平家物語 (岩波新書)

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  • 岩波書店 (1957年11月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (227ページ) / ISBN・EAN: 9784004140283

みんなの感想まとめ

歴史と文学が交差する作品の魅力を深く掘り下げた考察が展開されています。著者は、平家の滅亡を描く『平家物語』の運命観に注目し、歴史の中の人間たちの多様な姿を物語として捉えることで、その文学的な生命力を明...

感想・レビュー・書評

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  • 木下順二の「子午線の祀り」を読んだ際に出て来たきっかけとなる一冊。
    名前聞いたことあるなー(『中世的世界の形成』は未だ手をつけられていない)と思ったら、目の前にあって、線まで引いているのに登録していなかった。
    記憶にもない。ため、再読。

    「子午線の祀り」で印象を新たにした知盛については、予言者として重盛とも重ね合わせながら述べられている。
    そして、『平家物語』では不思議と表に出て来(すぎ)ない後白河法皇と源頼朝についても、なぜ出て来(すぎ)ないのか、という点を『平家物語』の本質から上手くまとめられていて、面白い。


    「彼(頼朝)の政権は簒奪者の政権であるという弱さをもっていただけに、その政策は周密な計算と駈引きをともなったものであって、この政治家としての行動に頼朝の人間としての本質が存在した。それは舞台の背後にいることによって、その才能を発揮するような人物である。」

    「平家物語自身の性質が、平氏の滅亡を中心とする事件の客観的進行を物語るものであったので、いかに中心的な役割を果す人物であっても、それを物語の主人公として独立にその生涯を追求するということは、作者の関心でなかった」


    また、『平家物語』の長大さについて本来は三巻本であったのではという。
    なぜ『保元・平治物語』は三巻であるのに対し、『平家物語』がこれほどまでに膨らんだのか。


    「(『保元・平治物語』は)それをつきやぶって、後から後から物語を増補してゆき、ついには原型もわからなくするだけの要求と力が源平の内乱以後になって新しく湧いてくるような性質のものではなかった。」
    「ところが、源平の内乱は半世紀近くなっても、当時の日本人にとっては、まだ完了してしまった過去の事件となり得ないほどの印象と痛手と想出をのこしていたらしい。」


    もう一点、個人的に面白い指摘がある。
    『平家物語』が「語り」を抜きにしては成立しない、それほど重要な要素であるにも関わらず、「語り」では意味を取り切れない難解な漢語が使用されている点について。


    「読んでわからないものがどうして聴いてわかるはずがあろうか。ところがこの種の文章の作者は、聴衆が聴いて一つ一つの言葉の意味を理解し得ないことを、はじめからよく知っており、計算さえしているのである。」
    「ここでの言葉は、それがもつ正確な意味内容を伝えるのではなく、言葉が組合わされて一つの魔術的な作用をする使命をもたされているのであるから、ある意味ではわからない言葉の方が効果的でさえある。」


    単に源平の戦乱を面白く描いたのではなく、同じ時間軸で起こった災害を含め、ひとつの時代を変えるほどのうねりを持ちえた一族の「討滅」は、そこに居合わせた人々にとって語られるべきものであったという。

    うわ。引用も含めて長くなってしまった。

  • 日本を代表するマルクス主義歴史家による平家物語論。「保元」や「平治」にはない平家のスケールをその戦乱の規模から論じたり、平家物語の増補過程を琵琶法師と貴族・民衆との関係性から論じたりする点は、石母田のマルクス主義的史観の面目躍如だろう。

  • 内容はともかく、語り口が面白く思わず笑ってしまったり唸ったり。例えば私たちは歴史上の人物や事件について、「これって当時でもあまり評価できないことしてるんじゃ…」と思っても「まあ昔のことだし、今の我々には理解できないこともあるかもね」と評価を留保することがほとんどだと思うけど、石母田正はきっぱり「いつの時代だろうと、堕落は堕落!」と言い切ってしまう。言い切るのが面白いし気持ちよい。それももしかしたら良くないのかも、と思わないでもないけど、文学論としてならアリかも。

  • 戦後の歴史学を領導してきたひとりである著者が、文学作品としての『平家物語』について考察をおこなっている本です。

    著者は「あとがき」で、『平家物語』にえがかれている治承・寿永の乱の歴史について研究をおこなっているときに、「いつもこの物語のことが念頭にあってはなれない」と語っています。そして、すでに江戸時代から『平家物語』の記述が歴史上の事実そのままではないという指摘がおこなわれてきたことに触れつつ、「平家物語を独立の物語=文学として正しく理解する努力を自分でやってみてはじめて、歴史の研究者は平家のもつ力から解放され、平家物語を全体として歴史研究のなかに生かすことができよう」と述べています。

    著者は、平氏の滅亡へといたる道筋をえがいた『平家物語』の運命観に注目しながらも、歴史のなかに生きる人間たちの種々相が「物語」のかたちであつかわれているところに、その文学的な生命を見ることができることを主張しています。また、貴族の信濃前司行長によって原作が生み出され、琵琶法師によって音曲に乗せられて語られることになったこの作品の「語り物」としての性格に注目し、『平家物語』がどのような歴史的条件のもとで生まれ、人びとに受け入れられていったのかということについて考察を展開しています。

    著者は歴史学者ですが、それだけいっそう「文学」としての『平家物語』の輪郭を外から明瞭にえがき出すことに成功しているように思います。

  • 38425

  • 作者の登場人物の捉え方がおもしろくて、平家物語への理解が深まりました。特に、平知盛。前から登場人物の中で1番好きだったけど、どうして好きなのか、説明してもらえました。
    西行や鴨長明といった同時代の遁世者と比較して、平家物語の作者の「人間」に対する興味と愛情を論じていますが、それは同時に石母田正氏のそれと通じるものがあるような気がしました。それこそが、1957年に出版されたこの本が読み次がれている理由なのでしょう。

  • 昔の本なので、さすがに現在の研究の水準から見て満足できる内容ではないかもと思いながら読み始めましたが、反して現在でもかなり通用しそうな良い内容でした

  • 『平家物語』研究の基礎文献です。本来、歴史研究者である石母田正が書いた作品論です。これを読まずに「平家」は語れません。『平家物語』の物語の進行にそって、その内容を歴史社会学派の立場で論じていきます。

  • 文学論もありつつ、歴史としての平家物語のあり方を論じた作品。
    語物としての作品に主眼を置き、違った切り口で攻めているのが面白い。

    昔の学者は博識だということがひしひしと伝わります。

  • 大学時代に木下順二の『子午線の祀り』に大感動して手にとりました。日本古代史、中世史の研究者による解説書です。大河ドラマのおともに!

  • 2012年2月18日読み始め 2012年2月21日読了
    大河ドラマ「義経」が放送された時に復刊された本だそうです。名著として有名な本ということですが、読んでみて納得。読み物としても面白かったです。
    内容は、平家物語の解説というよりは、物語の構造を解き明かしています。なので全く平家物語を知らない方よりも、少しでも知ってる方向けだと思います。平家物語の作者は重盛に自己投影しているが、実は重盛はさほどうまく書けていないとか、当時の人々にとっての平家物語のありようなどはとても面白く、随分昔の話ではあるけれど、今の人間にも通じるものがあるなあと思いました。

  • 平家物語という文学を文学史の中で捉えなおした史学的文章であるような印象を受けた。
    私が根本的な興味を抱いてるのは「平家物語に描かれた平家」ではなく歴史の史上の人物としての平家一門だけれども、「史」としての彼らだけでなく、平家が人々にどのように捉えられていたのか、平家の滅亡が人々の中でどのように消化されていったのかという「歴」の点に関連して、平家物語に対して新たな興味を抱くことができた。良書。

  • [ 内容 ]
    すぐれた古典文学のひとつである平家物語は何故に長くかつ深く日本人の心をとらえてきたのか。
    その力は一体どこにあるのか。
    歴史家でかつ古典文学を深く愛好する著者が、時代についての学問的造詣と清新な感覚によって、平家物語の文学としての本質を追究し、登場人物とその運命を生きいきと描く。

    [ 目次 ]
    第1章 運命について(新中納言知盛;生への執着 ほか)
    第2章 平家物語の人々(平清盛の遺言;平家物語の保守的政治思想 ほか)
    第3章 平家物語の形式(平家には性質のちがった物語が集成されていること;年代記的叙述の分析 ほか)
    第4章 合戦記と物語(橋合戦;作中人物への共感 ほか)

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 平家物語の入門書として本当に素晴らしい一冊。あまりいいことではないですが、これさえ読めば平家物語を読んだ気になれます。

    近年の知盛に関する視点はすべて石母田さんのこの著作が元になっているそうです。彼の知盛論は非常に面白いのですが、一番面白いのはやはり平家物語の「運命論」

    メインストリームの清盛、義仲、義経の流れよりも重盛ら著者の視点を得た登場人物に焦点を当て平家物語を読み解くのはとても面白い。

    運命に抗わぬ運命論者と運命に抗う歴史上の主要人物達。

    平家物語を読む場合はどんな形で読むにせよこの一冊をお供に読むことをおすすめします。

  • 高校2年生/図書館にて
    918.カ19
    15068

  • 平家物語研究の、代表的著作。
    重盛や知盛など、平家の運命を見通す存在、また、清盛、義仲、義経が、中心的な人物となっていること、後白河法皇や源頼朝があまり深く関っていないことなどを指摘してくれます。
    また、女性や王朝裏の駆け引きが上手く描かれていないことや、もとは叙事詩だったのではないかという指摘もあります。

  • 平家物語を分析している。
    平家物語の原作者の意図とは。そしてこれほどまでに内容が付け加えられていった理由とは。


    再来年の大河が俄然楽しみになりました。そして不安。

  • 文学としての平家物語の意義がよくわかり大変面白かった。年代記的なところも文学、主人公がいない、あくまでも平家の滅亡に焦点を当てているなど。とても読みやすかった。依然読んだ、太平記読みと比較しても面白い。

  • 意外と面白くて読みやすかった。
    「奢れる者も久しからず」の意味がよくわかった。

  • 思いの外、読みやすかった。
    平家物語を知るには、なかなか良いのでは。

    歴史書、文学の専門書…というよりは、平家物語に纏わる筆者の所見・思いが綴られているように思います。
    だから読みやすいのよ。

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著者プロフィール

1912年札幌に生まれる。37年東京大学文学部国史学科卒業。冨山房・朝日新聞社を経て、戦後法政大学で教鞭をとる。民主主義科学者協会、日本文化人会議、歴史学研究会で活躍。法政大学名誉教授。1986年死去。著書:『中世的世界の形成』、『古代末期政治史序説』、『歴史と民族の発見』(正続)、『歴史の遺産』、『平家物語』、『日本の古代国家』、『日本古代国家論』(全2冊)、『日本史概説』Ⅰ(共著)など。

「1977年 『戦後歴史学の思想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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