羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004150961

感想・レビュー・書評

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  • 筆者の幼少期から医学部学生までの、回想録。
    常に醒めた視線で、身の回りを観察している。

  • 戦前から終戦までの時代の雰囲気がよく伝わってくる。
    特に、日常の何気ない風景や、街の佇まい、自然の美しさなどに心を動かされるところが印象的である。

  • この書物は、帝国主義、世界大戦など困難な時代を背景に、旧制高校や帝国大学などで学びながら、教師、友人や家族とのつながりのなかで、また医師という自らの職業の実践を通して、時代に流されることなく「人の生命こそもっとも重いもの」との考えを育み、反戦を訴えてきた筆者の大叙事詩である。

    筆者は、能や歌舞伎など、日本の伝統芸能にも若いころから親しんでいるが、とくに灯火管制の敷かれた1941年12月8日の新橋演舞場で、まったく観客がいない中で自身が観客として体験した文楽の場面など興味深いエピソードがたくさんあった。

    ショパンの音楽とのかかわりも興味深い。ロマン主義の中でもショパンの音楽は独特な位置を占めていて、深い内省が美しい音楽の至るところに秘められている。蓄音機や演奏会の体験を通じ、ショパンの音楽は筆者を惹きつけてやまなかった。

    一つひとつのエピソードが、困難さを背景にしながらも、ロマン主義的なストーリーを形作っており、読んでいるだけで例えばラフマニノフのピアノ協奏曲第二番を聴いているような気さえする書物だった。

  • 私が大学1年の頃、まだこの著作集は出ていませんでしたが、加藤周一氏の数多くの著作に親しみ、日本社会や世界についての氏の鋭い議論に大きな影響を受けました。ぜひ、著作全部を読み通してほしいです。加藤氏は2008年に89歳で亡くなりましたが、個別の著作では特に次の2冊をお勧めします。
    氏の自伝でもある『羊の歌』(岩波新書)
    および『日本文学史序説』(筑摩文芸文庫)です。

    OPACへ⇒https://www.opac.lib.tmu.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB02244218&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 面白かったです。

  • 評論家の加藤周一が、みずからの半生を振り返った自伝。上巻では、著者の少年時代から、敗戦を迎えた医学生時代までが語られています。

    「あとがき」で著者は、「私の一身のいくらか現代日本人の平均にちかいことに思い到った」と、韜晦していますが、本書に描かれた著者の姿は、西欧の文明の香りを身にまとった祖父や、合理主義を報じる医師の父のもとで生まれ、文学や科学に対する早熟な関心を見せるなど、およそ「現代日本人の平均」とは言い難いものです。

    若い早熟な知性が、知の世界への上昇を夢見るとともに、足下の人間関係や軍国主義の日本に対する思いを屈折させていく様子が見事に描かれており、優れた自伝文学になっているのではないかと思います。

  • 日本が戦争に突入する過程・その渦中を、当時のインテリ大学生がどう見て、どう生きたか。戦争に関する客観的な分析の本よりずっとおもしろい。

    社会が「国民精神総動員」に向かっていたとき、著者は自分なりの世の中の流れへの解釈・批判を捨てなかった。むしろ、捨てられたらどんなに楽だろうと思いながら、捨てきれなかった。
    信じきれないスローガンを掲げる軍国「日本」よりも、開戦の日に観た文楽の世界に現れる「日本」が、著者にとっての親しんだ故郷であった。
    戦時中の東京を、生きていたのではなく、眺めていた。
    つまりその場に生きながら、歴史の中の東京を見ていた、著者の証言はとても重いと思う。

    社会の流れが、自分にとってどうすることもできないものでも、それについて知りたいと思う、理解したいと思う。
    そのことについて、ベトナム戦争で死んだ子供のことを、気にしたところでどうすることもできないのに何のために気にするのだろうか、というエピソードにつなげている場面がある。
    「『知ったところで、どうしようもないじゃないか』―たしかに、どうしようもない。しかし『だから知りたくない』という人間と、『それでも知っていたい』という人間があるだろう。前者がまちがっているという理くつは、私にはない。ただ私は私自身が後者に属すると感じるだけである」。
    だからこの人は学者なんだなあと感じる。
    とても謙虚で正確な言葉を使う。

  • 評論家・加藤周一の自伝。幼少期~終戦(26歳)までが描かれている。医学部生でありながら仏文学研究室の学生や教員と語らい過ごしていた…。正に、戦時中の隠れ家的な大学生活に羨望を抱かざるを得ない。また、戦時中の空気感を見事に描いており、しかもその文章が非常に読みやすい。著者の他の文章も読みたくなった。

    九州大学
    ニックネーム:Roa

    • librarylovers13さん
      【なんでも芋】
      著者の幼年期から青年期にかけての出来事をつづったエッセイです。戦前のエリート層や上流の家庭の雰囲気を感じとれると共に、ある...
      【なんでも芋】
      著者の幼年期から青年期にかけての出来事をつづったエッセイです。戦前のエリート層や上流の家庭の雰囲気を感じとれると共に、ある種の著者の感じている優越感?に似たものを感じました。

      九州大学
      ニックネーム:上川誠
      2013/11/06
  • 平均的日本人の自伝というが、特殊だと思うが・・・。しかし普通のことを学び続けたことは一般的知識人とも言える。

  • 必要あって久しぶりに読んだら、あまりに面白い。こんなにも引き込まれる本だったとは。何歳で読むかによってこれほど印象、評価がかわる本も珍しいかもしれない。でも本当のところ、それはこの本のせいではなくて、現在の僕の状態のせいかもしれません。

    内容の紹介の必要はない名著だけど、いちおう書いておくと、加藤周一の自伝。戦後知性の頂点による自伝なんだからつまらないはずはない。

    しかし、東京は渋谷宮益坂の左右に広大な土地と大量の貸家を所有する元陸軍大佐を祖父とし、その娘を母(病気で寝ている子どもに琴をひいて聞かせるような人)とし、多くの財閥系有力者の主治医である父(これも熊谷の大地主の息子)が経営する医院を兼ねる邸宅(渋谷の祖父宅の隣)に住み、公立学校の現職教員を家庭教師に雇いつつ、戦前期にもかかわらず超リベラルな教育を享受、さらには飛び級して東大医学部に進む自分を「現代日本人の平均にちかい」と表現できるのも、また別の才能である。富の偏在や貧困に対するあまりの無理解。そんな精神で戦前の右傾化を理解できたのか。戦後進歩派の栄光と悲惨。

    著者の誕生から終戦までが本書。続編は終戦から安保まで。

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