近代民主主義とその展望 (岩波新書 黄版1)

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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004200017

作品紹介・あらすじ

民主主義という言葉はかつての輝きを失なってしまった感が強い。しかしそれは、体制の違いを問わず最高の価値を付与されていることに変わりはない。本書は、近代民主主義の歴史を克明に辿りつつ、その理想と現実との対抗関係を明確にし、さらに現代政治を構成する原理としての民主主義を浮き彫りにして、新たな展望を拓く。

感想・レビュー・書評

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  • 長年に渡って東京大学にて「政治学史」を担当していた政治思想史の泰斗による「近代民主主義」論。1977年に出版されたために当時の中国に対する評価は相当に胡乱であり、この点には注意が要される。もっとも、時代ゆえに冷戦の磁場に深く規定されているとしても/ために、著者の洞察は未だ色褪せない含意を持っている。「本論の中で述べたことは、すべて陳腐で常識的な内容を出ていないはず」(210頁)だとしつつも、やはり現代の民主政を考察するにあたって共産主義が民主政を理念として掲げたことを忘れるべきではなかろう。このことは、ソ連が崩壊し冷戦が終結した現代だからこそ自覚しなければならない。というのも、民主政にもかかわらずなぜ権力の牽制と均衡とを綱領とする立憲主義が要請されるのかという問いは、ソ連の共産主義を省みることによって始まるからだ。この意味で、本書は、現代の民主政論の多くが共産主義を無視する中で貴重な分析と言えよう。

    政治理論や政治哲学と著しく異なり政治史について詳述している点で歴史家としての顔が色濃く出ているが、世界史と思想史との橋渡しとしては良いのかもしれない。もちろん、散りばめられた理論家としての分析は、言うまでもなく素晴らしい。

    ”多数・少数がはじめから決まっていて、人口の大変動がない限り、逆転する可能性はあり得ない。だからと言って多数決を強制するとしたら、少数者は我慢の現代だということになって、解決しようのない事態を招く。政治社会は解体するほかなくなるということもあるわけです。擬制を実態化して、多数決は便宜のための擬制だということを忘れると、そいうことにもなりかねない。政治社会解体の危険を避けようとすれば、多数決という擬制には一定の限界を認めるほかないわけであります。\それではなにがその限界でしょうか。原理的に申しますと、多数決majority of ruleは、少数者の権利minority rightの尊重と組み合わされてはじめて機能するというのがそれであります。”(p.142)

  • 日本政治学界のレジェンド、福田歓一先生による民主主義論です。

    近代以降の民主主義をテーマとして、ざっくりと歴史編(前半)・理論編(後半)に分かれています。古典的なテーマではありますが、本書を読んで新たに知ったことも多く、また改めて頭が整理されたように思いました。例えば、立憲制、三権分立、多数決原理、一人一票、代表原理といった制度がそもそもどういう理由で、どういう思想から引っ張られてきたのか、というようなこと。そこまではきちんと理解しておらず、考えがおよびませんでした。

    しかし一読した感想を正直に申し上げると、つまらない、と言わざるを得ません。あとがきにて著者自身が述べている通り、あまりに「陳腐で常識的な内容を出ていない」ためです。「多数決=民主主義」、「三権分立=民主主義」というような誤解していた方には新鮮かもしれませんが、社会科学を専攻された方であれば、本書はただ常識が詳しく書いてあるだけの本でしかないと思われます。

    また1977年という出版時の時代背景からやむを得ないことかもしれませんが、中国革命を評価していたり(P.183)、「軍備撤廃」という理想をぶち上げたり(P.202)と、現在の読者にとっては「?」と感じられる箇所も散見されます。

    「近代民主主義」というテーマをざっくりおさらいするという意味では、コンパクトにまとまっていて内容も濃く、書棚に置いておくべき本だと思います。ただ、上記のような難点もありますので、おすすめの一冊とまでは言えません。

    (2014/3/24廃棄済)

  • 自由と平等が民主主義の原理的要求であり矛盾無く両立するという解説が興味深い(博愛は仲介物ではなく、その原理から別途導き出される)
    現代の民主主義が持つ機構はそれ以外の政体から引き継いだとする指摘も鋭い。
    人民の武装と軍備に対する見解も一考に価する。
    ただ、それらを凌いで、現代の民主主義の問題点の析出は、目下の日本を見るのに欠かせない視点。
    ただ中国革命、特に毛沢東への一面的な評価は今になると陳腐。

  • 非常に平易な語り口で書かれている。民主主義の歴史や理論についてわかりやすく書かれている印象を受けた。個人的には歴史のところが簡潔にまとまっている点に好感が持てた。

  • あとがきに書いてあるのだが、近代民主主義とその展望という標題の意味について、展望とはこれからのPRSPECTというよりは、むしろそれを得るために近代民主主義を一つのPERSPECTIVEの中において見た、としている。

    そして、終章のなかで、展望を開こうとするなら、必要なのは現在ある状況を固定して、その立場から打開の道を求めることでなく、一旦はもとに戻って、起源から現在までの全体を見直し、一つの歴史的な展望の中で、問題を考え直すことだろうと思います、としている。

    そういうことで、ギリシャ時代から遡り、フランス、英国、ドイツ、アメリカなどの民主主義の歴史がよく理解でき、所謂民主主義という制度に身を置く現代人一人ひとりが主役となり政治のことに真摯にチャレンジしていかなくてはならないと痛感した。

  • 日本人必読書。以上。

  •  民主主義の発展を歴史的、理論的な視点から解説した本。

     元々democracy(民主主義、民主制)という言葉に肯定的な意味はなかった。アテネが民主制をとったポリス時代のギリシアはポリス同士の対立を解消できず、国際秩序の維持に失敗した。

     近世の革命を経て作られた近代民主主義の必然的要素は貴族制的、身分制度的部分であった。それは当時有産階級が、自分たちの自由権を擁護する目的で革命を起こしたことや、制限選挙が普通であったことからも明らかである。イギリスに至っては、今でも世襲の貴族制が残っている。

     よって、近代民主主義は産業革命やチャーティスト運動による労働者の進展を通じての選挙法改正などの影響で一般人も参政権を持つ大衆民主主義に移行したと見るのが正確と言える。

     全体的な難易度はかなり手強い。歴史についても理論についても、初めて知るような事ばかり。ですが勉強になった。
     
     最後に、この本の末尾の言葉を引用する。

     最後に申しそえたいことがございます。民主主義は、それがどんなに良い言葉になったとしても、人間のすべての問題を片づけてくれる万能薬ではありません。民主主義は、それがどんなに立派に制度化されたとしても、それによって必ずしも人間が豊かな生活を送れるということを約束するものではありません。それどころか、民主主義はまさにそれが民主主義であるがゆえに、そもそもそれが制度として機能するためには、この社会をつくっている一人一人の人間の資質を厳しく問い、一人一人の人間に対して、公共のために大きな献身と負担とを要求する、そういう体制に他なりません。
     ただ、この民主主義に根本的な一つの特徴、ほかに求めがたい長所があるとすれば、それのみが、人間が政治生活を営むうえに、人間の尊厳と両立するという一点であります。このことを忘れて民主主義を論ずることは、すべて無意味なことであると私は思います。(同書207-208頁)

     我々は民主主義を通して、我々自身を試されている。

  • [ 内容 ]
    民主主義という言葉はかつての輝きを失なってしまった感が強い。
    しかしそれは、体制の違いを問わず最高の価値を付与されていることに変わりはない。
    本書は、近代民主主義の歴史を克明に辿りつつ、その理想と現実との対抗関係を明確にし、さらに現代政治を構成する原理としての民主主義を浮き彫りにして、新たな展望を拓く。

    [ 目次 ]
    序章 現代史のなかの民主主義(期待と幻滅/ワイマールの悲劇 ほか)
    第1章 民主主義の歴史(前史としての古典古代/革命の炎 ほか)
    第2章 民主主義の理論(民主主義の価値原理/民主主義の機構原理 ほか)
    第3章 現代の民主主義(民主化と大衆化/管理者国家と民主主義 ほか)
    終章 民主主義の展望のために(歴史的展望への要求/国家の問題 ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • これこそ大学1年生で読むべきと思う本だと思う。
    高校までの教育で手放しに、思考することなく至高のものとして教え込まれてきた民主主義。
    それをヨーロッパ市民革命、古代地中海世界の原点から、
    そもそものところから丁寧に学ぶことができる。
    そもそも民主主義とは何なのかを思考することは
    現代政治を考える上での最も重要かつ基本的なことであると思うので、
    この本は大学に入ったら何よりも先に読んだらいいと思う。
    僕ももっと早くこの本を読みたかった。

  • 祝・復刊。

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