イスラーム哲学の原像 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004201199

感想・レビュー・書評

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  • イスラーム哲学においては、神秘主義的な実在体験と哲学的思惟の根源的な結びつきがあることを紹介してくれている本。読みやすくてなかなか興味深かったです。
    神秘主義というと、なんともアヤシゲなイメージがありますが、この本のように理路整然と解説されると、そういうアヤシゲは雲散霧消してしまいます。実際のところ、どうなんでしょうね。
    神秘主義のアヤシゲは、その理論構築にあるのではなく、秘儀的実践にあるということなのかもしれません。では、神秘主義において、構築された理論と秘儀的実践は必然的に結びついているのか? そこは、部外者たる我々には知りえない部分なのでしょうか…。
    あるいは、私のもっている神秘主義のアヤシゲなイメージは、単にインディ・ジョーンズによってうえつけられただけかもしれません。
    それはそうと、こうした神秘主義的な理論構築の枠組みは、大小の異同はあれ、後期ハイデガーの思索と通ずるところがあるなあと感じながら読みました。(2018年7月7日読了)

  • イスラーム哲学関連の本は初めて読んだが、面白かった。もっと早く読むべきだった。

    「イスラーム哲学」や「神秘主義」という単語にはかなり近寄りがたい雰囲気があるけれど、仏教や老荘思想、ウパニシャッドといった東洋思想と共通する部分も多く、むしろそれらを理解する助けになるようなものだ。この本ではそうした東洋思想との比較も豊富なので、とても参考になった。

    この本でおもに取り上げられているのはイブン・アラビーの「存在一性論」という考え方である。これがイスラームの中心思想というわけでは決してないということに注意が必要だ。それでも、東洋思想に通底するものについて考えるときにとても役立つものだと思う。膨大な文献からこの思想を取り上げ、他の東洋思想の術語を用いて比較しつつ、わかりやすくまとめているのはほんとうにすごい。

    以下は内容についてのメモ。
    イスラームと聞くと「唯一神アッラーへの絶対的帰依」というイメージがまず浮かぶ。しかし、神秘主義哲学では「絶対一者」と「統合的一者」を区別し、後者をいわゆる「アッラー」と考えるなど、複雑でダイナミックな存在論が展開されている。

    イスラーム哲学の特徴として、「この世」に対する考え方が肯定的であるということが挙げられる。修行によって「無の境地」にたどり着くというプロセスは多くの他の東洋哲学と共通している。しかし、悟りに至ったあと、この世を虚無ととらえるのではなく、むしろ神の「慈愛の息吹き」による現象だととらえる。こういうところにウパニシャッドや仏教との大きな違いがあり、一神教らしさがある。

  • タイトルはあまりあってないと思うが、12,3世紀のイスラム神秘主義的哲学、主にイブン・アラビーの存在一性論についての1970年代後半の講演録。
    井筒俊彦の本は読んでるときは分かった気になるが閉じるとすぐ分からなくなる。神秘主義という言葉にしがたいものを言語化して分析してしまう世界的碩学の圧倒的な力量にも畏れ入るが、イブン・アラビー同様、絶対無分節な純粋存在を直接無媒介に把握すると言う究極的な経験をこの人は持っているんだと思う。

  • 一般的にイスラムは魂というものを非常に重視する。人間を肉体と魂との結合と考え、魂の救済にその宗教性の全てをかける。この考えでは肉体は物質的なもの、つまり汁朝敵な実態であり、魂は非物質的なもの、つまり非物質的なものとしての魂はそれ独自の1つの構造を持つと考える。

  • 再刊を喜びたい。この本はイスラーム哲学全体を把握するための本ではない。
    イスラーム教神秘主義、なかでもイブンアラビーの存在一性論について、哲学的思惟と形而上学的体験がぶつかり合い思想の生起する場を、新書とは思えないほど集中的に、生々しい臨在感をもって訴えかける。

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    [ 参考となる書評 ]

  • 13世紀イランのイブン・アラビーにはじまる存在一性論の哲学について書いてある。同じ著者の『イスラーム思想史』の後の時代について書いたもの。
     ただし、イブン・アラビーからの引用がほとんどなく、実際にイブン・アラビーがどんな表現をつかっていたのかは不明なところが残念。この点は論文を読む必要があるかも。だが、存在一性論の考え方、「○○が存在する」ではなく、「存在が○○する」という方式で形容詞的に世界を理解する方法などははっきり分かる。最後にでてくる「絶対的一」と「統合的一」のちがいも面白い。

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プロフィール

井筒 俊彦
1914年、東京都生まれ。1949年、慶應義塾大学文学部で講義「言語学概論」を開始、他にもギリシャ語、ギリシャ哲学、ロシア文学などの授業を担当した。『アラビア思想史』『神秘哲学』や『コーラン』の翻訳、英文処女著作<i>Language and Magic</i> などを発表。
 1959年から海外に拠点を移し英文で研究書の執筆に専念し、<i>God and Man in the Koran</i>, <i>The Concept of Belief in Islamic Theology</i>, <i>Sufism and Taoism</i> などを刊行。
 1979年、日本に帰国してからは『イスラーム文化』『意識と本質』などの代表作を発表。93年、死去。『井筒俊彦全集』(全12巻、別巻1、2013年-2016年)。

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