ことばと文化 (岩波新書 青版 858)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004120988

作品紹介・あらすじ

文化が違えばことばも異なり、その用法にも微妙な差がある。人称代名詞や親族名称の用例を外国語の場合と比較することにより、日本語と日本文化のユニークさを浮き彫りにし、ことばが文化と社会の構造によって規制されることを具体的に立証して、ことばのもつ諸性質を興味深くえぐり出す。ことばの問題に興味をもつ人のための入門書。

感想・レビュー・書評

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  • ことばの背景には必ずそのことばのもつ文化がある。だから、他言語に同じような言葉があったからといって、一対一で翻訳できるわけではない。動物の例が出ていたが、なるほどと納得するところがあった。また、後半では、一人称、二人称等の概念について述べてあるが、こちらも納得。自国、他国ともに文化を知り、言葉を知らなくて、翻訳などはうまくできないだろう。生理的に嫌悪感をもたらすような言葉遣いをしてしまう事もありうるわけだから。
    まずは日本語について知るには、文豪の作品を読むといいかもしれないとこの本を読み終えて感じた。

  • 日本語と英語。
    同じ概念を表すように見える言葉でも、違いがある。
    そのことばの表す範ちゅうの違い・・・その違いがどこから来るのか・・・。
    ことばの問題は、そのことばを母語とする人々の文化にもかかわる。

    この本の中で言語学的に特に注目すべき点は、親族名詞の使用ルールをきちんと体系化したところ。
    たとえば、「父」にあたる人は「息子」とは呼べないけれど、「息子」にあたる人は「お父さん」という呼び方をするとか。
    そういう制限のことをキチンとまとめている。

    日本語がいかに上下関係を意識した言語かっていうことが親族名詞を見ることでもわかる。
    それがそのまま、日本人の思考を表してて、言語の面白さを再確認させられた本。

  • 書かれたのが1970年代ということもあって日本と外国の対比に ん?と思うところも何箇所か出てくるけどそれでも読みやすいし言ってることもわかりやすい。言語学ってこういうものなんだろうなーっていうのがわかる。言語学全体を全然知らないから何ともわからないけど。

  • ♠共時的展開と通時的展開、種の基準と比較基準と期待基準と適格基準と人形の基準、呼格的用法と代名詞的用法、虚構的用法など様々な具体例を挙げながら外国のことば、そして日本のことばを分類していて分かりやすかった。
    ♠本文では触れていなかったが、愛憎を表す呼格の比較文化的研究というのも面白そうだと思った。(可愛い子について日本では猫かわいがりと言うが海外では豚の子と表すところもある、など)
    ♠ことばの「意味」をことばで伝えることは不可能だけれど、「定義」はことばで伝えられるというのはなるほど〜と思った。(本文の例を引くと、”渋い”ということばは説明出来ないが”未熟な柿を食べた時の舌のさすような感覚”といい伝えることは出来る)

  • 今後も何度か読み直したい本。
    外国語を勉強しているとどうしても不可解なもの(言葉やルールなど)が出てきて、それに気持ちが引っかかって勉強する気が失せることがある。
    この本で「それは文化も違えば言葉のルールも違うから」と気付かされた。人間にとって言葉は万能のツールのようなものだと無意識に思っていたけれど、その固定概念を覆される。
    「そうだったのか」の連続でどんどん読み進めてしまって、くせになる。
    「言葉は生き物」と言われることにより深く納得できる。本当にDNAみたいだ、と思った。

  • 言語のシニフィエには社会的コンテクストによって左右される要素が多い。
    辞書に書かれた意味とは有る意味で死んだシニフィエなのだろうか。

    この著者は社会と文化の立場から”ことば”を研究した社会言語学者だ。
    内容も面白く、読みやすい。
    しかしこの本で興味が湧いた人には社会学が向いているのかもしれない。
    そしてこの著者も社会に囚われ過ぎている感じがする。
    言語学を学ぶなら著者以外にも多くの言語学者の著作を読まなければならない気がする。

    誤解のないように書くが読み物としてはとても良い本だ。
    だけれども、言語学に興味があるなら時枝誠記、池上嘉彦、外山滋比古、ソシュール、デリダ、ハイデガーなども併せて読むべきだと思う。

  •  
    ── 鈴木 孝夫《ことばと文化 19730521 岩波新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4004120985
     
     鈴木 孝夫 言語社会学 19261109 東京 20210210 94 /慶応大名誉教授
    …… 慶応大医学部から文学部に転じ、イスラム研究の権威で言語哲学
    の井筒 俊彦に師事。米エール大など欧米各国の大学で研究員や客員教
    授を務め、慶応大教授、杏林大教授などを歴任。
    https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/329372
     
    (20210218)
     

  •  文化に対する言語の影響を独自の視点から論じた,この分野の書物としては古典中の古典と言ってもよいものでしょう。大学生のときに一度読みましたが,約20年ぶりに再読しました。一度目の読書の記憶は皆無と言って良いので,ほぼ初見という印象です。
     書かれたのが40年以上前ということと,私がこの分野が専門に近く,それなりの背景知識を有していることの2点を踏まえて言うならば,かなり独自の論陣を張っているなという印象です。言語相対論という名称で知られている,言語が事象の認識に対してどのような影響を与えているのかを研究する分野にかんして,教科書的な内容でなく,鈴木氏が独自に研究・調査して得られた観察や知見が本書には多く盛り込まれています。この点では,この本はこの分野の通り一遍の知識を身につけるには適してはいないと思いますが,鈴木氏の観察眼には感心させられますし,なるほどと思わせる記述がいくつもあります。
     難点を挙げると,話があっちこっちへ飛んで一つのトピックを一貫して論じていないことがままあり,まるで鈴木氏の講演を聞いているような印象を持ちました。しかし,これは著者の伝えたいという気持ちがほとばしっているとも取ることができます。鈴木氏のあふれ出る好奇心・探求心から様々な文献を渉猟し考察した結果が生き生きと記述されており,難点を差し引いても一読に値します。

  • 第六章が大変面白かった。日本人の言語文化から考える、「自己規定の対象依存的な構造」による日本人の性質。「相手に同化し、甘えることに慣れている日本人は、つい自己を相手に投射し、相手に依存する。そして相手もまたこちらに同調してくれることを期待してしまう」

  • 以前から興味を持っていた分野。
    英語を勉強しながらいつも疑問に思っていたことが、目から鱗が落ちるように解決し、また自分の中でこうではないか、と考えていたことが専門家の意見と一致していたりして、とても収穫があった。私自身、英語で話そうとすると思わず単語帳の訳と自分が言いたい日本語の文章とを照らし合わせてしまうのだが、それでは間に合わないどころか、相手に全く伝わらないことがある。例えば join は中学生で習う基本単語で「参加する」だが、どちらかというと新しく入るイメージだというのは、ネイティブの先生に教えてもらってつい最近知った。つまり団体への協力や大会への参加には使えない。
    やはり言葉は生きているから、なるべくその社会の中で使ってこそ、本当の意味が分かるのだな、ということを学ぶことができた。

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著者プロフィール

1943年岩手県生まれ。三菱系エレベーター会社を経て1967年に独立創業し、鈴木エレベーター工業(現在のSECエレベーター)を1970年に設立。独立系エレベーター保守会社という新しい業態を日本に誕生させる。エレベーターの構造を知り尽くす「技術屋」で、ビジネスの面でもエレベーター業界の風雲児として活躍する。

「2017年 『技術屋が語るユーザーとオーナーのためのエレベーター読本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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