ことばと国家 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004201755

作品紹介・あらすじ

だれしも母を選ぶことができないように、生まれてくる子どもにはことばを選ぶ権利はない。その母語が、あるものは野卑な方言とされ、あるいは権威ある国家語とされるのはなぜか。国家語成立の過程で作り出されることばの差別の諸相を明らかにし、ユダヤ人や植民地住民など、無国籍の雑種言語を母語とする人びとのたたかいを描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • ことばについて、ことばを取り巻く社会について、
    知らないことが多くあったことに大変驚いている。
    1981年の本ではあるが、大変勉強になり良かった。

    自分の場合には、両親が話すことば(母語)も、
    国家が定めた公のことばも「日本語」である為、
    「母語」=「母国語」であることに違和感がない。

    一方で、世界の各地には、自分のことばである
    「母語」と「母国語」が異なる人が大勢いる。
    ことばに発する差別・偏見と戦う人達がいる。

    ことばには国家を超えるポテンシャルがある。
    一方で、一見、良心的な権威主義者の介入、
    自らの憎悪の感情、裏切りなど、敵も多い。

    ことばが存続する為、他者の言葉と交わり変化
    することが重要である。一方で、実用的には、
    当事者間で齟齬がない様ルールが必要となる。

    他者を理解することの重要性を再び認識した。

    (メモ)
    1章 「1つのことば」とは何か
     その社会がたとえ数億の人口を持つ巨大国家であろうと、数百人の小さな村落であろうと、あるいは、文学のことばであろうと井戸端で交わされることばであろうと、ドレイなかまのことばであろうと、ことばはことばとして、差別の視点を加えないのが言語学のたちばということになろう。
    2章 母語の発見
     母語は、国家という言語外の政治権力からも民族からも自由である。
    3章 俗語が文法を所有する
     文法はその本性において、ことばの外に立ってことばを支配する道具である。
     地域と時代をこえて、ことばの恒常性を保つための装置である。
    4章 フランス革命と言語
     1539年、フランソワ1世の勅令:フランス国内の公共生活はフランス語で行うこと。
    5章 母語から母国語へ
     1907年、方言札、1917年、方言取締令:琉球方言を話した生徒の首に木札をかける、他の仲間で同じまちがいを犯す者がでれば、その犯人の首へ木札を移す。
    6章 国語愛と外来語
     フランスはアカデミー(言語統制)による外来語の締め出しを図った。しかし、ドイツは、たえまなく変化にさらされるところに言語の本質を見、規範はそれに死を与えるものだと考え、アカデミーを持たぬことを誇る自由をうちたてた。
    7章 純粋主義と雑種言語
     古典主義の根拠は、古いことばほどオリジナルで純粋な状態に近く、新しくなればなるほどそれからずれているという考え方にある。
    8章 国家を超えるイディシュ語
     1908年、ウクライナにイディシュ語運動指導者を含む70余名のユダヤ人が集まった。
     その言語を支える国家はなくとも、ことばが国境をこえて行きかうようになった。
    9章 ピジン語・クレオール語
     主人と奴隷との間にあっては、使役の為の最低限のことばとしてピジン語が生まれる。
     やがて奴隷同志がピジン語で意思を通じさせ、結婚するとピジン語は、家庭を持つ。
     やがて子供が生まれ、ピジン語をただひとつのことばとして引き継ぐ。
     間に合わせのことばだったピジン語はこうして母語に転化する。
     これを言語学ではクレオール語という。
     どの言語もが経験した過程を再現している。

  • 学生時代に読んでうなってしまった。いまだに再読している。

  • 言語と方言。祖国と故国。母国語と母語。話し言葉と、書き言葉。

    母語とは、母から口語で聴いて自然と受け継いだ言葉。
    ユダヤ人や、第二祖国を持たない、日本人である自分は、母語≠母国語でなく、故国・故郷とは別の祖国を意識する事がないが、都内で仕事・生活を続けるにあたって、方言が自分の中から失われようとしている現実は、故国、母語をも失い兼ねない事になるのだと気付かされた。

  • 新書で感動をした初めての本。そして新書の面白さを教えてくれた本でも有ります。元は大学受験対策の為に模試の解説に「これを読め」と書いてあったのがきっかけです。日本にいるとあまり意識しませんが、言葉というのは支配の象徴なのだな、と感じさせられました。また、自己の確立にも必要です。そんな話にどんどん引き込まれて、私は知らず知らずに言語論とか思想とかに興味を持つようになりました。今でも、本屋さんでこの本を見かけるためにテンションが上がります。笑。

  • メモ

    言語学のたちばからすると、あることばを話す民族に、国家があるかないかは、言語そのものの価値を全く左右しない。重要なのは民族、あるいはそれに類するエスニックな集団であって、ソシュールはその「講義」のなかで、「民族(nation)をつくるのはだいたいにおいて言語である」とか、「民族的単位(unité ethnique) を作り出すものは、ある程度まで言語の共通性である」とか述べている。

  • 岩波新書黄版はエモいのが多い

  • 2 一つの国家、一つの国語という「常識」[近藤健一郎先生] 1

    【ブックガイドのコメント】
    「国家と結びついた国家語の成立とともに生じる諸問題を世界各地の実例に即して論じる。」
    (『ともに生きるための教育学へのレッスン40』182ページ)

    【北大ではここにあります(北海道大学蔵書目録へのリンク先)】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2000087826

  • 大学のゼミで使用した作品。

  • いいね

  • 情熱的社会言語学入門書。概して入門書といえば基本事項をわかりやすく満遍なく抑えたものというイメージがあり、またそのようなものが求められがちだ。本書では時折、感情的な意見が客観性を欠いたかのように映る。しかし読み進めていけば言語の本質を真剣に追求した人間の息遣いに他ならないことに気づく。社会言語学のエッセンスもしっかり抑えられる。

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著者プロフィール

一橋大学名誉教授

「2021年 『ことばは国家を超える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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