ヨーロッパの言語 (岩波新書 699)

  • 岩波書店 (1993年2月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784004121039

みんなの感想まとめ

ヨーロッパの言語に関する深い知識と歴史的背景を探求する本書は、ラテン語を中心に各国の言語の特徴を詳しく解説しています。著者の専門的な視点から、言語の進化や構造の違いが明らかにされ、特に格変化や前置詞の...

感想・レビュー・書評

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  • 読書案内→言語の構造、言語生活、印欧語における数の現象、ラテン広文典

    《はじめに》
    ・ヨーロッパの起源はギリシャ!その影響はニ種類

    一、西へ向かいローマを経由して北海、エルベ河に達し、一部はイングランドまで。
    西欧的な洗練さがあり、自由の長い歴史と、進取の精神があり、改新の経験の累積がある。法の遵守の精神も強い。文明語化が早い

    ニ、バルカン半島から北へ向かい、スラブ諸族の間に浸透。文明語化が遅い
     
    ・英語ほど形態法が簡素化したヨーロッパの言語はない
     英語は格変化がほぼない変わりに前置詞が多い
     度重なる異言語の侵入と支配、ノルマン・コンクエスト時代にフランス語の下にもっぱら英語は低層社会に放置されたから
     ドイツ頃は簡素化の途中→四格制になり前置詞の使用が増えた
     名詞がもつ性・数・格のうち最も消えやすいのは格

     印欧祖語dhe- →英語だとdo 仏語だとfaire

     印欧祖語からゲルマン語への変化法則 
     ex)tの後の母音にアクセントがあるとき、dになる(ヴェルネルの法則)

     -ingは一定の土地またはモノに関係する人のことを親愛や侮蔑の意味を込めて「江戸っ子」のように呼ぶときに使う。Vik(入江、湾)-ing

    《格について》
    ・具格ーー随伴、または手段を表す。更に派生して、様相的な「〇〇として」、仮託的な「〇〇の形を借りて、一時期は〇〇である」 ex)He is a soldier の「兵士」が具格ならば、適訳は「彼は、かつて兵士だった」

    《印欧祖語について》
    母音交替の現象:基本母音eはoに変わるし、消えることもある ex) stei-. stoi-. sti-  p27

    位置を表す位格があった p40

    最も古い形-er-から派生した-or-や-ar-は英語のwart"er"の語源でありその役割は三つ
     一、そのものの生々とした運動性を示す
     二、 物質であることを明示する
     三、親族関係を表す

    長母音はもとはeを含む二重母音だった  
    すなわち、ē=eH1、 ā=eH2、ō=eH3と理解できる。

    語根の究極的な形は「子音+基本母音e+子音」。語根が母音で始まるように見える場合でも、実は前に小さいHで示してよいような軽い喉音的な子音があった。
     このHは3種類あり、H1e=e、H2e=a、H3e=oとなった。このHは非常に消えやすいので、印欧語が分かれて以降、現れなくなった

    《ラテン語について》
    起源 イタリア中原のラティウムにいたラテン族の言語がもと

    語頭にgnという2つの子音があるとき、gが消える p30

    接尾辞-a-は動詞に反復的・持続的な意味合いを添える
     ex)dīcēre(言い渡す)とdīcāre(朗読する) p31

    もともとvは/w/に近い音だった→vがfとはっきり対になるのは俗語ラテン語以降。

    昔は/u/も/v/の発音も共にuと書いた。大文字の場合はVと書いていた
    ルネサンス以降、ラテン語の/u/は、母音としてはu、子音としてはvと書き分けられた. p78

    印欧語のgw-はラテン語ではv-として現れる

    後期俗語ラテン語になると、主格、対格、奪格だけになり、どの格変化においても《母音+m》になった。しかしこのmは紀元一世紀には完全に消えた。
    例えばmūrumはmūru となり、語尾のuは西部ロマン語では一般にoになった。 p142

    奪格の意味は多いので、区別するために前置詞を使うようになり、奪格それ自体は意味をなさなくなり、ただの前置詞の後につく「前置詞格」になった。
    属格も同様。前置詞に意味が吸収される。その前置詞はdē(〜より、〜から)。
    exが(〜の中から)、abが(〜の側から離れて)であるのに対し、dēは、本質的・本来的に結合されてあるべきものから離れること。つまり、より親しい密接な関係から離れることを意味する。
     ex)指輪が指から離れる、子が母から離れる

    《ケルト語派について》
    ・語頭のpがよく落ちる

    《言語的ヨーロッパ》
    ・ヨーロッパの多くの言語は、動的に把握すべし!
     natureは「自然」ではなく「生み育てる」「生んで成す」こと
    ・ヨーロッパの言語の知的水準は主にラテン語のおかげ
    ・前置詞は、格変化よりも偶然性、分離可能なものといった雰囲気が強い
    ・語順が変わること=語の品詞順が変わること=意識において言葉の繰り出し方の順序が変わること=内面的な言語意識の働きの変化
    ・p46-47 ローマのガリア制圧、ゲルマン民族のガリア侵入について

    《南イタリアのギリシャ語》
    ・ローマが分裂して以降、西ローマの知的水準は下がり、ギリシャ語の読み書きも減った。14世紀までこの下落は続き、ギリシャ語の知識は全く失われた。しかしペトラルカやボッカチオのホメロスや古典ギリシャ語への熱意より、古典ギリシャ語の研究が本格化する

    ・「不定法」(英語のto不定詞)ー印欧祖語にはなかった用法。各々の言語が独自に、他の同系の言語とは無関係に発達させた文法現象。
     起源は動詞ではなく動作を表す名詞(行為名詞)。印欧諸語においては、その昔、目的を表す与格で書かれていた。

    ・「不定法付きの対格」ー目的語の文に「対格+不定法」があること
    「人が〇〇する、とみんなは言った」の文は「言った」が主動詞でその目的語は前の文である。すなわち「人が〇〇する」。この「人」は対格で示され、「〇〇する」は不定法で書かれる

    ・不定法と冠詞の発達はギリシャ語が最も早かった

    ・ギリシャ語の「中動相」ー動詞の変化の一つ。その動詞の主語の行う行為が主語自体に帰り、または主語自体のために行われることを意味する。使い方によっては受動相と被るので、融合していった。
    ex)洗うの中動相形loùomai の意味は「私は私自身を洗う」

    ・南イタリアのギリシャ語の方言
     サーレント方言、カラーブリア方言

    《バルカン半島》
    ・アルバニアとブルガリアの民族史と、その歴史、支配地域。

    ・バルカン半島において、トルコ語とギリシャ語を除き、定冠詞は名詞の後ろに付く!
    例えばアルバニア語は、男性定冠詞は-i、女性は-a、中性は-tが後ろに付く

    ・ロシア語の形容詞の長形は、短形に指示代名詞がくっついて区別されなくなった形

    ・バルカン半島にある諸言語にはいくつかの共通点が見られる
    一、未来表現
    ニ、定冠詞の用法

    ・定冠詞にはもともと指示代名詞だったが、両者は区別された
     その違いは、指示代名詞が聞き手に目の前に見える対象を視覚的に感知させるのに対して、定冠詞は聞き手の意識において既に知られている対象を想起させる
     ロマン諸語にある定冠詞は、元来、ラテン語の遠称の指示代名詞である。すなわち男・女・中→ille, illa, illud。対格形は、illum, illam, illud。

    ・ラテン語系の諸言語は、ラテン語の中性名詞を原則として男性に繰り入れた。


    《黒海から大西洋までー東部》
    p131 shallは、一人称単数以外に用いた場合、未来性とともに責務的な観念がつきまとう

    《黒海から大西洋までー西部》
    p161-162 ケルト人の居住地域について
    ・「緩音現象」ー本来、息を妨げるべきところが緩む
     ex) c-/k/→ch- t→th  p→f→h→消失 t→d k→g m→v

    《バルト海と北海》
    p203 部分属格ー大きい不定量のなかから小さい不定量を取り出すことを表す

    p207 フィンランド語には「部分格」がある。その名詞の一部分を現す

    ・大抵のヨーロッパの言語は、yes,noは絶対的である。
    ロシア語は、日本語と同じように受け答えする

    ・英語は文節末が閉音節でおわる(子音で終わらせたがる)。一方ロシア語は開音節で終わる。
    なのでgeneralを初めて聞いたなら英語ならgen-er-al?と聞くであろうし、ロシア語ならge-ne-ral?と聞き返す




    【気に入った文】
    Quippe solō nātūra subest
    何といっても大地には、もともとものを生んで成す、力がひそんでいるゆえに

    Quilibet hanc saevo vitam mihi finiat ense,
     Mea tamen extincto fama superstes erit.
    誰にしもあれ残虐の、剣もて断てよこの命、
     されど死を超え残るべき、我が名声を如何せむ

    Dumque suis victrix omnem de montibus orbem
    Prospiciet domitum Martia Roma, legar.
    常勝ローマの軍団が、かの七丘の頂ゆ、
     征地を睥睨せむかぎり、あまねくわが詩は読まるべし

  • 多くの読書人が、昔の岩波新書は内容が濃かったと言う。
    本書を手に取ると、その言葉が本当によくわかる。
    おそらく余人には代え難い、この分野における本物の専門家が、渾身の力量を投じて、一般の読者多数の知的関心をかきたてようとしている、そんな一冊に見える。

  • 難しかった。

    ヨーロッパの各言語の比較、歴史、特徴についてまとめた本です。
    そのため主軸になるのはラテン語です。
    例えば、格変化と前置詞のニュアンスの違い。時代が下るにつれ、明晰な前置詞にシフトしていく傾向にあること。
    フランス語やスペイン語の名詞の複数形は、ラテン語の複数・対格が元になっているからsで終わること。反対にイタリア語やルーマニア語の複数形は、ラテン語の複数・主格からだからsで終わらないこと。などなど

    ただ、著者の博学ゆえに、希英独仏伊西葡露ルーマニア…と欧州の言語を総ナメにしていき、その上音韻の話も出てきます。
    この本をしっかり理解するには相当の学識が必要で、今時の新書のレベルを超えています。

    私のような素人は、変に理解しようとせずに適当に読み飛ばしつつ、次にどの言語を学ぶか選ぶのに使うぐらいがちょうどいいのかもしれません。

  • 内容自体は詳しくて面白いんだが、シカシで繫ぐことが多すぎてしょっちゅう文章がひっくり返り読み難い。というかそれ以前に接続詞つかいすぎ。各文文頭に接続詞ついてるんと違うかゆうくらい接続詞ばっかり。

    さて、
    映画『The Godfather』でアルパチーノ演じるマイケル・コルレオーネが、タッタリア閥に出入りするソロッツォを父の仇と銃殺し、そのまま父の生まれ故郷イタリアはコルレオーネ村(シチリア島)に高飛びするが、そこでギリシャ系美人と出会い、結婚する。始めて映画を観た時はどうしてイタリアにギリシャ人が暮らしているのか謎だったが、なるほど、本書に拠ると、シチリア島はそもそもがギリシャ系の支配する土地で、ローマ帝国の強大化に伴いローマ化が進み、最終的にイタリアの一部に編入されたらしい。ギリシャ人数学者アルキメデスも出身地はシチリア島シラクサで、これも本書に拠ると、12世紀頃まではシチリア各地の小区域でギリシャ語はなおも住民によって話されていたとのこと。尚、映画で主役を演じるアルパチーノの母方祖父はコルレオーネ村出身らしい。

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