    参考文献 213
    索引

  • マスコミュニケーションの発達は資本主義の産物。
    新聞の見出しだけをざっくり読む読者とか、報道の娯楽化・芸能化なんて、今のインターネットニュースでも普通に扱われる話題だと思う。

    あと全体としての印象は、大学の一般教養の授業でサブテキストに指定されてそうな感じ(笑)。

  • 広報や広告関係の文章を読んだり、そういった仕事をされている方と話したりする中で、何が人間に行動を起こさせるのかに関心が沸きました。
    そこで社会心理学という学問を発見し、基礎知識をつけようと読んだのがこの本です。

    (本文は社会心理学のあらゆる知識を並列しているような印象です。要約はほぼ本文の転記になってしまいそうなのですが、自分のメモ変わりに文末に載せます。)


    社会心理学の重要な要素であるはずのパーソナリティの記述が曖昧なように感じます。
    本文では、第3章と第8章にパーソナリティに関する記述があります。

    第3章では
    >性格と能力と気質との独特の組み合わせ、型どりであるパーソナリティ
    >パーソナリティを型どる性格と能力と気質には、それぞれ、生理的な要素が強い面と社会的な要素が強い面
    とがある。

    と性格・能力・気質の3つがセットとなっているのに、

    >性格について言えば…社会欲求…能力は、社会的能力である。

    と気質について触れられず、

    >感情にも…社会感情…

    と感情の話にずれています。

    >感情と情動の起こり方や強さにも。個人差が見られる。それをひとまとめにして気質と呼ぶ。

    とあることから、感情≠気質です。

    また、第8章では
    >社会感情はパーソナリティとイデオロギーを結びつける心理的な場である。

    となっていて、やはり社会感情はパーソナリティを形成する構成要素ではないことが分かるのですが、「では気質はどうなったの?」というと私にはそれに触れられた記述が見つけられませんでした。

    第8章末に
    >社会欲求、社会的知性、社会感情の複雑な組み合わから、パーソナリティの社会的習性が生まれる。そうして、社会的習性が様々なかたちで組み合わさった型どりとして、社会成員のパーソナリティが作られる。

    とあります。
    まず、第3章には
    >習慣のいくつかが組み合わされて…その人に特徴的な行動傾向が生まれてくる。それを習性と呼ぶ。

    という記述があることから、習性は習慣から作られるはずです。
    にもかかわらずここでは習性が社会欲求と社会的知性と社会感情から構成されているように書かれています。
    そこで「普通の」習性と「社会的な」習性を分けて考えなくてはいけないのかと考えてしまいます。

    また、仮に習性を置いておいたとしても、社会成員のパーソナリティとは個人を超えて社会単位で持つパーソナリティ=社会が個人のように持つパーソナリティだと私は捉えたのですが、その構成要素が個人のパーソナリティの構成要素である性格、能力、気質とずれているのが変な感じがします。

    結局は個人で当てはめていたことをそのまま社会に対応する形で説明できない、というのが結論なのでしょうか。


    他に気になったのは集団行動の部分で述べられていた防衛的乱衆態度と攻撃的乱衆態度の記述です。
    まさに買い占めやネット上の批判合戦と対応する内容だと思います。
    しかし、買い占めに関してはネット上では買い占めしない宣言及び呼びかけが主流だったように感じました。
    対して批判合戦に関してはデモなどの実際の行動が起こっています。
    実際の行動とネットを介した行動でこれらの乱衆態度に違いは見られるのかが興味があります。

    ネットといえば、マスコミュニケーションの部分で触れられていた
    特徴に基づくとネットの利用によってパーソナルコミュニケーションは拡大していると捉えられます。
    しかし、そのパーソナルコミュニケーションも、実際のコミュニケーションとネットを通じたコミュニケーションで違いが見られるのかが気になります。

    補足として書いておきますが、私は決してネット対リアルのような対立構造を作りたい訳ではありません。
    ただ、インターフェイスが変わることによって行動にどのような変化が現れるのかに興味が有ります。



    ★★★

    はじめに

    社会心理学とは、
    ・集団内行動…集団内に入ることで現れる個人の行動
    ・集団行動…集団が共通にとる行動
    ・パーソナリティ…生活環境により形成された個人の特徴の総体
    を心理学的方法で研究する学問である。

    1欲求

    人間には複数の欲求のあり方がある。
    また、生理的欲求と社会的欲求があり、社会的欲求として
    ・労働の欲求
    ・協力の欲求
    ・集合の欲求
    がある。
    これらから派生して以下の欲求も生まれる。
    ・集団性の欲求…集団的行動を取りたがる欲求
    ・自我実現の欲求…自我承認
    →自我表現
    →自我拡大…蒐集欲、私有欲、名誉欲
    →自我優越…競争、攻撃
    の順に現れる欲求。

    2社会行動の基本的形

    社会行動は以下の3つに大分される。
    ・協力…この行動は
    合力
    →助力…一人で出来ない仕事を多数で可能にする協力
    →分業
    のように発達してきた。
    次第に直接的協力より間接的(顔を合わさない)協力が増加し、人間の部品化が起きる。これは過剰なビューラクラシーによる官僚主義の特徴である。
    結果として責任回避や社会的無関心が発生する。
    ・対立…競争、攻撃の2つに分けられ、それぞれに直接的/間接的なものがある。
    ・逃避…社会生活から身体ごと逃れる孤立、欲求不満を解決するために非現実世界や現実の別の面に逃れる逃避がある。

    3パーソナリティ

    パーソナリティは
    ・性格…欲求への対処の個人的特徴
    ・能力
    ・気質…感情の起こる傾向。
    から形成される。
    それぞれに社会的要素の強い面(社会欲求、社会的能力=社会的知性、社会感情…他人との関係から生まれる感情)がある。
    家庭、職場などを通じて身につけた習慣や、習慣が組み合わさった行動の傾向である習性からパーソナリティは形成される。
    習性の背景には自我があり、非常時や環境変化に自我が耐えきれず失神や分裂を起こすことがある。

    4対人行動

    対人行動は以下のように発達する。
    一体化、同一化…同一化には
    ・取り入れ…無意識に他人の習性を取り込む。
    ・投射…自分の中にあるものを他人が持っているように思い込む。
    がある。
    →役割学習…人の身になる体験。
    →コミュニケーション…記号、シンボルによる表現と交換であり、パーソナル/マスの2つがある。

    →共感…他人の役割を自分に重ね合わせる共感に理解・価値判断が加わると同情になる。
    →模倣…そのまま模倣する全体模倣(直接模倣、間接模倣…手本を記憶し再現)と一部を真似て代表させる部分模倣がある。
    →暗示…覚醒暗示と催眠暗示がある。暗示者の威光や技術、被暗示者の被暗示性と被催眠性に影響される。

    5集団行動

    集団の条件には
    ・行動空間…部分/全体
    ・行動時間…一時/永続
    ・行動目標…利益/共同
    ・組織関係…統制/非統制、公/私
    統制には
    風習…強制力が弱い。
    慣行…ある程度の強制力を持つ。呪術、非合理的慣行であるタブーなど。
    規範
    流行…目的を持ち、一斉に一定期間一部の集団が同行動をとるように強制されること。中間層に訴え、自我拡大や逃避などの効果がある。マスの発達により過剰供給が問題となっている。
    人気…人間の流行。
    などがある。
    非統制行動には
    群衆行動…条件には
    *行動空間
    *一時的行動時間
    *一時的行動目標
    *無組織化
    などがある。
    群衆の巨大な力を自分も保有する意識を持つ。これは互いに強め合い、無批判的、非理性的になる。
    乱衆行動…
    *防衛の乱衆行動…自我意識が強まり、無批判的で無責任な行動をとりやすい。反響行動により広まりやすい。
    *攻撃の乱衆行動…劣等感、欲求不満がある場合が多い。無責任性、無批判性を伴い自我拡大を感じる。
    心理伝染…間接的伝染。乱衆と似た行動を示す。
    ・コミュニケーション関係…パーソナル/マス
    ・心理関係
    がある。
    人間は社会行動にあたり、行動に規準を与える規準集団を持つ。

    6集団態度

    集団態度とは集団意識を共有した集団の、価値判断を含む個々の事象への行動傾向である。
    態度には以下のようなものがある。
    ・群衆的態度…一時的、非合理的態度。
    ・先入態度…繰り返し固定化した態度。・偏見態度…理論化された先入態度。
    ・常識態度…全体社会において大部分が納得する論理に基づく態度。
    集団態度は集団意見として表現される。
    世論や全体社会に広がるデマもその1つである。デマは客観的、心理的全体社会の非常時に安定感を求めて発生する。
    社会意見は伝聞時に平易化、強調、同化が起こる。

    7マスコミュニケーション

    マスコミュニケーションの特徴は
    ・広範囲への開放性
    ・水平性
    ・ボトムアップ性
    ・同時性
    ・相互性
    などがある。
    その機能に
    ・報道…機関は読者の知的水準向上を目指し、民衆意見発表の場となる。
    ・教育…受け手のパーソナリティに影響を与える。さらに特定の態度、行動にとらせると説得になる。
    ・宣伝…受け手に一定の行動や態度をとらせる組織的コミュニケーション。
    原則として
    *注意喚起
    *わかりやすい
    *強印象
    *誇張
    *反復
    *嘘
    *威光の利用
    *無意識に訴える
    *暴力性
    *受け手考慮
    などがある。
    政治宣伝/商業宣伝があり、後者は広告とパブリシティに分けられる。
    ・娯楽…大量性、等質性、規格性、思想性、媒体横断性、流行性、中毒性といった特徴がある。
    技術、体制、国民性、人類普遍条件なでに役割が変化する。
    パーソナルに比べて受け手の積極的受け取りが少ない。

    8社会行動の体系

    集団内行動及び集団行動を社会行動という。
    機能的に分化された群れを制度と言い、人間関係(組織関係、コミュニケーション関係、心理関係)を含む。これはパーソナリティを規定する。
    パーソナリティを構成する社会的知性は、集団的立場に立った主張観念体系であるイデオロギーと社会意識にわけられる。
    社会感情はパーソナリティとイデオロギーを結びつける心理的な場である。
    社会欲求、社会的知性、社会感情が組み合わさり社会的習性が生まれ、それらから社会成員のパーソナリティが形成される。

    9現代の社会心理学

    ビューロクラシーは人間関係を合理化するが、非合理的習性により自己破壊が起こる。
    また、孤立化が進み他人との一時的交渉が増加する接触過剰が孤独感を生み出す、社会感情の特徴となる。これはマスコミュニケーションで強化される。
    独占資本主義社会では大衆が生まれる。
    条件に
    ・経済
    ・政治
    ・技術
    ・生活行動
    ・精神行動大衆
    があり、資本主義下では
    ・欲求不満
    ・社会意識混乱…中間層意識が規格化、等質化され不安定になる。
    ・不安…自分/社会環境の関係の不確実感、自己疎外感。
    ・パーソナリティ分裂
    社会主義下では
    ・欲求不満
    ・イデオロギー強制
    ・不安
    ・パーソナリティ固定化
    などが起こる。

    社会心理学は全体者かにおいて人間的交流を実現させるための研究である。

    ★★★

  •  
    ── 南 博《社会心理学入門 19580319 岩波新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4004120616
     
     南 博 社会心理学 19140723 東京 20011217 87 /一橋大学教授/東 恵美子と別姓結婚
      
    (20110226)

  • 個人の性格や人格の説明から社会一般の構造や説明まで。
    前半は社会心理学や一般心理学で用いられている用語の説明が豊富。
    専門用語とはいいつつ、普通に日常で使われている言葉も多いので正確な定義は知らないと誤解を招くと思った。
    後半はいよいよマスコミや社会構造の分析に入るが少し難しく感じた。
    出版されたのはかなり昔だが、
    マスコミなどについて書かれていることは現在もそれ程時代遅れというわけでもなく、
    現代でも同じような分析がなされるのではないだろうか?

  • 1人だといい人なのに、集団になると途端に悪行を働き出すのは何故なのか? それは全て「集団心理」というもののなせる業。
    本書は社会という関係性の中での人間心理を解説している。
    よくあたる占い師の占いが、何故よくあたるのか。そのトリックの答えがちょこっと書いてある。

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著者プロフィール

ジャズ・ピアニスト、作曲家、エッセイスト
1960年東京生まれ。1986年東京音楽大学器楽科打楽器専攻卒業。
ピアノを宅孝二、クリスチャン・ジェイコブ、スティーヴ・キューンに師事。1988年バークリー音楽大学から奨学金を得て渡米。ボストンを拠点に活動する。1991年バークリー音楽大学パフォーマンス課程修了。1990年代からはスイス、フランス、ドイツ、デンマークなどに活動の範囲を拡げ、ヨーロッパのミュージシャンと交流、ツアーを敢行。国内では自己のグループ「GO THERE」をメインに活動、綾戸智恵、菊地成孔、ジム・ブラック、クリス・スピード、与世山澄子との共演でも知られる。
文筆にも定評があり、著書に『白鍵と黒鍵の間に──ジャズピアニスト・エレジー 銀座編』(小学館文庫)、『鍵盤上のU.S.A.──ジャズピアニスト・エレジー アメリカ編』(小学館)、『マイ・フーリッシュ・ハート』(扶桑社)、『パリス──ジャポネピアニスト、パリを彷徨く』(駒草出版)がある。

「2021年 『音楽の黙示録 クラシックとジャズの対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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