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Amazon.co.jp ・本 (218ページ) / ISBN・EAN: 9784004140276
みんなの感想まとめ
平安時代の女性作家、紫式部の生涯と作品を深く掘り下げた内容です。著者は彼女の私家集を通して、歌の贈答の背景や彼女自身の人生を描き出しています。特に、紫式部が夫の死後に直面した運命や、宮仕えを通じて感じ...
感想・レビュー・書評
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『紫式部集』の歌を紹介しながら、彼女の生涯と人物像を解説している本です。
著者は『紫式部集』において、夫の藤原宣孝の死後、夫とほかの妻とのあいだに生まれた娘と歌の贈答がなされていたにもかかわらず、その歌が贈答歌の形式で採録されていないことに着目して、「それは式部が他人の歌を、自己の歌との贈答の一端としてでなく、まったく独立したものとして、それ自体の意味において自分の家集に記録したことになる」と述べています。このことは、『紫式部集』が、彼女自身を示すひとつの作品として構成されているということを意味しています。
『源氏物語』という王朝文学最大のロマンスを創作した紫式部は、少女時代から才気を示していた紫式部は、その時代の歌をまとめることで、「娘時代」として他の時代から画して構成しました。そこには、貴族の男性たちとのあいだで交わされた歌は一首も収められておらず、「それが娘時代の歌をさわやかに引き緊め、女よりはるかに可能性の多い娘の生き方を書き残させたのである」と著者は述べています。
そして、このような「娘時代」と対比されるかたちで、その後の彼女の人生が歌によって表現されることになります。そこには、貴族社会を生きる女性たちが引き受けざるをえない運命が示されています。彼女はすぐれた批評眼でそうしたみずからの運命を見つめ、その洞察が『源氏物語』にも反映されているということができます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2024年8月9日購入。
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紫式部の私家集に沿って紫式部の半生を辿ろうという内容。国文学は疎いが、平易な文章でわかりやすかった。以前に斎藤茂吉の万葉集についての岩波新書を買って読んだが、ひどかった。何が言いたいのかさっぱり伝わってこないし、説明が説明になっていないし、結局上巻読みさして手放した。今回もそれだったないやだなと思いつつ読んだが、当時の平安貴族の風習や政治的な話、歌詠みにおける決まりごとなど細かくおりおりに触れられていて、あたかも歌を読んで理解できたかのような錯覚をした。巻末に紫式部の家集の全文が掲載されていて、改めて通しで読んでみたが、さっぱりわからなかった。著者の解説がよかったんだなと実感した。
紫式部については源氏物語を書いたらしいということ以外知識がなかったので、特に紫式部の一族が藤原道長を取り巻くように姻戚関係を結んでいたことなどは意外で目から鱗だった。ところが紫式部は道長の偉そうな振る舞いに反感を覚え、帝なきあとの后とともに反道長的な立場にいたのだとか。帝が源氏物語から歌を引いて后に贈ったというのも意外だった。そもそも源氏物語はうもれて後世になって注目されだしたくらいに思っていた。
夫に先立たれてからの紫式部は、世の中を憂いて悶々とし、宮仕えに召されてからも悶々としていたらしい。生きていて何になるのかと自問自答するような歌や日記も多いらしい。これも意外だった。かたや娘の賢子は女房が板について、身分もぐんぐんあがり、偉いとこの人と結婚して、人生を謳歌したが、思い煩うことが少なかった所為か、詠んだ歌はどれもフツーらしい。
私家集を基調としているのでそこに収録された歌が本書では主眼になっているが、後半には源氏物語についても言及されている。岩波新書にもその名もズバリ『源氏物語』(秋山虔著) があり、それも面白かったが、本書のみかたも中々興味深かった。
清水好子の作品
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