日本神話 (岩波新書 青版 748)

著者 : 上田正昭
  • 岩波書店 (1970年4月25日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004130888

日本神話 (岩波新書 青版 748)の感想・レビュー・書評

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  • 私のおば(父の姉)は、昭和ひとけた生まれ。私が小学生のとき、その伯母が百人一首の歌を暗唱してくれた。
    すごいと言う私に向かって、伯母はさらに、歴代天皇の名をそらんじはじめた。さらにすごいのは、第何代は何天皇というように、アトランダムでも天皇の名が言えたことだ。
    この本の著者の上田正昭氏も昭和2年生まれ。おそらく私の伯母同様、戦前教育を受けた同世代の方々は、天皇家の系統や記紀神話に関する知識を、現代の中学生が日本国憲法や選挙のしくみなどを基礎的な知識として学校で習い理解するのとおんなじように共通知識として持っていたに違いない。

    なので、そういう素養のない、私を含めた現代の戦後教育世代の多くは、その用語や時系列の理解からして困難で、知らない言葉が当たり前のように次から次へと出て来られては「自分の理解が不足してるのか」というようなジレンマに陥って読むのを挫折するという状況は、当然想定される話だ。

    だが一方で、あくまで著者が従来の学説から一定の距離を置き、客観的かつ多角的な手法で記紀に書かれた内容に当たることで、神話の真実をみようとする真摯な姿勢は好ましい印象をもたらす。
    当たり前の話だが、記紀に書かれた神代史は日本オリジナルのものではない。著者は日本列島という陸の視点だけでなく、日本列島を取り巻く海流から南方のアジアからの流れ着いた文化的伝播を読み解き、海の向こうの朝鮮半島との接点を見出す。
    そういう日本固有のものを縦糸に、外からの流入という視点を横糸にした立体的な論理展開は、著者が日本やアジア各地を歴訪のうえ、いよいよ対馬という、従来の日本神話の議論からいうとメインでは全くなかった土地に足を踏み入れた時に得られた着想だ。

    どの神さまがどうしたと書かれているとかそういう文献解釈的展開を期待するよりも、著者のフィールドワークから来るダイナミックな解釈の展開を楽しむというほうが合っている。

    そう、私は浦沢直樹さんほかによる「MASTERキートン」のこういう挿話を思い出した。
    キートンの娘が先生から「代表的な古代文明を言ってみなさい」と言われ「黄河文明、インダス文明、メソポタミア文明、エジプト文明、揚子江文明、イラク文明……イスラエル文明、ブルガリア文明……メコン文明……マヤ文明…」と続けようとする。
    そんなの教科書に載っていないと否定しようとする先生たちを前に、本職たる考古学者キートンは「四大文明なんてウソっぱちです。科学的調査法のなかった百年前ならいざ知らず、現代の調査では、少なくとも、この時期、約二十の文明があった…」と説明する。

    初版が1970年で今から見ると古く、もちろんこの本が最新学説ではない。だが上田先生の、新井白石や平田篤胤などの先人に追いつき、それらを踏襲したうえで科学的かつ現代的な視点から立証していこうという考究心が、キートンの挿話と同様に共感をもたらしてくれる。

  • 途中でギブアップ

  • 目次(抜粋):
    序 日本神話の再発見
    Ⅰ 神代史のなりたち 1 口誦と記録 2 神話の舞台 3 三つの神代史
    Ⅱ 天つ神の世界 1 天地の創成 2 天つ神の誕生 3 皇祖神の源流
    Ⅲ 国つ神群像 1 天と国と 2 葦原の中つ国 3 国ゆずりの軌跡
    Ⅳ 神話の重層 1 三上来臨 2 海上遊幸

    あとがき

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