親鸞 (岩波新書 青版 853)

著者 : 野間宏
  • 岩波書店 (1973年3月29日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004121541

親鸞 (岩波新書 青版 853)の感想・レビュー・書評

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  • 小説家・野間宏が、仏教を在家大衆のもとに返した親鸞の思想を論じた本。随所に野間らしい視点が見られる。

    本書の第8章は「農民(生産者)のなかへ」というタイトルをもっている。そこで著者は、当時の流罪者には一年間生きながらえる米と一年後に自分で刈り取るための一定量の籾種を与えられたという資料に則って、承元の法難によって越後に流された親鸞は自分の食料を自分の手で育てるという厳しい生活を送らなければならなかったのではないかという。稲作についての知識をまったくもたなかった親鸞は、越後の農民に一つ一つ尋ね、あるいは助けられて、稲作の作業を進めてゆく中で、農民と同位の自己を作り出していった。法然の念仏は、これまで仏教が定めたどのような修行よりもはるかに困難に満ちたこの人々のために念仏はあるという確信が、「農民の生活のなかにまっすぐに立つことによって得ることができた」と著者は述べている。

    親鸞は、浄土念仏理論が釈尊、龍樹から法然に至るまでの法燈の系譜を引くものだということを『教行信証』の中で主張しているが、じっさい彼の教えは仏教をその本来の姿へと返すものであったと著者はいう。著者はインドにおける「法」(dharma)という語にさかのぼって、それが単に、生と死をはてしなく繰り返す輪廻を越えて涅槃に入るという「仏の教え」を意味するだけでなく、同時に、理想社会を実現するための行をおこなう社会的実践という意味もあわせもっていたと述べる。「穢土」、つまりこの現実社会のただ中に浄土を作り出すことがめざされていたのである。そしてこのような発想は、親鸞の主張する往相と還相の循環運動にはっきりと示されていると、著者は考えている。

    著者はこうした親鸞の革新的な思想を、「社会的実践」という、やや場違いとも受け取られかねない表現で言い表しているが、親鸞の思想の一つの側面を、現代的な観点から強い照明で照らし出していると言えるのではないだろうか。

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