科学の方法 (岩波新書 青版 313)

著者 :
  • 岩波書店
4.11
  • (55)
  • (30)
  • (34)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 640
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004160502

作品紹介・あらすじ

付録: 茶碗の曲線 204-212p

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 約60年前に書かれたとは言え、自然科学の本質を分かりやすく説明してくれる本書に古さは全く感じない。

    コロナの時代に本を読むと、どうしても本の内容をコロナのケースに当てはめて感じたり考えてしまう。その中でも特に、1958年に書かれた本書は今読んで良かったと思う一冊。人々が現代の科学技術の限界を目の当たりにし、同時に希望を持っているこの時代に。積読は人も本も熟成させるのだ・・・。

    そして一方で、高校時代に出会っていたかった本でもある。

    高校時代、どうしても物理と化学、特に物理が腹の底までストンと理解できなくて苦しんだのだが、その理由がこの本を読んで分かった気がする。

    物理の教科書をいくら読んでも「だって見えないんだよ?」「宇宙だって本当にあるか分からなくない?みんなの妄想の可能性もゼロではないはず」「真空の場合ってガチで真空なの?」といった疑問が脳内を横切る瞬間が多々あり、その度に気が散って集中できなかった。この種の疑問、そして疑問になる前のモヤモヤしたものは、常日頃から疑り深く、簡単なことを複雑に考えるとして先生から注意されたこともある自分の性質から来るもんだと思っていた。そこから物質科学に興味を持ち、自分で調べる知的好奇心と忍耐強さがあれば、今頃理研とかプリンストンとかそう言うところでピザでも食べながらビックバンセオリー的な人生を過ごしていたに違いない。

    本書がうら若き高校時代のモヤモヤの正体を少し解明してくれたのは、まず最初に「科学の限界」を説明してくれるからである。

    第一章「科学の限界」において早速下記のように説明してくれている。
    「・・・すなわち多数の例について全般的に見る場合には、科学は非常に強力なものである。しかし全体の中の個の問題、あるいは予期されないことがただ一度起きたというような場合には、案外役に立たない」「しかしそうかといって、ちっとも科学を卑下する必要はない。科学というものには、本来限界があって、広い意味での再現可能の現象を、自然界から抜き出して、それを統計的に究明していく、そういう性質の学問なのである」(p16,17)。

    そう、なんちゃらの公式とかを覚える前に、こういうことをまず初めに頭に入れておきたかった。。科学で全てが解明できないし、一般的な法則の話をしていることは、当然といえばそうなのかもしれない。わざわざ説明されるまでもなく。でも、物理や化学の授業では「この公式が全ての自然科学現象を説明するものである」という押しの強さでインプットされるので、「いやいや本当か?」と反発する自分がいたのである。高校時代の先生に恨みはないし、中谷先生と比べるものではないのは承知の上で、それでもなお、科学に苦手意識がある子はの中には一定数、こうした「科学絶対主義」的な教師の説明に違和感を覚える子もいるのではないかと思う次第。

    続く第二章「科学の本質」においても、中谷先生は科学がいかに人間臭いものであるかを説いてくださっている。
    「・・・・科学は自然の実態を探るとはいうものの、けっきょく広い意味での人間の利益に役立つように見た自然の姿が、すなわち科学の見た自然の実態なのである」(p39)。

    そして、第五章の「解ける問題と解けない問題」では、ジェット機が飛ぶ原理は分っても、テレビ塔から落とす紙切れの行方は予測できないという例から、自然の奥深さと逆に言えば科学、人間の知能のすごさをさらっと説明してくれる。

    物理と化学が苦手な高校生の中には、数学に苦手意識がある子もいるかもしれない。この記号や定数はどこから来たのか?どこまで正確なんだ?と自分もよく思っていた。がしかし、そういった疑問も本書を読めば一発で理解。
    第八章「科学と数学」
    「この場合注意すべきことは、数学が自然現象を規定しているのではなく、自然現象に合うような数学を選んで使っているということである」(p115)

    科学とは人間世界から離れた抽象的で高度なものではなく、極めて人間的なものなんだと、安心して科学に向き合える気持ちになった。

    最後に冒頭に戻ると、なぜ本書をコロナの時代に読んで良かったのか。
    ネットニュースやSNSでは連日、どの専門家(何の専門家なのかは割と問われない)の意見が正しいのかを巡って、それこそ科学の本質を理解していない議論が繰り広げられている。議論は必要、各自声を上げて持論を展開することも必要。しかし、1つの意見にあたるごとに真偽を考えていてはしんどすぎる。そんな時、理研にもプリンストンにもいない自分に出来ることは、不安定で不連続な現象・対象には自然科学は太刀打ちできないという自然科学の限界と本質をよく噛み締めて議論の推移を見守り、そして同時に、この先、科学がコロナに打ち勝つまでの道のりを良く注視しておくことである。このような心持ちになれただけでも、60年前の本書を今読むことができて幸せだと思う。

    以上。

  • 今となっては例として挙げられているものに古いものもあったりするが,そんなことはまったく問題ではない.科学とは本質的にどのようなものか,中谷宇吉郎はあいかわらずとてもわかりやすく書きだしている.

  • 自然科学が自然と人間の協同作品であるという考え方が面白い。測定とは何か、誤差とは何か、理論や実験の意味とは何か、といった事柄を丁寧に説いてもらえます。読みづらい点があるとすれば、単位系が古かったりするぐらいです。それも本質的な問題ではありませんが、理系の大学生以外が読むと混乱の元になるかもしれません。注釈つけてくれないかな…。

  • 数学について以下のようなことが書いてあります。
    「数学は人間が考えたものだから人間が全然知らなかったことは出てこない。それでも数学はいわば人類の頭脳が作ったものであるため個人の限界を離れてこの頭脳で問題を考えることができる。」
    科学は人間が考えやすいように自然を捕らえた姿で、科学に用いられる数学も考えやすいように使っている、ということです。
    この主張は科学の限界を明快かつ分かりやすく伝えています。
    講義の速記を元に手を加えたとありますが、よって同じ話が何度も繰り返し登場します。それがうるさくなく効果的に用いられています。面白い本でした。

  • よくいわれる科学的実験法における限界が細かく書かれており、考え方の参考になります。

  • 中谷宇吉郎と言えば『雪』が有名だけど、もしかしたらそれ以上に面白いと思える科学論入門書。中谷さんは科学を人間と自然との共同作業だと考えており、自然科学といえども自然の全てを知るべき学問ではないとその限界をきちんと見定めた上で、解ける問題をいかに観測し、理論化していくかについて話を進めていく。中でも数学についてが興味深く、「数学は人類の共有資産であり、個人の頭脳では到達し得られない所まで人間の思考を導いてくれるもの」という視点は目から鱗だった。こんなにも科学を人間的に感じられた経験は、他にないと言っていい。

  • 科学哲学の本。
    とても分かりやすく面白い。
    良書。

  • 低温物理学の専門家である中谷宇吉郎(1900-1962)が1958年に書いた科学基礎論である。基本的に科学は自然と人間の共作であり、科学的方法の基本は、分析と総合、因果律的思考、測定、恒存の概念であり、再現可能性を土台としている。再現可能な現象は安定しているが、この安定している性質のものには科学的思考を適用しやすい。自然界は極小と極大は、分かりやすいが中間の大きさの現象は分かりにくい。火星にいくことができても、一枚の紙がどこに落ちるのかということは予測不能である。地震の予測ができないことが最近話題になったが、地震学者が例にだした「鉛筆が折れる力」について、中谷宇吉郎がすでに言及しており、結晶の欠陥を例として詳しく論じられている。また、糸の長さは非常に量りにくく、張力、温度、湿度などに影響をうけ、さらに初期状態の湿度から湿らし、その後同じ湿度に戻しても、同じ長さにならないなど、歷史的要素もある。また、粒子の軌道をみるための「霧箱」が降雨のしくみを解明するものであった例などをあげ、定性的な研究が定量的な研究に劣るわけではないということを指摘している。また、科学にも人間的要素があるとして、1930年代の「金属線」とか「生物線」(ミトゲン線)など、現在は実在しない放射線がまじめに論じられていた例などを紹介している。氷のたわみや、雪の温度や超伝導など、著者の專門の話題も多い。有効数字や誤差など、基本的なことについても理解できる。

  • 「科学的である」とはどういうことか、についてのエッセイ。

    かなり古い本のため、現在分かっていることとどれくらい合っているのか
    分からないが、現代物理学の基礎になった重大な発見の周辺の
    エピソードは、有名な内容だが、何度読んでも面白い。

    本書の大まかなメッセージは、
    科学は再現可能であることが必要である、ということで、
    再現が難しい事象については適用しにくい。
    統計手法によって、全体としての再現性は得られたが、
    一つひとつの挙動については今の科学では解明できそうもない。
    だが過去にも科学者は制約の中でさまざまな発見をして
    知識を深めており、まだまだ未解明で残された領域についても
    少しずつ知識を深めていくに違いない。
    …という内容。

    エッセイなので、科学の方法について厳密に論証しているわけでもなく、
    また著者自身も特にこれだという考えがなさそうである。
    だがそれが逆に、自分でニュートラルに考えることができてよかった。

  • 科学を冷静に中立な立場から、考える。理系でない自分にも、科学の本質を見つめる機会になった!

全50件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1900年石川県生まれ。物理学者。東京帝国大学理学部で寺田寅彦に師事し、卒業後は理化学研究所で寺田の助手となる。北海道帝国大学教授、北海道大学教授を務め、1962年没。雪の結晶の研究や、人工雪の開発に成果を上げ、随筆家としても知られる。主な著書に『冬の華』『楡の花』『立春の卵』『雪』『科学の方法』ほか。生地の石川県加賀市に「中谷宇吉郎 雪の科学館」がある。

「2014年 『寺田寅彦 わが師の追想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中谷宇吉郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
A. アインシュ...
戸田山 和久
ウィトゲンシュタ...
有効な右矢印 無効な右矢印

科学の方法 (岩波新書 青版 313)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×