漢の武帝 (岩波新書 青版 24)

著者 :
  • 岩波書店
3.36
  • (2)
  • (2)
  • (9)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 58
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004130482

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昭和24年に書かれた吉川幸次郎先生の武帝講義。本文は中学生が読んでもわかりやすいように、全体的にはエピソード集になっている。もちろん、その基になっているのは、「史記」「漢書」等の歴史書から採っているのだが、時々「漢武故事」などの「ものがたり」からも採っていて、その取捨選択は先生にお任せなので、歴史考証批判はできない。しかし、現代に至るまで岩波新書の古典として残っている以上は、信頼出来る歴史物語なのだと思う。

    漢の武帝の時代は、中国史の最も輝かしい時代のひとつとして、長く中国の人々の記憶にある。いや、輝かしいという気取った言い方をするよりも、いたって威勢のよい、いたってにぎやかな時代であったという方が、よりふさわしいであろう。
    そして、私の考えによれば、この威勢のよい時代こそは、中国の歴史の、最初の大転換期である。少なくともその思想史、文学史の、そうしておそらくは社会史、経済史、政治史の、最初の画期である。(3p)

    そのように始めた先生の講義は、司馬遷のように紀伝体ではなく編年体として、武帝55年の治世(B.C141-87)を語る。その人生を四期に分けて、一期以外は二章づつ使い、余す事なく語る。思うに、中国史入門書としてもお勧めである。

    さて、もちろん私がこの書を紐解いたのは、中国歴史書が読みたかったわけではなく、北方謙三版「史記」の並行読書としていままで司馬遷「史記」を読んで来て、最終に至り司馬遷の武帝本紀は単なる儀礼記録で余りにもつまらないので、これを代わりにしようかと思ったためである。確かに武帝のことはよくわかった。しかし肝心の「司馬遷の史記をどのように評価していたのか」という部分がわからなかった。私の「史記読書」外伝としては面白いけれども、これを武帝編の代わりにはできない。
    2014年1月30日読了

  • 古代中国史における黄金時代を築いた漢の武帝の評伝です。

    皇帝となったあと、祖母である竇太后の意に背いて儒教思想への傾倒を示したことや、衛青と霍去病を抜擢して匈奴征討を進めたこと、公孫弘や帳湯など内政を担当した臣下の業績などを解説しています。また、張騫を西域に派遣し、遠くローマ帝国にまで知見をひろげたことが、中国の皇帝である武帝の心にどのような波紋を投げかけたのかといったことについても、著者の見かたが示されており、興味深く読みました。

    著者は、「武帝をとりまく時代全体が、活気にみちあふれた健康な時代であった」と指摘しつつ、それが現実のものとなったのは「武帝のあくまでも積極的な性格のせい」であると述べています。そうした著者の考えを反映してのことなのか、武帝という人物をえがくことでその時代を生き生きとえがき出しているように感じられました。

    中国文学研究の大家として知られる著者ですが、若い読者が手にとりやすい平明な文章で書かれており、中国史についての予備知識がなくても、たのしんで読むことのできる内容になっています。

  • こちらも東洋学の古典。こういう書籍にふれると如何にネットにはびこる東洋理解がでたらめなのかよくわかる。

  • [ 内容 ]
    武帝の時代は中国史上最も輝かしい時代として伝えられている。
    武帝が十六歳の若さで帝位についた西紀前一四一年には、漢国は隆盛を誇り、国力は上昇の一途にあった。
    独裁君主として権力を握った武帝の闊達で積極的な性格を生きいきと描きながら、政治的文化的に偉大な足跡を中国各所に残した時代の空気を興味あふれる筆致で描く。

    [ 目次 ]


    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 日本語がきれい。

  • 武帝を調べたいときに読みました。無難な一冊。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

吉川幸次郎(よしかわ・こうじろう):1904―80年。神戸市生まれ。京都帝国大学文学部文学科入学、支那文学を専攻。1928―31年、中国留学。京都大学人文科学研究所東方学研究部研究員を経て、京都大学教授。この間、数々の著書を発表、日本の中国文学の普及に大きく貢献、芸術院会員、文化功労者となる。主な著書に『尚書正義』『杜甫私記』『陶淵明伝』『仁斎・徂徠・宣長』がある。

「2023年 『中国詩史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉川幸次郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
マーク・ピーター...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×