科学の方法 (岩波新書 青版 313)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 823
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004160502

作品紹介・あらすじ

付録: 茶碗の曲線 204-212p

感想・レビュー・書評

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  • 【星:4.5】
    科学とはそもそも何なのか?文系人間の私がそんな疑問をもって手に取った。そして、その疑問にしっかりと答えてくれた1冊であった。

    科学とは何か?・再現可能性・科学の限界・定量的と定性的・科学と数学の関係、などなど色々なトピックスを分かりやすく説明している。

    なかなかの名著だと思う。

  • 今となっては例として挙げられているものに古いものもあったりするが,そんなことはまったく問題ではない.科学とは本質的にどのようなものか,中谷宇吉郎はあいかわらずとてもわかりやすく書きだしている.

  • 自然科学が自然と人間の協同作品であるという考え方が面白い。測定とは何か、誤差とは何か、理論や実験の意味とは何か、といった事柄を丁寧に説いてもらえます。読みづらい点があるとすれば、単位系が古かったりするぐらいです。それも本質的な問題ではありませんが、理系の大学生以外が読むと混乱の元になるかもしれません。注釈つけてくれないかな…。

  • 数学について以下のようなことが書いてあります。
    「数学は人間が考えたものだから人間が全然知らなかったことは出てこない。それでも数学はいわば人類の頭脳が作ったものであるため個人の限界を離れてこの頭脳で問題を考えることができる。」
    科学は人間が考えやすいように自然を捕らえた姿で、科学に用いられる数学も考えやすいように使っている、ということです。
    この主張は科学の限界を明快かつ分かりやすく伝えています。
    講義の速記を元に手を加えたとありますが、よって同じ話が何度も繰り返し登場します。それがうるさくなく効果的に用いられています。面白い本でした。

  • よくいわれる科学的実験法における限界が細かく書かれており、考え方の参考になります。

  • 中谷宇吉郎と言えば『雪』が有名だけど、もしかしたらそれ以上に面白いと思える科学論入門書。中谷さんは科学を人間と自然との共同作業だと考えており、自然科学といえども自然の全てを知るべき学問ではないとその限界をきちんと見定めた上で、解ける問題をいかに観測し、理論化していくかについて話を進めていく。中でも数学についてが興味深く、「数学は人類の共有資産であり、個人の頭脳では到達し得られない所まで人間の思考を導いてくれるもの」という視点は目から鱗だった。こんなにも科学を人間的に感じられた経験は、他にないと言っていい。

  • 科学分野が、現在までに、どのようなことを積み上げてきたのかを考察した新書。科学的な思考法を振り返り、基礎的なところを説明をしている。私には難しいものも含まれているが、平易な文章で読みやすかった。

  • 科学哲学の本。
    とても分かりやすく面白い。
    良書。

  • 低温物理学の専門家である中谷宇吉郎(1900-1962)が1958年に書いた科学基礎論である。基本的に科学は自然と人間の共作であり、科学的方法の基本は、分析と総合、因果律的思考、測定、恒存の概念であり、再現可能性を土台としている。再現可能な現象は安定しているが、この安定している性質のものには科学的思考を適用しやすい。自然界は極小と極大は、分かりやすいが中間の大きさの現象は分かりにくい。火星にいくことができても、一枚の紙がどこに落ちるのかということは予測不能である。地震の予測ができないことが最近話題になったが、地震学者が例にだした「鉛筆が折れる力」について、中谷宇吉郎がすでに言及しており、結晶の欠陥を例として詳しく論じられている。また、糸の長さは非常に量りにくく、張力、温度、湿度などに影響をうけ、さらに初期状態の湿度から湿らし、その後同じ湿度に戻しても、同じ長さにならないなど、歷史的要素もある。また、粒子の軌道をみるための「霧箱」が降雨のしくみを解明するものであった例などをあげ、定性的な研究が定量的な研究に劣るわけではないということを指摘している。また、科学にも人間的要素があるとして、1930年代の「金属線」とか「生物線」(ミトゲン線)など、現在は実在しない放射線がまじめに論じられていた例などを紹介している。氷のたわみや、雪の温度や超伝導など、著者の專門の話題も多い。有効数字や誤差など、基本的なことについても理解できる。

  • 「科学的である」とはどういうことか、についてのエッセイ。

    かなり古い本のため、現在分かっていることとどれくらい合っているのか
    分からないが、現代物理学の基礎になった重大な発見の周辺の
    エピソードは、有名な内容だが、何度読んでも面白い。

    本書の大まかなメッセージは、
    科学は再現可能であることが必要である、ということで、
    再現が難しい事象については適用しにくい。
    統計手法によって、全体としての再現性は得られたが、
    一つひとつの挙動については今の科学では解明できそうもない。
    だが過去にも科学者は制約の中でさまざまな発見をして
    知識を深めており、まだまだ未解明で残された領域についても
    少しずつ知識を深めていくに違いない。
    …という内容。

    エッセイなので、科学の方法について厳密に論証しているわけでもなく、
    また著者自身も特にこれだという考えがなさそうである。
    だがそれが逆に、自分でニュートラルに考えることができてよかった。

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著者プロフィール

1900–1962
石川県生まれ。
東京大学理学部を卒業し、理化学研究所で寺田寅彦の助手として勤務。
後に北海道大学教授を務め、雪と氷の研究で新境地を開く。
物理学者でありながら随筆家としても活躍。師と仰いだ寺田寅彦の想い出を綴った「寺田先生の追憶」をはじめ「日本人のこころ」「私の生まれた家」など作品は多数。

「2021年 『どんぐり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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