平家物語 (岩波新書)

著者 : 石母田正
  • 岩波書店 (1957年11月18日発売)
3.78
  • (9)
  • (18)
  • (19)
  • (0)
  • (0)
  • 本棚登録 :106
  • レビュー :17
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004140283

平家物語 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 木下順二の「子午線の祀り」を読んだ際に出て来たきっかけとなる一冊。
    名前聞いたことあるなー(『中世的世界の形成』は未だ手をつけられていない)と思ったら、目の前にあって、線まで引いているのに登録していなかった。
    記憶にもない。ため、再読。

    「子午線の祀り」で印象を新たにした知盛については、予言者として重盛とも重ね合わせながら述べられている。
    そして、『平家物語』では不思議と表に出て来(すぎ)ない後白河法皇と源頼朝についても、なぜ出て来(すぎ)ないのか、という点を『平家物語』の本質から上手くまとめられていて、面白い。


    「彼(頼朝)の政権は簒奪者の政権であるという弱さをもっていただけに、その政策は周密な計算と駈引きをともなったものであって、この政治家としての行動に頼朝の人間としての本質が存在した。それは舞台の背後にいることによって、その才能を発揮するような人物である。」

    「平家物語自身の性質が、平氏の滅亡を中心とする事件の客観的進行を物語るものであったので、いかに中心的な役割を果す人物であっても、それを物語の主人公として独立にその生涯を追求するということは、作者の関心でなかった」


    また、『平家物語』の長大さについて本来は三巻本であったのではという。
    なぜ『保元・平治物語』は三巻であるのに対し、『平家物語』がこれほどまでに膨らんだのか。


    「(『保元・平治物語』は)それをつきやぶって、後から後から物語を増補してゆき、ついには原型もわからなくするだけの要求と力が源平の内乱以後になって新しく湧いてくるような性質のものではなかった。」
    「ところが、源平の内乱は半世紀近くなっても、当時の日本人にとっては、まだ完了してしまった過去の事件となり得ないほどの印象と痛手と想出をのこしていたらしい。」


    もう一点、個人的に面白い指摘がある。
    『平家物語』が「語り」を抜きにしては成立しない、それほど重要な要素であるにも関わらず、「語り」では意味を取り切れない難解な漢語が使用されている点について。


    「読んでわからないものがどうして聴いてわかるはずがあろうか。ところがこの種の文章の作者は、聴衆が聴いて一つ一つの言葉の意味を理解し得ないことを、はじめからよく知っており、計算さえしているのである。」
    「ここでの言葉は、それがもつ正確な意味内容を伝えるのではなく、言葉が組合わされて一つの魔術的な作用をする使命をもたされているのであるから、ある意味ではわからない言葉の方が効果的でさえある。」


    単に源平の戦乱を面白く描いたのではなく、同じ時間軸で起こった災害を含め、ひとつの時代を変えるほどのうねりを持ちえた一族の「討滅」は、そこに居合わせた人々にとって語られるべきものであったという。

    うわ。引用も含めて長くなってしまった。

  • 内容はともかく、語り口が面白く思わず笑ってしまったり唸ったり。例えば私たちは歴史上の人物や事件について、「これって当時でもあまり評価できないことしてるんじゃ…」と思っても「まあ昔のことだし、今の我々には理解できないこともあるかもね」と評価を留保することがほとんどだと思うけど、石母田正はきっぱり「いつの時代だろうと、堕落は堕落!」と言い切ってしまう。言い切るのが面白いし気持ちよい。それももしかしたら良くないのかも、と思わないでもないけど、文学論としてならアリかも。

  • 作者の登場人物の捉え方がおもしろくて、平家物語への理解が深まりました。特に、平知盛。前から登場人物の中で1番好きだったけど、どうして好きなのか、説明してもらえました。
    西行や鴨長明といった同時代の遁世者と比較して、平家物語の作者の「人間」に対する興味と愛情を論じていますが、それは同時に石母田正氏のそれと通じるものがあるような気がしました。それこそが、1957年に出版されたこの本が読み次がれている理由なのでしょう。

  • 昔の本なので、さすがに現在の研究の水準から見て満足できる内容ではないかもと思いながら読み始めましたが、反して現在でもかなり通用しそうな良い内容でした

  • 『平家物語』研究の基礎文献です。本来、歴史研究者である石母田正が書いた作品論です。これを読まずに「平家」は語れません。『平家物語』の物語の進行にそって、その内容を歴史社会学派の立場で論じていきます。

  • 文学論もありつつ、歴史としての平家物語のあり方を論じた作品。
    語物としての作品に主眼を置き、違った切り口で攻めているのが面白い。

    昔の学者は博識だということがひしひしと伝わります。

  • 大学時代に木下順二の『子午線の祀り』に大感動して手にとりました。日本古代史、中世史の研究者による解説書です。大河ドラマのおともに!

  • 2012年2月18日読み始め 2012年2月21日読了
    大河ドラマ「義経」が放送された時に復刊された本だそうです。名著として有名な本ということですが、読んでみて納得。読み物としても面白かったです。
    内容は、平家物語の解説というよりは、物語の構造を解き明かしています。なので全く平家物語を知らない方よりも、少しでも知ってる方向けだと思います。平家物語の作者は重盛に自己投影しているが、実は重盛はさほどうまく書けていないとか、当時の人々にとっての平家物語のありようなどはとても面白く、随分昔の話ではあるけれど、今の人間にも通じるものがあるなあと思いました。

  • 平家物語という文学を文学史の中で捉えなおした史学的文章であるような印象を受けた。
    私が根本的な興味を抱いてるのは「平家物語に描かれた平家」ではなく歴史の史上の人物としての平家一門だけれども、「史」としての彼らだけでなく、平家が人々にどのように捉えられていたのか、平家の滅亡が人々の中でどのように消化されていったのかという「歴」の点に関連して、平家物語に対して新たな興味を抱くことができた。良書。

  • [ 内容 ]
    すぐれた古典文学のひとつである平家物語は何故に長くかつ深く日本人の心をとらえてきたのか。
    その力は一体どこにあるのか。
    歴史家でかつ古典文学を深く愛好する著者が、時代についての学問的造詣と清新な感覚によって、平家物語の文学としての本質を追究し、登場人物とその運命を生きいきと描く。

    [ 目次 ]
    第1章 運命について(新中納言知盛;生への執着 ほか)
    第2章 平家物語の人々(平清盛の遺言;平家物語の保守的政治思想 ほか)
    第3章 平家物語の形式(平家には性質のちがった物語が集成されていること;年代記的叙述の分析 ほか)
    第4章 合戦記と物語(橋合戦;作中人物への共感 ほか)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

全17件中 1 - 10件を表示

石母田正の作品

平家物語 (岩波新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする